色のバリアフリー すべての子どもにとって見やすい黒板にしよう

子どもたちにとって見やすく、わかりやすい板書は、授業の内容を整理して理解するために重要な役割を持っており、学習意欲にも大きな影響を与えると言われています。後からノートを見直した際に重要な箇所を分かりやすくするためにカラーチョークを使うことが多いのですが、黒板のチョークはたくさんの色を使えばよいというものではありません。

使用する色が多すぎると、どの部分が最も重要なのか分からなくなってしまうことや色の刺激が強く頭に入りにくくなることもあります。また、子どもによっては色覚異常をもっている子どももおり、黒板に書いた文字の色によってはまったく見えないということもあります。

近年は、教科書にも色覚異常に配慮した色使いがされるなど、色覚異常に対する理解が進んでおり、「色覚異常対応のカラーチョーク」も販売されています。今回は、学校における色のバリアフリーを取り入れた黒板づくりや分かりやすい色使い、板書について丁寧に解説していきます。

参考文献:天神白墨日本白墨工業株式会社,https://www.tenjin-chalk.co.jp/cud.html(参照2023-09-15)

【板書計画】子どもに分かりやすい黒板づくり

すべての教員は、授業をする前にどのように黒板を書くか板書計画をしています。

近年はICT機器が各校に導入され、大型の電子黒板が入っているところも増えていますが、電子黒板でも授業の流れを組み立てる板書計画は必須となっています。 

板書計画を作る際に意識しなければいけないことは「子どもの理解を促進し、学習の記録を残すこと」です。授業が終わったときに子どもが板書やノートを見て「今日の授業では〇〇を学びました」と説明ができるような黒板を意識しましょう。

必ず子どもの目線で計画を立てる

実際に授業を見ているとよくある光景が

① 子どもが黒板をノートに書いているのに教員が説明をしている

② 子どもがノートのどこに書けばよいのか分かっていない

③ 子どものノートを書く時間を見誤り、授業が終わらない

①~③のようになってしまうのは、教員主体で板書計画を作成したことが原因です。子どもがノートを写しているのに、授業の説明をしていては子どもが理解することができません。「ノートを書く時間」「聞く時間」「考える時間」は分けておくのが授業の基本です。

②は、板書計画を立てる段階で子どものノートと同じものに作ることで、教員もイメージが作りやすくなります。黒板の中には子どもと同じマス目の黒板もありますし、実物投影機を利用して、子どもと同じノートに書いていくことにより、子どもは視覚的に理解することができます。

構造的な板書や分かりやすい板書を作ろうとすると、どうしても黒板に書く文字が増えてしまいます。子どもは黒板に書かれた文字はノートに書き写さなければいけないと反射的に行動します。そこで、授業づくりともつながりますが、普段の授業から「ノートを書く時間」を意識的に確保し、どこを書けばよいのか説明することが大切です。

【カラーチョーク】色分けのルールを決めよう

カラーチョークを使用する際には、予めルールを決めておきましょう。黒板の色使いは学校の方針として決められていることもあるので、まず校内ルールを確認します。

ルールを確認、決定したあとは、4月当初の授業開始時に、その色分けについて子どもにルールを説明し、浸透させましょう。

カラーチョークの使い方で多い2パターンを紹介します。

パターン①

「白」⇒普段の文字、 「黄」⇒重要語句「赤」「青」⇒めあてやまとめなどの囲い

パターン②

「白」⇒普段の文字、 「赤」⇒重要語句 「黄」「青」⇒めあてやまとめなどの囲い

黒板の色が緑色のため、チョークの「赤色」が見えにくく、ノートでは「赤色」で書くように指示される重要語句を黒板では「黄色」で書くことが多い印象です。

パターン①の場合は、子どもによっては黄色を持っていなかったり、ノートでは見にくかったりするので、ノートに書く際に黒板の黄色を「赤」に変換して書くように指示するなど工夫が必要です。

パターン②の場合も、黄色の代わりとなる色の筆記用具の用意が必要となります。色の変換は、小学校高学年や中学生であれば問題なくできると思いますが、小学校低学年では慣れるまで難しいこともあるので、発達段階に応じた配慮も必要です。

【色覚ユニバーサル】すべての子どもへの配慮

板書計画を立てる際に「分かりやすくまとめる」「図表などを使ってまとめる」などそれぞれの教員が工夫をしていると思います。

ここで1つ気をつけてほしいのが「教員目線になりすぎないこと」です。

例えば、「配色の配慮」では、人によっては視覚的に認知しにくい色があり、チョークの色では「赤」が該当します。赤は見にくいと感じる人が多く、視覚的に困難さをもつ子どもは、緑色の黒板に書かれた赤は認識できないケースがあります。他にも感覚過敏をもっている子は、発色の強い色やコントラストの強い色を苦手としており、場合によっては落ち着いて黒板を書き写すことすら困難になる場合があります。通常の黒板を使うよりも彩度が強い電子黒板やスクリーンを利用する場合には、特に注意が必要です。

クラスに色覚に関する困難をもつ子どもがいる場合には先ほども紹介した「障がい対応のカラーチョーク」がおすすめです。特別支援学級では導入している所も多いですが、学校予算で購入することができます。

支援学級の維持に関して、国や自治体から消耗品購入のための補助金が出ているところもあるので、障がい対応のカラーチョークは、こうした補助金を利用して購入する方法もあります。

色の識別が困難な人でも見やすくなっている「ダストレス eyeチョーク」のリンクを載せておりますので、せひチェックだけでもしてみてください。

筆者が実際に使用してみたところ、書き味は申し分ないのですが、一般的なチョークとはやはり色味が変わるので、慣れるまで時間がかかると感じました。新学期から使用するのがよさそうですね。

参考文献:学校関係者のための 学校における色のバリアフリー 公益社団法人 日本眼科医会,http://shizuoka.gankaikai.or.jp/wp-content/uploads/2019/07/fa2adf8785481856403f286d7818feeb.pdf(参照2023-09-15)

すべての子どもにとって見やすい黒板にしよう

重要な箇所を分かりやすくするために使用する「カラーチョーク」は、使用する色が多すぎると、どの部分が最も重要なのか分からなくなってしまうことや、人によっては色の刺激が強く頭に入りにくくなることもあります。すべての子どもにとって見やすい黒板にするために、板書計画や色使いへの工夫が必要です。

さらに、黒板を書くときの言葉も厳選しなければいけませんし、教員が話す言葉、黒板に残す言葉と分けて授業を組み立てていく必要があります。

学校内で板書が上手いと評価の教員がいれば、ぜひ授業後の黒板を見てください。どんな授業が行われたのか想像がつく黒板になっているはずです。

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