外国籍の子どもへの対応として学校や教員に求められていることとは?

近年、日常生活の中でも外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもたちを見かけるようになりました。今回は外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもが抱える問題点、学校や教員にできることを紹介していきます。

外国籍の子どもの現状と外国籍の子どもが抱えている問題

文部科学省の令和4年の「外国人児童生徒等教育の現状と課題」では、公立学校に在籍する外国籍の児童生徒の総数は114,853人と発表されており、10年前の88,092人と比べると23.3%増加していることが分かります。さらに、このうち日本語指導が必要な子どもの割合は41.5%と年々上昇傾向にあり、学校は日本語指導担当教員を配置したり、日本語教室や国際教室を用意したりするなど対応に追われているのが現状です。

外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもが学校生活を送る中で困ることは多くあります。例えば、宗教の違いによる給食の問題、日本の学校文化への適応、そして最も多くの子どもが困っているのが日本語が理解できず授業についていけないことです。

日本語の文字には、ひらがな・カタカナ・漢字があり、漢字には音読みと訓読みがあります。さらに、敬語には丁寧語・謙譲語・丁寧語などの違いがあり、他国の言語に比べても覚える種類が多く習得するまでに時間がかかる言語です。

参考文献:文部科学省,外国人児童生徒等教育の現状と課題,令和4年12月,文部科学省総教育政策局国際教育課,https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/todofuken_kenshu/r4_annai/pdf/93812501_05.pdf(参照2023-04-01)

学校の役割

学校は外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもにとって日本で生活していく上で必要なことを学ぶ場であり、社会とつながる大切な場となります。

日本人であっても学校に通う中で多くの悩みや問題が起こりますが、外国籍の子どもや外国にルーツを持つ子どもはそれに加え、自国とは違う文化や考え方の違いにカルチャーショックを受けることもあります。そのため、学校生活に適応すること自体に大きなストレスを感じることも少なくありません。このストレスにより、学校に行くことが困難になり、登校することができなくなる子どもも多くいます。

学校に求められているのは外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもに対し、日本や学校に適応できるように手助けをすることです。

外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもにとって日本の学校に馴染めず孤立してしまうことがあるため、学校の中に安心できる「居場所」が必要です。居場所は場所の提供だけではなく、安心できる存在である担任・教科担当・養護教員・友人との時間ともいえます。大切なのは、教室だけではなく日本語教室や国際教室、保健室など、外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもが安心して話ができる場と時間をつくることです。

外国籍の子どもに対して気をつけるべきこととは?

外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもが日本に来る理由の多くは子どもではなく、親の仕事の都合や結婚です。子どもたちは日本の文化や言語に不安を抱えた状態で突然日本に来ることが多くなります。

教員は、日本の文化や言語を学ぶ時間もなく日本の学校に通うことになる子どもに対し、日本の文化や言語を教えることに目が行きがちですが、実は他にも気をつけなければならないことがあります。気をつけることの1つ目は文化的・宗教的違いです。文化的な違いの例として、日本は学校に登校すると上履きに履き替える学校が多いですが、アメリカやヨーロッパでは土足のまま教室に入るのが一般的です。他にも、アメリカやドイツ、フランスなどの学校は授業を行うのが中心で、部活動や身だしなみの指導を行うことは少ないといった違いもあります。

宗教的な注意点の例としては、食べてはいけない食材があるということです。イスラム教圏の子どもは豚肉を食べてはいけないことはよく知られていますが、他にも宗教的な判断で口にできないものが多くあります。そのような子どもには給食で対応ができるかを確認し、対応が難しい場合にはお弁当を持ってきてもらうなど、学校だけでなく家庭と一緒に対応していくことが大切です。他にも、肌を露出してはいけないという理由から体操服に着替えることができないことがあります。そのような場合、肌の露出を避けるために長袖長ズボンやアンダーウェアの着用を許可など柔軟な対応が必要です。

気をつけることの2つ目は日本に来る前の学校や就学状況をしっかりと把握することです。国や地域によって学校の役割が日本と比べて限定的であり、体育や音楽などの教科がない国もあります。このように、学校の役割や学習内容は大きく異なり、そもそも学校に通っていなかったという生徒も見受けられるため、日本でどのような支援が必要なのかを計画する上でも、子どもの学校や就学状況をしっかりと把握することが必要です。

参考文献:文部科学省,第1章_外国人児童生徒等の多様性への対応 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/22/1304738_003.pdf(参照2023-04-01)

