教員が保護者と接する機会は思っている以上に多くあります。せっかく縁あって出会えた子ども達と保護者と良好な関係を築きたいと考えるはずです。
この記事では事例を参考に保護者対応のポイントをご紹介します。
保護者と接する場面
学校という組織は、子ども達と教員の関係のみで構築されると思われますが、それで完結ではありません。
子ども達それぞれに家庭があり、保護者がいます。教員として子ども達と良い関係を築くためには、保護者と良い関係を築くことも、とても大切です。
教員と保護者との距離感は、物理的にも心理的にも、子どもの年齢が下がれば下がるほどより近くになります。
ここでは、教員がどういった場面で保護者と接する機会があるのか、みていきましょう。
学校→保護者への書類を通して
学校生活全般の連絡や報告は、ほとんどが書類を通して行われます。
例えば下記のようなものが考えられます。
- 学校通信
- 学級通信
- 保健だより
- PTAだより
- その他お知らせプリント
- 部活動の予定表
- 集金の通知
- 通知表
- テスト
近年は、紙媒体ではなく、ホームページで情報を公開したり、個別メールを使用したりしている学校もあります。どちらにしても、口頭では無く、文面でのやりとりが主となります。
保護者→学校への書類を通して
行事の出欠プリント、児童生徒個表、連絡帳などがあります。
学校行事を通して
入園・入学式、運動会、音楽会、文化祭、授業参観、学校開放日、学級懇談会、部活動保護者会、PTAの挨拶運動、卒園・卒業式などがあります。
もちろん全ての行事に全ての保護者が出席する訳ではありませんが、1年の内でも5回以上は子ども達の活動の様子を見てもらったり、集団で話したりする機会があります。
近年は、コロナウイルスの関係で、行事の縮小や授業参観の中止という措置がとられています。
個人で会う機会を通して
家庭訪問、個人懇談会、進路相談会、その他個別の対応事項がある時などがあります。
個人的に1対1で時間をかけて話ができる機会は、よっぽどのことが無い限り、限られています。
欠席や体調不良の電話連絡を通して
今日中に伝えたい連絡や、子どもを通したくない連絡がある場合は、個別に電話対応をします。
喧嘩やトラブルなどの早急な対応が必要な場合も、保護者と口頭でやりとりします。
押さえるべきポイント
誠心誠意対応する
学校は、責任を持って子ども達を預かっている場所です。例え失敗しても、一生懸命に授業や学級活動、子ども達の相手をしているかどうかは、子どもを通して保護者に確実に伝わっています。いい加減な気持ちでは、保護者と信頼関係を築くことはできません。
何かしてくれたことに対してお礼をしっかり伝えたり、間違えた連絡をしてしまった場合には素直に謝ったり、保護者に対しても子ども達に対しても誠心誠意、心のこもった対応をしましょう。
話をしっかり聞く
例えば、期限を過ぎても提出物を学校に持ってこなかった子どもがいたとします。
そんな時、「○○さんは全然提出物が出ていません、他の子はもう提出しています、今すぐ持ってきてください。」など一方的に責め立てるような対応はいけません。
子どもも保護者も先生には言えなかったけれど、提出物が出せない理由と原因があるはずです。それを一方的に責められたら良い気持ちはしませんし、信頼も失うことになります。
「○○日に配布したプリントはありますか?」「最近、お忙しかったですか?」「○○さんがなくしてしまった可能性はありますか?」など、まずは保護者の話に耳を傾けましょう。
子ども達一人一人を褒める
できなかったことにチャレンジしていたり、友達に優しくしていたり、苦手な給食を食べられたり、ささいなことで構いません。
先生はあなたを見ているよ、応援しているよ、ということを伝えることが何よりも重要なので、子どもの成長を自分の心にとどめるだけでなく、子どもにも保護者にも積極的に伝えていきましょう。
相談をされたときには、速く・的確に・継続的に対応をする
保護者から相談された際に、「そうですか。考えておきます。」と、聞いて終わりでは保護者の不安は拭えません。
その場ですぐに解決ができない場合は、「今すぐにはお返事できないので、他の教員と話し合って、○分後までに、折り返して必ずお電話します。」などと伝えましょう。
自分一人で抱え込まず、学年職員や管理職にまずは報告をすること。そして、対応策を考え話し合い、その結果を保護者に伝えること。
