新任教員向け! 不祥事を起こさないために必ず知っておくべきこと

教員による不祥事が起きてしまった場合、本人が処分を受けるだけでなく、周囲や地域まで広がる大きな問題となります。まずは、よくある教員による不祥事の例や、不祥事を起こさないために気をつけるべきことを知っておきましょう。

不祥事の報告手順については、『教員による不祥事とは?よくある事案や報告手順を知っておこう!』をご覧ください。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

教員として絶対にやってはいけないことは?

近年、長時間労働やパワハラ、それに伴う自殺などの深刻な不祥事が教育現場でも報告されています。あなたは実際にはどのくらい不祥事が起きているのか知っていますか。

文部科学省が出している「公立学校教職員の人事行政の状況調査について」によると懲戒処分等を受けた教職員の数は、全国で2013年は9494人であったのに対し、2022年は4572人と半減しています。

つまり、懲戒処分を受けた教員の数は減少していますが、報道により減少していないように思われてしまっている状況です。これは、報道が悪いのではなく「教員の不祥事は社会的な影響力がある」ということを意味しています。子どもの見本となる立場だからこそ、不祥事は絶対に起こしてはいけないと強く意識しましょう。

不祥事防止の重要性

教員になると最初の研修で、教育長や学校教育課長クラスの方から不祥事防止に関する説明が必ずあります。最初の研修で実施されることからも重要視されていることがわかりますね。

人として法令を遵守して生活をしていくのは当たり前ですが、「公務員」という身分を有しているだけで周囲から厳しい眼で見られてしまうのも事実です。

よくある不祥事

「教員」が懲戒処分を受ける基準は、①「教育公務員としてやってはいけないこと」と、②「公務員としてやってはいけないこと」の2つがあります。

教育公務員としてやってはいけないこと

はじめに①教員(教育公務員)としてやってはいけないことについて紹介します。

教職員の受ける処分で代表的なものは

・児童生徒へのわいせつ行為

・体罰(傷害だけでなく、言葉によるものも含む)

この2つになります。

わいせつ行為の中には「セクシャルハラスメント」、「パワーハラスメント(教員の立場を利用して児童生徒に強制する行為)」も含まれます。また、体罰に関しても傷害(叩くや蹴るなど)を負わせる行為だけでなく、侮辱的な言動により児童生徒に著しい精神的苦痛を負わせた場合も含まれています。

教員として情熱をもって子どもたちに接することはとても大切ですが、子どもに接触する行為は、相手にどう取られるのか分からないことを理解しておかなければいけません。特に今の20代から30代の教員が、児童生徒だったころの指導をそのまま行ってしまうと「不適切」と取られることが多々あります。時代の流れによって、生徒指導の在り方が変わっていることを理解しましょう。具体的な生徒指導のあり方については「生徒指導提要(改訂版)令和4年12月」に記載されていますので一度は目を通しておくことをおすすめします。

また、自治体によって禁止されていたり、所属長の許可が必要だったりするルールもあります。

例えば

  1. 校内での私的なスマートフォンの利用禁止
  2. 児童生徒とのSNS等を利用した私的なやり取り等の禁止

等です。

東京都は「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」によって、2について明確に示しています。地域の実情や過去の不祥事などから自治体ごとに処分規定を設けているので、採用された自治体の規定を確認し、ルールに則った行動を意識しましょう。

地方公務員として遵守しなければいけないこと

2つ目は「公務員」として遵守しなければいけないことです。

よくある例としては

・公金公物の横領

・収賄、供応

・欠勤

・守秘義務違反

などたくさんあります。

どれも「公務員」だから遵守しなければいけないことではなく、人として社会人としてやってはいけないことです。

一般企業の会社員であっても、先ほどの例に当てはまるようなことをすれば「懲戒処分」になります。飲酒運転がいけないことは多くの人が分かっていると思いますが、公務員の場合「速度違反(いわゆる赤切符以上)」でも懲戒処分の対象です。

近年、特に気を付けてほしいのが個人情報の取り扱いです。近年はICT化が進み、個人情報をデータで取り扱うことができるようになりました。クラウドが普及したことにより、USBメモリや紙を紛失して個人情報が漏洩するというケースは減っていますが、一方で、児童生徒が閲覧できない情報を閲覧状態にしてしまったり、校内向けの連絡を保護者に向けて配信してしまったりというトラブルは増えています。

クリック1つ、チェックボックスのチェック1つのミスで大きなトラブルになるので注意が必要です。大切なことは一人で確認して判断するのではなく、複数の目(学年主任や管理職など)で見てもらい、何重にも確認することが大切です。

 

いったん不祥事が起きると影響は大きく 周囲に広がる

教員に限らず「不祥事」がひとたび起きるとその影響力はとても大きいものになります。教員の場合、自治体によって公表基準が決まっており、学校名や氏名が公表されるだけでなく、ウェブサイトでの公開、新聞報道なども行われます。それだけ懲戒処分を受けてしまうと社会的に大きな制裁が待っていることを意識しなければいけません。

教員の不祥事に対する世間の目は非常に厳しいものがあります。例えば、飲食店での何気ない会話で子どもの名前を出してしまい周囲の保護者に聞かれていたことから「守秘義務違反」として問題になるケースや、個人のスマートフォンから何気ない連絡をしたことで「職務専念義務違反」となって処分を受けたケースもあります。

若手の教員から見ると非常に生きにくい世界と思うかもしれませんが、それだけよく見られているということ、教員という社会的な地位に対してよい印象を持っていない人もいるということは意識しておく必要があります。

子どもの憧れにもなる職業 一人一人がしっかりと意識をもって

教員が不人気と言われていますが、それでも子どもたちのなりたい職業ランキングでは10位以内に常にいるのが「教員」(幼稚園教諭や保育士も含めて)です。それだけ子どもたちから憧れられる職業であるため、「不祥事」は絶対にいけません。教員一人一人がしっかりと意識をもって行動することで不祥事は減らせることができます。逆に言えば「常に憧れられる教員でいよう」「一目置かれる教員でいよう」という意識をもっていれば、模範となる行動ができるはずです。将来の学校がよいものになっていくかどうかは、今の教員の皆さんの行動にかかっていると言っても過言ではありません。

参考文献:公立学校教職員の人事行政の状況調査について,文部科学省,https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/1318889.htm,(参照2025-3-14)

参考文献:教職員の懲戒処分の指針,徳島県教育委員会,https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/27/1399824_16.pdf,(参照2025-3-14)

参考文献:教職員の主な非行に対する標準的な処分量定,東京都教育委員会,https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/personnel/duties/culpability_assessment,(参照2025-3-14)

参考文献:生徒指導提要 改訂版,文部科学省https://www.mext.go.jp/content/20230220-mxt_jidou01-000024699-201-1.pdf,(参照 2025-3-14)

参考文献:2-6.懲戒処分に関する処分基準の作成及び懲戒処分の公表に関する取組状況一覧(教育職員),文部科学省,https://www.mext.go.jp/content/20211220-mxt_syoto01-000019568_00206.pdf,(参照 2025-3-14)

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