些細な変化を見逃さない生徒指導 気を付けるポイント5つ

中学校の先生をしていると、日常的にやらなければいけないことの1つが「生徒指導」です。
では、生徒指導とはそもそも何なのでしょうか。
まず、文部科学省から出されている「生徒指導提要」では、『一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的 資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動』と書かれています。では、具体的に生徒のどんなことを伸ばせばよいのか解説します。

生徒指導の目的

生徒指導の目的は

・児童生徒自らが、その社会的資質を伸ばすとともに、さらなる社会的能力を獲得していくこと(社会性の育成)

・社会的資質・能力を適切に行使して自己実現を図りながら自己の幸福と社会の発展を追求していく大人になること(社会に受け入れられる自己実現)

この2点です。したがって教師は、児童生徒が自発的かつ主体的に自己を成長させていく過程を支援します。そして、集団や社会の一員として自己実現を図る大人になるように促すことが求められます。

生徒指導をしていく際に見たい5つのポイント

では、実際に学校現場では児童生徒のどのような部分を見ていけばよいのでしょうか。
5つのポイントを紹介します。これらのポイントに気づいた場合には、早めに周囲の先生に相談し、対策を立てることが大切です。

人間関係の変化

中学校でも小学校でも生徒指導の基本は「子どもをよく見ること」です。そこで顕著に表れるのが「人間関係の変化」です。「よく話していた仲間が変わった」「一人でいることが多い」こんな傾向が見えたら何かあったと感じることが大切です。ひょっとしたら仲間外れにされているのかも、話さなくなった友達と何かトラブルがあったのかもと思って教師が声をかけることがきっかけになります。

特に「いじめ」「不登校」といった今日教育現場が抱えている問題は、人間関係のつまずきをきっかけに始まることが多いです。人間関係の変化については普段から意識をしておきましょう。

人間関係の変化で難しいのが「どこまで行ったら先生が介入するか」です。生徒指導の基本は、「社会性の育成」にあるので、できるだけ生徒自身が考えて乗り越えていくと成長につながります。一方で、あまりに放置をしておくと生徒指導が後手に回り、解決まで時間と気苦労を費やすことになります。このあたりの見極めはベテランの生徒指導主任でも難しいところがあります。新任や経験の浅い先生であれば、なお難しいと思いますので、必ず周囲の先生と相談しながら進めていきましょう。

身だしなみの崩れ

2つ目は「身だしなみ」です。ちょっと悪い子がスカートを短くしてくるとか茶髪にしてくるということも中学校であれば良くあるのですが、こうした学校として決まっているルールが崩れることによって、全体が崩れていきます。

ルールがある以上、子どもたちはどうしても破ろうとしてきます。そこで、なぜルールがあるのかをしっかりと説明し、子どもたちに理解させる必要があります。昔であれば今の体罰にあたるようなことを平気でやっていましたが、今ではやってはいけません。そこで、身だしなみが崩れると何がこの先起こるのかをしっかりと説明し、納得させる指導が必要になります。これが「社会性の育成」につながります。

生活リズムの変化

3つ目が生活リズムの変化です。これも生徒指導上では見逃してはいけないポイントです。といっても学校では児童生徒一人一人の自宅での生活を見ているわけではないので変化に気づきにくいかもしれません。

そこで学校でわかりやすいポイントは、「遅刻・早退」「授業中の雰囲気」「生活記録」になります。まず、遅刻や体調不良による早退は生活リズムがおかしくなっている可能性が高いです。「朝起きれない」「夜遅くまで起きている」といった生活の変化は朝の時間帯に現れやすい傾向があります。授業中の雰囲気も生活のリズムが分かりやすいです。「ぼーっとしている。」「寝ている」そんな予兆が見られたら生徒に最近の様子を聞いてみるのがよいです。

生活記録は、学校によって違いますが、さまざまな形で生徒に書かせて提出させている学校が多いのではないでしょうか。その日の様子を日記にして提出させていたり、日々の連絡を書かせていたりと使い方は学校によって違うと思いますが、生徒の生の声が書かれているものは貴重な情報源です。書いてある内容をチェックするだけでもよいので、子どもの様子をつかんでおくことが大切です。

周囲からの些細な情報

4つ目は周囲から入ってくる些細な情報です。中学校で生徒の情報を集めているといろいろなところから入ってきます。教科担任、部活動顧問、外部コーチなどなど小学校と違うのは、情報源が非常に多いという点です。そして、担任としては、周囲の先生から得ることができる情報に耳を傾けておく必要があります。担任は子どもたちを毎日見ているので、実は些細な変化に気づきにくい立場にいます。また、部活動や外での人間観の変化にも気づきにくいです。そこで周囲の先生から入ってきた些細な情報を大切にしましょう。

学校によっては、各学年の代表の先生が集まって「生徒指導部会」というものを設けているところも多いのではないでしょうか、特に中学校の場合は、学年を越えて情報交換をしていくことが大切になります。

中2という学年

5つ目は学年に関係するポイントです。「中二病」という言葉がありますが、中学校2年生というのは要注意の時期でもあります。男女ともに自我が芽生えてきますので「それぞれの性」を意識するようになり、人間関係が変わります。また、1年生の時の緊張感もなくなり、3年生のようなゴールを見据えた目標立ても難しい学年です。

ただし、生徒指導的な観点から行くとチャンスの学年でもあります。生徒指導は「集団や社会の一員として自己実現を図る大人にしていく」ことが大切になります。中2の時期はまさにこの大人になっていく段階であり、上手に心を育てれば3年生になったときに素晴らしい学年になります。一方で、ここで崩れてしまうとどんどん悪くなっていく悪循環にはまります。生徒の様子や特徴をとらえたうえで、どんな学年経営をしていくのか学年主任の力が試される学年です。

学年で対応する組織力が大切

生徒指導をうまく行っている学校や学年には1つの特徴があり、高い組織力で「チーム」として対応しています。具体的に行くと学年の中で役割分担ができています。指導的な役割をする学年主任、情報を取りまとめる生活指導担当、若い先生は子どもの情報を収集、女性の先生は女の子独特の悩みを収集とそれぞれの先生の年齢、立場、性別などを生かして生徒から話を聞きます。

そして、聞いてきた情報を集約し、対応する。この収集から対応までが早く正確にできる学校、学年ほど生徒指導はうまくいきます。ここまで紹介した5つのポイントを参考しながら、それぞれの先生の立場で子どもを観察できるとよいでしょう。

生徒指導は「生徒に考えさせる」ことを大切に

ここまで生徒指導で見ておきたい5つのポイントを紹介しました。生徒指導の基本は子どもに考えさせることです。決して「力勝負」をしてはいけません。先生側から押し付けると反発します。それよりも児童生徒一人一人に考えさせることが大切です。子どもが社会性を身に付けていくには時間がかかります。将来一人一人が夢を自己実現できるよう、支援していくことが教師には求められます。

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