それで終わりでは無く、「あれからいかがですか?」などと、定期的に保護者と連絡をとることも忘れずに対応しましょう。
NGな対応
教員の考えを押しつけない
「私は○○には絶対気をつけていたので、間違いありません。」「子ども達が理解できていなくても、私の授業スタイルを変えるつもりはありません。」など、絶対的な自信を押しつけてはいけません。
毅然とした態度をとることが必要な場面もあります。しかし、それと日常的に自分の考えを保護者に押しつけることとは違います。心に余裕をもって、客観的に話ができるようにしましょう。
連絡を忘れない
喧嘩や怪我などのトラブルが起こっても、忙しさの中で連絡を入れ忘れてしまった、などということはあってはなりません。
子ども達が家に帰る前に、先手を打つつもりで連絡を入れましょう。
ささいな怪我であったとしても、連絡を入れなかったばっかりに保護者が怒ってクレームの電話を入れてくる場合もあります。
あらかじめ連絡を入れておけば、「うちの子が不注意ですみません。」となる場合もあります。
なにかあった際の連絡はいつも以上に忘れないよう注意しましょう。
無意識な贔屓に気を付けて
教員にとっては贔屓しているつもりはなくても、保護者にとっては敏感な場合もあります。
具体的には、「学級通信にいつも決まった子の絵が載っている」「個人懇談会の順番が出席番号順のため最後になってばかりだ」「音楽祭の時に毎年指揮者の後ろで顔が見られない」などが挙げられます。
子ども達自身はそれほど気にしていないかもしれませんが、保護者にとっては大きな問題です。俗に言う「ママ友トラブル」にもなりかねません。
できることなら全員平等に、もし無理そうな場合は理由を明確にしてあらかじめ保護者に伝えると良いでしょう。
こんな時どうする?
ここからは、具体的な事例を用いて保護者対応を検討していきましょう。
事例1
A君が学校を出てから1時間後、「うちの子がまだ家に帰ってきません。学校にまだいますか。」と保護者から、かなり焦っている電話連絡がありました。
A君の家から学校までは歩いて15分ほどです。時刻は冬の17時、外はもう薄暗くなっています。
あなたは担任として、どんな行動をとりますか。
対応
保護者に対して、まずは、「それは心配ですね」と気持ちを受け止めて、状況をしっかり聞きましょう。
そして、「○時に、Bくんと一緒に学校を出たところを門で見送りました。校内にはいません。」と事実を伝えましょう。「今からC先生と、D先生の2人で、学校から家までの通学路を歩いて探してみます。保護者の方はAくんが帰ってきても大丈夫なように家で待機していてください。Bくんと一緒に帰ったので、Bくんの家に連絡取れますか?」など、具体的な対応策を保護者が安心できるように伝えましょう。決して「そのうち帰ってきますよ」など、無責任な対応をしてはいけません。万が一の場合もあるので、保護者の気持ちになって、親身に考えましょう。
学校側としては、応援を求め複数人で対応し、歩いて探す人、車で周辺を探す人、学校で連絡待機をする人など手分けをしましょう。場合によっては警察に相談しなくてはいけません。
Aくんは、Bくんの家で遊んでいたことが分かり、事なきを得ました。
その後は、子ども達に指導をすることはもちろんですが、保護者にはよかったですねと寄り添い、子どもに指導した内容を伝え、そして今後同じことが無いように対応策を一緒に考えましょう。
翌日、子ども達の学校での様子や、家での様子を確認するために電話連絡を入れるとより丁寧でしょう。
事例2
Eさんの保護者から「塾の宿題が多いので、学校の宿題は無くして欲しい。」と電話連絡がありました。
あなたは担任として、どんな行動をとりますか。
対応
この場合は、「そうですか、では宿題を減らします。」と引き下がってはいけない事例です。
宿題を出している理由をしっかり説明し、意義を理解してもらいましょう。
また、Eさんだけに宿題を出している訳ではないこと、他のクラスや教科も共通していることなど、Eさんだけを特別扱いするつもりはない、とはっきり伝えましょう。
その上で、Eさんが学校と塾を両立できない理由がどこにあるのか、一緒に考えてアドバイスをすると良いと思います。
まとめ
なんとなく「保護者対応は嫌だなあ」と思っている人も多いかと思います。
「子ども達が学校にいる間、教員を信頼して大切なお子さんを預けてくださっているんだ」という気持ちを持ち、保護者に伝えていきましょう。