女性教員だって定年まで頑張りたい!教員の子育てにおける制度とその実態を解説します

これから教員になりたいと思っている方や、教職について興味のある方、あるいは先生になったばかりの方の中で「将来は子どもを産んで育てたい」と考える方は多いでしょう。教員に限らず、現代の日本は女性の社会進出を促す政策や制度が定着しています。そのような背景もあり、働く母親いわゆる”ワーママ”の割合は、18歳未満の子を持つ母親全体の7割程度と言われているのです。

子育てをしながら仕事をすることが当たり前になりつつある日本の世の中で、日頃から全力で生徒に向き合っている先生も育休や産休などの制度は使えるのでしょうか?また、子どもを産んだ後に育児のサポートとなるような休暇はあるのでしょうか?今回は、「学校の先生でも産休や育休は取れるのだろうか?」「子育てをしながら、定年まで教員を続けたい」と考える方に向けて、現行の制度やその制度の実用性について解説します。

教員の出産・育児における支援制度について

東京都を例にして、教員のための出産や育児における支援制度を紹介します。他の都道府県でも類似する制度が存在しているので、それぞれのホームページを見てみると良いでしょう。

妊娠・出産したら使える制度一覧

種類内容
妊娠症状対応休暇つわりなど妊娠における症状で、出勤が困難な場合の休暇
早期流産休暇流産してしまった場合の休暇
母子保健健診休暇妊婦健診のための休暇
妊婦通勤時間特に出勤時間においてラッシュを避けるために時間をずらして通勤ができる
産前産後休暇出産予定日6週間前から、産後8週間経過するまで必ず取得しなければならない休暇
育児休業子が満3歳になるまで休業することができる
育児時間子の世話をするための時間を勤務中に1時間程度取得できる
子の看病休暇子の病気や健診の際に取得できる休暇
育児短時間勤務育児と仕事の両立のために勤務時間を短くすることができる
早出遅出勤務1日の勤務時間を変更せず、出退勤時間をずらすことができる

このように、教職員の出産・育児における支援制度は一般企業に勤めている会社員と同じかそれ以上に充実しています。

育児・介護休業法第5条によると、労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。と定められています。これを基にして、育休は子どもが1歳になるまでとする企業が多く、小さい子どもを育てながら仕事と両立することがとても難しいものになっています。

また、「待機児童」という言葉を耳にしたことはありますか?待機児童とは、子どもを保育施設に預けたいけれど、その施設に空きがなく空きが出るのを待っている児童のことです。待機児童になってしまうと、親は育休から復帰できず、働きたくても働けない状態になります。待機児童のほとんどは3歳未満児なので、3歳以上での保育園入園は比較的スムーズにできるでしょう。

つまり、3歳まで育休が取得できると待機児童となることなく、親の職場復帰がしやすいというわけです。こういったことからも、3歳まで育休を取得できる点は非常に魅力的と言えます。さらに、妊娠中のサポート制度も一般企業ではなかなか見ないものがあり、取得できるできないに係わらず制度としては充実している印象を受けます。

参考文献:育児・介護休業等に関する規則の規定例. 厚生労働省. 令和4年3月.

参考文献:令和2年10月時点の保育所等の待機児童数の 状況について.厚生労働省.令和3年8月

制度は実際に利用できるのか?

上記で紹介したように、教員の妊娠や出産をサポートする制度は非常に充実しています。しかし、制度はあっても実際にそれを活用できなければ意味がありません。子育てと教員の両立を考える方にとって一番気になる点は「制度を活用できるのか」ではないでしょうか?

