第9回 次期学習指導要領について

第8回では、「学習指導要領」の改訂にともなう過去の具体的なお話をしました。今回は、「学習指導要領」の趣旨や次回の改訂の進捗について解説します。

現在、小中高校では授業に際して各教科の教科書を用いて児童・生徒が学習しています。この教科書は「学習指導要領」に準拠しているものを使用するのですが、教科書会社が作る教科書は「検定」を経なければなりません。内容がきちんと「学習指導要領」に準拠しているかを文科省にチェックされる訳です。つまり、わが国では「学習指導要領」というナショナルカリキュラムにより、日本全国の教育水準を確保するための基準を設けています。

諸外国では必ずしも国単位でのナショナルカリキュラムをもっているとは限りません。イギリスでも1988年に初めてサッチャー首相がナショナルカリキュラムを導入したことは有名ですね。

第二次世界大戦後、わが国の教育は戦前の教育の反省を踏まえ、新しい憲法、教育基本法のもとで初等中等教育を刷新してきました。そして、引き続き文部省(当時)のもとナショナルカリキュラムに相当する「学習指導要領」を策定しました。1947年のことです。その後、約10年ごとに改訂しながら現在に至っています。

当初はナショナルカリキュラムに相当するといっても「法的拘束力」はなく、教育現場の教員の創意工夫によりさまざまな取り組みが許されていました。

しかし、いくつかの事例や裁判、特に1976年の最高裁の判決などを経て、現在では「法的基準性(拘束力)」があります。そしてその方針や内容は、敗戦、高度成長時代、ゆとり教育、新しい学力観、生きる力、・・など社会の変化に大きく影響されて現在に至っています。

現在、文科省は次期学習指導要領策定に向けて作業中で、2025年9月にまず「論点整理」という形式で方向性を示しました。それを見て改めて感じることは、いままでの改訂と同様に教育現場のニーズに基づくものではなく、一部の有識者などの会議をもとにしたトップダウンで実施されそうなことです。今回もさまざまなキーワードが出てきています。さらに、私の専門の数学でいうと、高等学校数学ⅠではAI時代を見据えたのでしょうか唐突に「社会を読み解く数学」なるものが提案されています。

確かに指導要領の改訂は、国際的な調査やアンケート結果などをもとに検討されています。しかし、改訂とは子どもたちの教育の改善を目的に教育内容を検討することが第一で、さらに教育現場の教員に無用な負担をかけないことが重要です。

世の中の流れが速いとは言え、教育に関する改訂のサイクルが10年というのは妥当な期間なのかは再検討の余地がありそうです。

第10回では、大学附属校での勤務に関する話題についてお話しします。また、次回お会いしましょう。

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