気をつけることの3つ目は家庭環境を理解することです。これは外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもに限ったことではありませんが、外国籍や外国にルーツをもつ家族は独特の問題を抱えている場合があるため、保護者と子どもから話を聞くことが大切です。例えば、来日の際に多くのお金が必要となることで経済的に苦しく、制服や体操服などの学校生活に必要なものが用意できない場合があります。他にも、日本で忙しく働く両親の代わりに料理や買い物などの家事をしたり、兄弟姉妹が多い場合は妹や弟の世話をしているヤングケアラーで、自分の時間が取れないことが問題となっています。

気をつけることの4つ目は、外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どももクラスの一員であるということです。クラスの中で特別扱いしてしまうと、外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもの孤立に繋がります。

日本語指導の現状と教員に求められることとは

外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもの中で日本語指導が必要な子どもは年々増えてきています。しかし、学校を取り巻く環境は複雑になってきていて教員は日々忙しく、外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもに対してしっかりと時間をかけて向き合うことが難しいのが現状です。そのような中で、私たち教員はどのように外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもと向き合っていけば良いでしょうか。

まずは外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもの日本語の理解度を把握することが必要です。例えば、「話すことはできるけれど、書くこと、読むことはできない。」「漢字はルビをふってあれば特に問題ない。」「日本語を全く理解することができない。」など、子どもの日本語の能力によって教員に求められることは変わります。

「漢字はルビをふってあれば特に問題ない。」といった場合であれば、担任や教科担当教員が配布資料やテストにルビをふって対応すること、漢字の学習を進めることで対応できます。しかし、「日本語を全く理解することができない。」といった場合、担任や教科担当だけで対応をすることは非常に難しいです。そのような場合は、日本語指導の専任教員を配置する、それが難しい場合は市町村などから派遣される日本語指導の支援者に依頼をすることが考えられます。

日本語指導担当教員は生活面の適応、日本語学習、教科学習などの指導や支援を行うだけでなく、安心できる「居場所」をつくるためにコミュニケーションをしっかりと取ることが大切です。他にも、教員間や家庭との情報共有を行い、共通の理解を促進することが求められます。

「かすたねっと」を活用しましょう

外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもの学習を支援する教員への強い味方の情報検索サイト「かすたねっと」をご存知ですか。「かすたねっと」は多言語で作られた動画や教材をダウンロードして使ったり、用語の検索したり、多言語の予定表を作成することが可能です。

「外国人児童生徒等教育に関する研修用動画一覧・関連資料」では日本語指導担当教員や学校向けに、「外国人児童生徒等の受入れ」「読み書きの力(リテラシー)の習得」「日本語指導の方法(初期段階)日本語基礎プログラム」などの研修や学習に使える動画があります。

「外国人児童・保護者向け動画一覧・関連資料」では「はじめまして!今日からともだち」「おしえて!日本の小学校」の動画が日本語、英語、ポルトガル語など15ヶ国語で作られていて、動画のシーンごとの説明やセリフが日本語と外国語で書かれている関連資料があり、とても便利です。

「教材・文書検索ツール」の教材検索では多言語対応の教材検索が国語や理科といった科目種別、小学校や中学校の学校種によって検索をすることができ、授業や日本語の学習に活用することができます。文書検索では、進路・成績、費用・給付、学校行事などで活用できる文書をダウンロードすることも可能です。

参考文献:文部科学省,かすたねっとhttps://casta-net.mext.go.jp/(参照2023-04-01)

「質の高い教育をみんなに」を目標に

SDGs(Sustainable Development Goals)とは2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGs の17のゴールのうち目標4「質の高い教育をみんなに」の達成のためにも日本で外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもが教育をうけることも例外ではありません。

参考文献:JAPAN SDGs Action Platform,SDGs とは?,https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html,外務省(参照2023-04-14)

日本で教育をうける全ての子どもにSDGs4「質の高い教育をみんなに」

外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもは年々増加傾向にあり、学校や教員への負担も大きくなる一方で、1人の教員ができることには限界があります。質の高い教育を提供するためにも1人で頑張りすぎず、周りにいる教員や事務員、地域の支援者グループなど、多くの人の協力によって支援をすることが大切です。

外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもがクラスにいることで、教員だけでなくクラスの子どもたちにも大きな学びがあり、「質の高い教育をみんなに」につながると考えられます。まずは、外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもの国や教育や文化について理解し、その背景を理解した上で子どもと向き合い、多くの人でコミュニケーションをとり必要な支援を考えていくことからはじめましょう。

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