令和6年度教員採用試験受験者必見!採用試験の現状について現役教員が分析します!

これから教職を目指す人にとって、重要となるのが教員採用試験です。教員免許を保有していても採用試験に受かることができなければ、教員として子どもたちの前に立つことはできません。今回は、2023年(令和6年度採用)に行われた教員採用試験の傾向を分析します。

今年度の教員採用試験の傾向

近年、教員の過重労働やモンスターペアレンツなどの問題などを受け、教職に対するイメージが下がり続けており、そのネガティブなイメージを払拭することができないまま、2023年の教員採用試験の時期を迎えることになりました。

全国的に倍率は低下傾向

教職に対する人気が下落する一方で、本年度から教員の定年延長が実施されるため、各自治体の採用数がどうなるのか注目されていました。結果として募集人数はほぼ例年通りというところが多く、教職の現場では退職者がそれなりにいることが見えてきました。

採用者数は大幅な変更がないものの減少の一途をたどっているのが「志願者数」です。そのため採用試験の倍率も軒並み下がっています。

例えば、東京都を見ると令和4年度の小学校採用者の倍率が2.5倍だったのに対して、令和5年度は1.6倍にまで下がりました。東京では「中高採用」「特別支援」の採用も倍率が低下しています。一方で大阪では、小学校の採用者が令和4年度の3.7倍から令和5年度は5.2倍に増えています。ほとんど横倍という自治体もあり、教員採用試験の志願者が極端に減っているわけではありません。

参考文言:NSK教採ネット 令和6年度(2024年度)教員採用試験 倍率速報

https://nsk-japan.sslserve.jp/kyosai/bairitu.htm (参照2023-08-16)

小学校では定員割れを起こす自治体も!

速報値で、出ている数字を見ると志望者が1倍を下回る自治体はなく、定員割れをしているような場所はないように見えますが、この数字には注意が必要です。理由は、複数の都道府県を併願する学生が多いためです。

例えば、高知県の小学校採用試験倍率を見ると5.9倍とかなり高い数字に見えます。しかし、高知県の採用試験は他の自治体よりも少し早めに実施しており、併願者が多いという特徴があります。そのため、実際に採用結果を使えると辞退者が多く、定員ぎりぎりになるということもあります。倍率の低い自治体になると辞退者が出ればすぐに定員割れを起こす数字となってしまいます。

また、不合格者が少ないのは「講師」として採用できる枠にも影響を与えます。学期が始まれば「産休補助」や「期限付き任用講師」が必要になるケースもあります。こうした人材は採用試験の補欠合格者・不採用者から選ぶことが多いのですが、倍率が低い場合には、こうした人材を確保することもできません。学校現場は、正規教員だけでなく非常勤などを含めた講師人材が貴重な戦力であり、人材確保できないのは学校運営に大きな支障を与えることになります。

2023年度の教員採用試験問題傾向

多くの自治体では、夏休みが始まる前頃に教員採用試験の一次試験が行われます。今年度の傾向として多くの自治体で見られたのが「実技試験の廃止」という変化です。実技試験は「音楽」や「体育」さらには「英語」などの教科において実施されるもので、かつては小学校の採用試験で水泳を必須にしているところもありました。教員の志望者が減少していることを受けて実技試験を廃止し、受験しやすい形にしたところが増えてきました。

また、感染症対策の影響もあり、集団討論やディベートといった話し合い活動を評価する方式を減らし、面接は個人面接、思考力や表現力は小論文で点数を取る方式に変えているところもあります。講師経験者やこれまでの社会人経験を採用試験時の加点や一次試験免除として採用するところも増え、教職経験、社会人経験のある人が優位になれる傾向があります。

来年度の採用試験の動向は?

今この記事を読んでいる人の中には令和6年度(令和7年度採用)の受験を考えている人もいるのではないでしょうか。そんな人のために、現在の段階で分かっている情報を元に令和6年度の教員採用試験を少し予想していきましょう。

参考文献:公立学校教員採用選考試験の早期化・複数回実施等について方向性の提示,文部科学省,https://www.mext.go.jp/content/20230531-mxt_kyoikujinzai02-000011998_1.pdf(参照2023-08-16)

試験の日程には要注意!

令和6年度の教員採用試験を受験する場合、最も注意しなければいけないのが「日程の前倒し」に関する情報です。文部科学省は、教員採用試験の受験に関して他の企業の採用試験と同じような時期に実施をすることができるよう令和5年5月末に通知を出しました。

これを受けて各都道府県では令和6年度の採用試験(令和7年度採用)について、従来行っていた採用試験の日程を前倒しすることができないか検討しています。例年、教員採用試験の具体的な日程については今年の最後から令和6年の最初にかけて各自治体から発表されます。しかし、文部科学省の方針を受けて既にいくつかの自治体で来年の採用試験実施日について、予定ではあるものの発表されている自治体もあります。

岐阜県教育委員会は、令和6年度に実施する教員採用試験について第一次採用試験を令和6年度6月15日に実施すると発表しています。これは、文部科学省が示した「6月16日ごろに実施」という目安に当てはまる日程であり、これまでよりも1か月程度前倒しされています。二次試験についても「7月中旬から下旬に実施の方向」と示しています。全国的にも同じような傾向がみられると予想されており、令和6年度の採用試験はこれまでよりも1か月程度早くなると想定しておきましょう。この時期は、教育実習終了直後でもあることが多いので大学4年生は早めの対策が必要になります。

参考文献:令和7年度採用(令和6年度実施)岐阜県公立学校教員採用選考試験の前倒しについて,岐阜県教育委員会

https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/362062.pdf (参照2023-08-16)

大学3年生から受験することが可能に!

もう1つ大きく変わるのが「大学3年生から受験可能」になったという点です。前述の岐阜県も受験資格に「大学3年生」が入っています。来年は一時的に採用試験を受ける受験生は増える見込みです。ただし、大学3年生の場合は、一次試験を突破することができても教員免許を取得する見込みがたっていないので、二次試験を受験することはできません。その代わり大学4年生のときの一次試験が免除されて、二次試験から受験することが可能になります。このように、教員の志望者を早めに囲い込むということが各自治体で実施されるようになります。来年度公表される受験倍率に関しては、一次試験と二次試験で大きく異なってくる可能性があるので、数字を見る際には注意しましょう。

基礎的な学力は必須 法律はしっかりと覚えておこう

教員採用試験の問題は、大学3年生でも受験することが可能ということから、日頃の学習がものを言うことになります。二次試験では小論文や面接試験が課されることが多いので、これまでの経験などをもとに話したり、書く必要があります。しかし、一次試験は知識を問うものが多く、特に法律関係や基礎的な学力に関しては、自分自身で努力をすればなんとかなります。日程が前倒しされてくるので、今年度受験をした人の情報は参考程度にしておき、情報を常に前倒ししながら準備していくようにしましょう。

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