令和6年から小学校教科書改訂! 教科書採択制度について確認しよう!

学校で使用されている教科書は、社会問題や教育へのニーズを反映し、原則4年ごとに改訂が行われています。近年ではグローバル化に伴い、外国語(英語)活動が加わることや、高度情報化社会に対応すべく、プログラミング教育が必修となるなどカリキュラムは大きく変化しました。

次の教科書改訂は令和6年度を予定しています。今回は、教員が知っておくとよい教科書改訂の流れや採択の方法ついて紹介します。

公立学校の教科書の選定は誰がする?

各学校で利用されている教科書の採択は、公立学校の場合は市町村・都道府県の教育委員会『地方教育行政の組織及び運営に関する法律21条6号』に委ねられており、国立・私立学校の場合には、『教科書発行に関する臨時措置法7条1項』により校長が採択権限を有しています。

そのため、教科書の改訂シーズンになると、教育委員会の職員が中心となって次年度の教科書を決定していくことになります。決定に関しては、現場で勤務している教諭や管理職なども入り、どのような学びをするのか、自治体の教育方針とも照らし合わせが行われています。

参考文献:地方教育行政,https://www.mext.go.jp/a_menu/01_j.htm(参照2023-9-15)

私立学校の教科書選定は誰がする?

公立学校の教科書選定が教育委員会の権限になっているのに対して、私立学校では校長先生の権限で教科書を採択できるため「特色ある教育」をすることができます。

例えば

〇特定の宗教に関連した教育を行う

〇特定の教科(英語や理数教育)の推進を行う

私立学校にとって「特色ある教育」は、児童生徒の獲得、学校法人の経営に大きくかかわってくるため、学校にとっても重要な選定になります。

無償措置法に基づく「共同採択制」

義務教育学校で使用されている教科書には、様々な法律が絡んでいます。重要になるのが下記の2つです。

  • 義務教育諸学校の教科書図書の無償措置に関する法律(無償措置法)
  • 発行法

この法律によって教科書の採択方法が決められています。

特徴的な仕組みとして無償措置法の中に定められている「共同採択制度」があります。共同採択制度とは、市町村の教育委員会は、都道府県教育委員会の設定する広域の採択地区内で同一にしなければいけないルールです。つまり、地町村が単独で教科書を決定して採択することができるわけではなく、指定されている周辺自治体で教科書を統一する必要があります。

この理由は

 〇 教師が教材研究をしていく際に広域で協力できること

 (都市部のようなたくさんの学校がある地域であれば市内で連携できるが、学校の少ない地区では周辺部を含めた連携が欠かせないため)

 〇 子どもにとって近隣への転出入時に教科書が変わらない

といったようなことが挙げられます。

この共同採択制度が問題化したのが2011年の「沖縄八重山地区教科書問題」です。採択地区内の決定に反した教科書を教育委員会が採択したことにより、該当の教科書は国の無償給付対象外となりました。このときは、3つの市町が同じ教科書を採択する必要がありましたが、1つの町が独自の教科書を選択したことが問題になりました。しかも、独自の採択をした地自体のみが無償給付対象外になり、他の2つには無償で教科書が提供されるなど、法律上もおかしな問題が多数生まれ、「共同採択制度」の問題点が浮き彫りになりました。

参考文献:教科書無償給与制度,https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901/1235098.htm(参照2023-9-15)

教科書展示会とは?

保護者や採択に関わらない教職員は、各自治体で行われる教科書展示会で閲覧することができます。令和5年度は、6月14日から7月31日までの任意の14日間を中心として、全国で開催されていました。

教科書は前年度(令和6年度から利用するものであれば令和5年度の段階)に改訂が終了しており、各教科書会社から公表されます。教科書展示会では、どの教科書が採択されるのかまで知ることはできませんが、各社の教科書を見比べることが可能です。

教科書採択までのスケジュールとは?

令和6年度から公立学校で使用される教科書は、令和5年度から採択が始まります。各教科書を見比べながら専門家による審査が行われ、採用自治体の風土や学びの方向性にあわせたものが夏前ぐらいまでに決定されます。その後、自治体内での採決などが行われ、最終的に夏過ぎぐらいに自治体から採択された教科書が公表されます。公表後、同一の教科書会社で小改訂程度であれば、学習カリキュラムを変更することはありませんが、教科書会社の変更があった場合には、次年度のカリキュラムを再度作成する必要があります。また、補助教材に関しても、使っていた補助教材をそのまま利用できるのか、別の補助教材を選定する必要があるのかといった仕事が生まれます。こうした、仕事は各教育委員会だけでは負いきれないため、教職員の代表らを含めた委員会を設置し対応するケースが多くなっています。

教科書と補助教材の違いを理解しておこう!

教員になったばかりの人の中には「教科書」と「補助教材」の区別がついていない人もいますので簡単に違いを紹介します。教科書は、ここまで述べてきたように教育委員会が主体となって採択し、無償で提供されます。一方で、補助教材とは各学校で利用しているドリルやワークシート、資料集のことを示します。図工や家庭科などで利用する教材や教具も補助教材です。

補助教材の採択から決定は教育委員会の権限となりますが、実際には学年で利用する教材を選択し、学校内で開かれる教材採択委員会のようなもので校長の承認、教育委員会への申請を経て発注します。補助教材の費用負担は、子ども(保護者)であり、学年費などの名目で徴収し業者に支払いをするなど、教科書と補助教材では、採択をする人や費用負担などが異なっていることを理解しておきましょう。

公正公平な採択を!

教科書の採択は、行政機関である教育委員会の重要な仕事です。教科書会社との癒着は昔から問題になっており、近年も贈収賄に伴って一部の教科書会社が指名停止になるような問題が起きました。教科書の選定を各教育委員会でできるようになっているのは、地域の実情に応じて教育をするためです。教育委員会には、教科書の特徴と教育目標を考え、公平公正な採択が求められます。

教科書改訂の流れを知っておこう!

変更となった教科書を新学期の始まる4月に知るという教員も多く、学年開きの一番忙しい時期に対応をしなくてはいけません。教科書が改訂されると各学校で時間数、実施時期の見直しの作業が必要になります。令和6年度の改訂では、小中学校の英語で「学習者用デジタル教科書」の先行導入が決定しており、算数・数学での導入も検討されています。教材やカリキュラムの大幅な変更により、準備していた副教材を利用することも教材内容によっては不可能になるため、学年ごとに多大な作業も必要になります。

教科書改訂の作業は前年度から行われており、半年以上前に公表されています。教科書会社からも同時期に教育課程などがウェブで公開されているので、早く情報をキャッチすると負担を軽減することができますよ。

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