近年、教職への志望者数が減少し、教員採用試験の倍率が低下していることが話題となっています。文部科学省の調査によると、2024年度公立学校選考試験の倍率は小中高全体で3.2倍と過去最低でした。2000年度の13.3倍と比較すると相当な減少です。
しかし、この競争率だけに着目することには注意が必要です。2000年度は採用者数が戦後過去最低の約1万1千人であるのに対して、2024年度採用者数の3万6千人という数値になっています。大量退職者などに伴う採用者数の増加が競争率を引き下げている理由です。
とはいえ、小中高とも受験者数は減少していることは事実です。教職の不人気の原因はどこにあるのでしょうか。かつて我々が学生の頃、教職の魅力は、若い世代を育てる意義、自分の学んだ学問が活かせる、夏休みが長いなどいろいろあったような気がします。民間企業と比較して少し給料が安くてもこのようなモチベーションがあったように感じています。
しかしながら、近年は、多様な児童生徒への対応、保護者対応、部活動など教員を取り巻く環境は厳しくなってきました。大学の教職課程で学んだ内容が必ずしも役に立たない場合が多いのも事実でしょう。学生にとってそのような不安も教職を遠ざけてしまう一因かもしれません。
これから教職を目指す学生にとって教育現場に入ってからも十分な研修体制がしっかり確立していることの理解が深まれば、少しは安心かもしれませんね。
私は2つの公立高等学校を経験したあと、1995年4月に「県立教育センター」という行政機関に異動しました。ここでの立場は教員職ではなく指導主事というものです。これは学校の教育活動を促進するため、校長及び教員に助言と指導を与えることを職務として教育委員会事務局に置かれる職で、この教育センターでは教育研究および教員研修を担当しました。
最初の3年間は算数・数学の担当、次の3年間は情報教育でした。このときの私の主な仕事は、コンピュータの教育利用や情報教育をどのように推進していくかというものでした。この他にもセンターの部署によっては、学校現場が抱える課題、例えばカウンセリング、外国籍の児童生徒の指導法など様々な課題についての研修・研究をしていました。
学校現場の教員のニーズをくみ取り、教員が安心して教育活動に専念できる環境づくりのサポートをするのが教育センターを大きな役割です。学生たちや外部の人々からはなかなか知られていませんが、各都道府県に設置されている機関で、現場の教員との連携により、教員の仕事が魅力あるものになるよう努力しています。
次回は、情報教育担当の時に取り組んだ情報科教員養成についてお話しします。また、お会いしましょう。