「道徳」の授業対策を伝授!ポイントはテーマに沿った4つの発問

「特別の教科 道徳科」って何?

若手教員らが苦手としている授業の一つに、「道徳科」があるのではないでしょうか。

道徳科は、「生命を大切にする」「他者を思いやる」「善悪を判断する」といった道徳性を養うことを目的とした教科ですが、元々は教科の一つではなく、「道徳の時間」という位置付けでした。国語や数学といった通常の授業や、課外活動などを含めた学校生活全体の中で道徳性を育むために、学習指導要領には以前から「道徳教育は、学校の教育活動全体を通じて行うもの」と明記されていましたが、2015(平成27)年に指導要領の一部が改正され、道徳教育の充実を図り、“特別の教科”としての道徳科がスタートしました。

道徳科の問題には答えがなく、数値で評価を付けることもできません。実際に授業をしてみると、「国語の読み取りになってしまう」「授業の着地点がぶれてしまう」「評価の付け方がわからない」といった事態に陥ることも。このような悩みを抱える教員の方々に向けて、教科の狙いや、授業のこつを紹介していきます。

(道徳科・道徳教育については、こちらの記事「道徳科と道徳教育の違いとは?【確認するべき基礎・基本】」でも紹介しています。ぜひご覧ください。)

道徳科の学習内容は?

道徳科の学習内容は、大まかに以下の4点から成り立っており、これらを踏まえた授業づくりが欠かせません。文部科学省の「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説」を要約・補足して紹介していきます。

1.道徳的諸価値への理解

道徳的諸価値への理解とは、道徳的価値の意義と、その大切さへの理解を指します。また、道徳的価値とは、よりよく生きるために必要とされるものであり、人間としての在り方や生き方の礎となるものです。(※例「友情、信頼」「正直、誠実」「希望、勇気」「公正、公平」「相互理解、寛容」など)

「道徳的価値が、人間としてよりよく生きる上で大切だということ」「道徳的価値は大切だが、実現できない場合もあること。人間には弱さがあること」「道徳的価値は人によって異なるということ。考え方は多様であること」の3点を理解することを狙いとしています。

2.自己を見つめる

上記の道徳的価値を理解してもらった上で、今度は子どもたちに、自分のこととして感じたり考えたりしてもらいます。これまでの自分の経験や、その時の感じ方、考え方と照らし合わせながら、さらに考えを深めてもらいます。

3.物事を多面的・多角的に考える

道徳性を養うためには、児童が多様な感じ方や考え方に接することが大切です。多様な価値観の存在を前提にして、他者と対話したり協働したりしながら、物事を多面的・多角的に考えることが求められています。子どもたちに、自分自身の体験などを通して、道徳的価値の意義や困難さ、多様さなどを理解してもらいましょう。

4.自己の生き方についての考えを深める

道徳的価値への理解や、物事を多面的・多角的に考えることを通して形成された道徳的価値観を元に、これからの生き方について考えを深めてもらうことが大切です。多様な考え方や感じ方に触れることを通して自分の特徴などを理解し、伸ばしたい自己を深く見つめたり、これからの生き方の課題を考えてもらいます。

これら4点の学習を通して道徳的な判断力・心情・実践意欲を養います。そして、日常生活や様々な場面・状況で適切な行為を主体的に選択し、実践できるようなることが最終目標となります。

参考文献:小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説. 文部科学省. H29年7月.pp17-21

発問を駆使した授業づくりが大事

先ほど紹介した4つの学習内容を踏まえた授業を行うには、教員から子どもたちに向けた「発問」の工夫が欠かせません。発問は、子どもたちの理解を確かめたり、深い思考を促したりすることを狙う問いかけなので、子どもたちの活発な議論を引き出すのに効果的です。次に、発問の種類と、道徳科の授業での使い方を紹介していきます。

「中心発問」は授業の骨組み

「中心発問」は、教材が求めている「狙い」に子どもたちを向かせるために最初に投げかける“大きな発問”です。道徳科の授業では、先ほど紹介した「道徳的価値」への理解が狙いとなっています。読み物教材を扱う場合は、その教材の狙いに直結する大事な場面を取り上げて子どもたちに問いかけることになります。

