学校給食の役割!教員が知っておくべきその目的やねらいとは?

近年、日本国内の物価高が問題になっており、そのあおりを受けているものの1つに「学校給食」があります。今年の9月には、民間の給食業者の破産や給食の提供停止の報道が話題となりました。

学校給食は、「学校給食法」によって提供することが定められているもので、義務教育課程(小学校・中学校の9年間)で提供することが努力義務になっています。給食を作ることができる施設の課題や提供できる量の問題から、一部の自治体では小学校のみで学校給食が実施されているところもあります。

参考文献:学校給食法,

https://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/hokenko/hoken/kyushoku/shokuiku/jokyo/documents/13kankeihourei.pdf(参照2023-09-10)

学校給食の役割と目標とは?

学校給食には、下記の通り「7つの目標」が定められています。

  • 一 適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること。
  • 二 日常生活における食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い、及び望ましい食習慣を養うこと。
  • 三 学校生活を豊かにし、明るい社交性及び協同の精神を養うこと。
  • 四 食生活が自然の恩恵の上に成り立つものであることについての理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  • 五 食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んずる態度を養うこと。
  • 六 我が国や各地域の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。
  • 七 食料の生産、流通及び消費について、正しい理解に導くこと。

目標を読んでいくと分かりますが、学校給食は、「給食を食べる」のが目的でなく、日本の食事の優れた文化への理解生産から流通、消費までの理解といった、幅広い食に関する学びをするまで含まれます。したがって教員には、給食を通してさまざまな「学び」や「指導」を提供することが求められています。

先生にとって給食は休み時間ではなく「授業」

教員にとって給食の時間は、休み時間ではなく「授業」の時間です。教員の勤務時間を見ても給食の時間を休憩時間としていることはなく(高等学校などの給食のない学校は勤務時間外のお昼休み)仕事の時間として計上されています。これが、良い意味、悪い意味で足かせになっています。

給食時間に食に関する指導をすることができる一方、アレルギー、異物混入などによるトラブルが発生した場合、学校管理下のため責任問題に発展します。学校によっては栄養士の先生を招いての食育指導や授業時間に食事に関する勉強を取り入れているところもありますが、これも、学校給食法に定められている目標を達成するためです。

子どもの健やかな発達を願って設定された給食

学校給食のスタートは、子どもの健やかな発達を願って実施されています。給食を作る側も様々な工夫をしており、生きた教材として十分利用できます。例えば、

・季節の旬を意識した献立

・地産地消を意識した地元食材を用いた献立

・自治体の姉妹都市を意識した姉妹都市の名物料理

などがあります。意外と面白いメニューや驚きのメニューが出ることもあるので、教員にとっても楽しみの1つにもなります。教員を目指している人は、給食の時間がどのような位置づけにあるか、しっかりと理解しておきましょう。

学校給食で起きている問題と考え方

これから教職を目指す人は、今、学校給食でどのような問題が起きているのかを知っておくことは大切です。栄養教諭を志望する人であれば確実に知っておかなければいけない情報ですが、一般教員を目指す人も知っておくとよい情報はたくさんあります。

① 食材費などの高騰に伴う家庭負担の増

給食の実施にあたり、その費用は「設備や人件費に関するものは行政が負担、食材は家庭が負担」と学校給食法に定められています。しかし、ここ最近は食材費が高騰し、給食にも影響を与えています。給食費の値上げを検討しても、給食費さえ支払うことができない家庭、準要保護や要保護家庭の給食費負担などの反発があり、簡単に保護者負担を引き上げることはできません。また、給食を提供するために必要なガス代、人件費といったものの値上げも自治体の大きな負担となっています。

② 民間委託によってコストカット

最近は、学校給食の製造を民間企業に委託して配送してもらう「デリバリー方式」を導入する自治体が増えました。導入が増えた背景には、国が出した第3次食育推進基本計画が影響しています。この中で中学校の学校給食実施率を「90%以上に引き上げること」が数値目標となりました。

学校給食を実施するためには、各学校に調理場を建設する「自校方式(単独調理場)」と給食センターを建設して給食センターから各学校に配送する「センター方式(共同調理場)」が主流です。しかし、どちらも建設するためには多額の費用がかかるだけでなく、建設場所の選定や栄養士などの人材確保など数年単位での計画をしなければいけません。既存の給食業者に委託して給食を各学校に配送する「デリバリー方式」であれば、早急に実施できます。民間委託することによって、建設費や人件費を抑え、コストカットも可能なため中学校給食において民間委託が進みました。

③ 民間委託であらわになった問題点

今年度になり、給食業者の休業が問題になりマスコミでも報道されていますが、給食の民間委託に伴うトラブルはこれまで何度もありました。「美味しくない」「冷たい」など給食の内容に関する批判が特に多く、学校給食を民間業者が提供する場合、課題は「献立」と「配送方法」と言われています。

学校給食の場合、献立は、自治体の栄養職員がメニューを考え、業者が作り学校に配送する方式です。しかし、民間業者は温かいものを製造し、温かいまま運ぶというノウハウがありません。輸送には「温めたまま運ぶ」ことができる特殊な車両が必要になりますし、積み込みの施設を作る必要があります。メニューも学校給食衛生管理基準に従って作る必要があります。

民間業者側にとってみると制約が非常に多い上に、コストカットも求められる状況です。給食を輸送する場合には通常の弁当と同じように冷却して輸送するケースがほとんどであり、学校で再加熱することも難しいため、冷たいまま子どもたちに提供されます。これではなかなか子どもたちの食も進みません。

このように学校給食の提供は「当たり前」と思われているかもしれませんが、陰にはたくさんの人の苦労、制約、お金の問題が起きています。現在の物価高が続いていくと「給食提供を維持する」ために、保護者の負担が増すのは仕方がないことになりそうです。

参考文献:第3次食育推進基本計画(概要),農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/plan/attach/pdf/3rd_index-4.pdf(参照2023-09-10)

参考資料3:第4次食育推進基本計画,厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000770380.pdf(参照2023-09-10)

給食の時間を学びの時間にしよう!

学校給食は、日本の優れた食文化への理解生産から流通、消費までの理解といった、幅広い食に関する学びを目的としており、教員には、給食を通してさまざまな「学び」や「指導」を提供することが求められています。

教員が給食指導するときには、学びの時間にすることを意識しましょう。楽しくクラスメイトと親睦を深める時間、メニューについて少し考える時間、自分が食べられる量や食材など自分で調整をすることができる時間など、教員の声掛け1つで学びの時間にできます。

給食の時間をとても楽しみにしている子どもも多いため、毎日学びにする必要はありませんが、ただ食べさせる時間にするのはもったいないということを意識しましょう。

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