文部科学省が平成30年度に調査した、公立学校教職員の人事行政状況調査は以下の通りです。

  • 育休の取得割合→女性 96.9%
  • 育児短間勤務の取得割合→女性 1.8%

※いずれも調査時に初めて育児休暇等を取得可能になった教職員の取得割合を調査

参考文献:公立学校教職員の人事行政状況調査について.文部科学省.令和元年12月24日

この結果で分かることは、

  • 育休の取得率は高い
  • 育児短時間勤務制度を利用する教員は少ない

ということです。

育休の取得率はとても高く、子どもが小さいうちは育児に集中したいという女性教員が多いことが分かります。また、育休を取得する際には、復帰することが前提です。妊娠・出産を期に退職を決意する方もいる中で、出産した約97%の女性教員が育児と教員を両立する意志があるということになります。やはり、子どもが3歳になるまで休暇がもらえるのはワーママにとって大変魅力的なのです。一方、育児短時間勤務制度を利用する方の割合は、1.8%と少ない傾向があるようです。調査にはありませんが、妊娠中の通勤時間緩和制度や産後の早出遅出勤務も取得割合は非常に低いと予想します。

これには、教員の忙しさや責任の重さが関係すると考えます。しかし、一般企業に勤めるワーママ達も限られた時間の中で仕事をしているわけなので、教員だけが制度を利用できないというわけでは決してありません。育児短時間勤務制度を利用する先生も、制度を利用しない先生も、上手に時間を使って負担を減らしているのでしょう。子育てと仕事、どちらも自分だけで全て完璧にこなすのは無理がありますから、できる範囲で工夫して時間を使えば両立はできるということです。

また、子どもが熱を出し、2〜3日以上仕事を休まなければいけないことはよくある話です。それ以外にも小さい子どもは、咳や鼻水、発疹が出るというような保育園に預けられない症状が出ることがよくあります。この場合は、子の看病休暇に該当し、休暇を取得することができます。このように妊娠中や育児中は、休暇を取らなければいけないタイミングが頻発することは間違いありません。その間は、学校の生徒や他の先生に負担が行くことが容易に想像ができてしまいますよね。そんな時には「迷惑ばかりかけているからもう辞めてしまいたい」ではなく「今迷惑をかけている分、出勤したときは全力で頑張ろう」と前向きに捉えられるプラスのマインドが必要です。

両立には他の先生、パートナーや家族との協力が必要

子育てをしながら教員も続けたい方は、周りから協力を得ることが必須です。他の先生方には日頃から感謝を伝えたり、自分ができることは進んで実践したりと、周りからの視線を良い方に持っていく努力をしなくてはいけません。休んでしまった後は、どんな仕事に就いていても気まずいものです。しかし必要以上に申し訳なさを感じると、自分自身が潰れてしまうので、「今は仕方ない」と割り切ることも大切です。子育ては母親だけがするものではありません。パートナーや家族と協力する方法を考えておきましょう。

例えば、保育園の送迎や病気の時の対応です。

  • 保育園登園時は、母親である自分が担当して、帰りは夫が担当する。
  • 子どもが熱を出したときには、交代で休む。

と予めルール化しておくと、心に余裕が生まれます。

パートナーだけでなく、親や家族にも日頃から協力をお願いしておくことも大切です。更に地域の病児保育やベビーシッター制度も活用しましょう。子育ては、1人でやろうとすると困難に感じますが、いろんな人と一緒に育てるという気持ちの方が心の健康に良いです。しかも大変なのはほんの数年。子どもがある程度手のかからない年齢になれば、また教職に注力できる時がきます。それまでの間は、使える制度をしっかり利用しつつ、周りと連携していきましょう。

子育てと教員の両立は不可能ではない

定年まで先生を続けたいと希望する女性教師の大きなハードルの一つとして、出産・育児が挙げられます。これまで紹介したように、制度は充実しているので世の中はそういった方を応援する流れになっているのは間違いありません。しかし現状では、先生としての業務が膨大でその制度をフル活用できないのが現実です。

これは教員に限った話ではありません。どんな仕事をしていても責任感を持っていなければならないものですから、子供の病気で仕事を休む際には誰でも心苦しいものです。休むことのできる権利を活用しながら、教員と子育ての両立を目指すことは生徒たちも見ています。生徒たちが将来、「あの先生も両立を頑張っていたし、私もそうなりたい!」と、ロールモデルになることもあるかもしれません。

世の中のワーママは誰しもが一度は味わう両立の難しさに加え、教師ならではの苦労もありますが、このハードルは必ず乗り越えられます。もっとこれらの制度を心置きなく活用できて「先生も母親もどっちも楽しい」と言えるようになることを願います。

最新情報をチェックしよう!