中心発問を考える際には、主人公の葛藤が見えたり、登場人物の関係性が大きく変わったりするなど、道徳的な問題や課題が含まれている場面を選ばなければなりません。さらに、子どもたちから多種多様な意見が生まれそうな場面であることも大切です。クラス全体で意見が一つだけになってしまうと、自分と異なる価値観に触れたり、議論を交わしたりできなくなってしまうため、注意しなければなりません。

一人一人に考えを持たせる「基本発問」

「基本発問」は中心発問の内容について深く考えさせるための布石となる“小さな発問”です。登場人物の心情や考えを問うものが多く、活発な議論よりも、一人一人に自分の考えを持たせることに重きを置きます。教材によっては歴史的な背景を理解するために発問をすることもあります。この小さな発問を通して、教材の道徳的価値を問う中心発問に繋げていきます。

また、基本発問には、場面ごとの心情や行動の変化を考える「場面発問」と、教材の狙いをとらえる「テーマ発問」があります。例えば「命の尊さ」が、教材が狙う道徳的価値に設定されている場合を考えてみましょう。病気になった主人公が臓器移植によって一命を取り留め社会復帰ができたという内容の教材だったとすると、

  • 場面発問の場合・・・時系列に沿って主人公の心情の変化を追う
  • テーマ発問の場合・・・命の尊さから考える

という切り口で授業を進めることになります。場面発問は考えやすいテーマ発問は教材の狙いからぶれにくいという特徴があります。

価値観を揺さぶる「補助(深化)発問」

基本発問と中心発問だけでは、子どもたちの多様な価値観を引き出せません。子どもたちの価値観に揺さぶりをかける「補助(深化)発問」が、授業のポイントになります。

先ほどと同様に、生命の尊さを問う臓器移植を受けた話を例に考えてみます。

「臓器移植を受けて目を覚ましたとき、主人公はどんな気持ちだったでしょうか」と中心発問を投げかけた時、子どもたちからの答えは

  • 命が助かってよかった
  • これで元気に遊ぶことができる

などが予想されます。これを受け、教員側が「本当にそうだろうか」と切り返すのが補助(深化)発問となります。

「自分の命が助かったということはどういうことなのか」「『移植』ということは、誰かが犠牲になっているのでは」といった点に気づかせることで、考え方が一つに偏っている子どもの価値観を揺さぶることができるのです。いくつかの基本発問を通して考えが十分にまとまった段階で揺さぶりをかけるようにしましょう。

また、「中心発問」と「補助(深化)発問」を一緒に考え、価値観を大きく揺さぶる発問を設定することが大切です。揺れ幅が大きいほど、子どもたちは自分の道徳的価値への理解に近づいていくことができます。

実践に繋げる「一般化発問」

最後に紹介する「一般化発問」は、教材を通して自分の心に芽生えた道徳的な価値観を一般社会でどう使っていくのか考えさせる発問です。授業をする前と後で、子どもたちの考え方をそれぞれ書き出して比較し、どんなことに気が付いたのか記録しておくとよいでしょう。

また道徳科の評価は、1時間の授業で身に付けたことを評価するのではなく、1学期間や、一つの道徳的価値について学んだ間の「変容」を評価していくのが良いとされています。変容をとらえるためには、毎回の授業の記録を残し、この記録を横につなげて評価しなければいけません。一般化発問によって記録された子どもの言葉は、道徳的価値への理解度を測る手がかりとなります。

教科の本質を理解した上で発問作りを

昨今は以前にも増していじめが問題視されているほか、多様性への理解や、国際感覚などが求められています。こうした中で、子どもたちが社会の一員としてより良く生きるために必要なのが「道徳科」です。教員側は道徳科の重要性や本質を理解して授業に臨みましょう。

また、子どもたちの多様な価値観を引き出すことに意識が取られてしまい、授業の収拾がつかなくなることも多々あります。教材の情報量が多すぎて子どもに迷いを与えるのが原因です。子どもたちが道徳的価値について考えやすくなるように的を絞った発問を作ることさえできれば、スムーズに授業を行えるでしょう。

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