【校長インタビュー#20】成立学園中学・高等学校の福田英二校長へインタビュー!

今回は、成立学園中学・高等学校校長の、福田英二先生にお話を伺いました。福田先生は教頭、副校長を9年務められた後、2018年4月より校長をされています。

「『見える力』と『見えない力』の双方を養う」
成立学園の教育方針とは

まず初めに成立学園の歴史や教育方針などをお教えいただけますでしょうか。

福田先生(以下敬称略):成立学園は「礼節・勤倹・建設」を校訓に「社会の中核を担う人材の育成」を目指して教育をおこなっており、2025年で創立100周年という長い歴史を持つ学校です。
本校では「見える学力」「見えない学力」という言い方をしているのですが、数値的な成績である「見える学力」はもちろんのこと、問題解決力や発信力、教養といった、変化の激しい現代を生き抜くために必要な「見えない学力」、この双方をきちんと身につけることが大切であると考えて様々なカリキュラムを用意しています。

「見える学力」「見えない学力」、それぞれを伸ばすために、具体的にどのような取り組みをされているのですか。

福田:「見える学力」においては、中学ではまず、ノートの取り方や学習習慣といった、基礎的なところから徹底的にサポートします。本校では、将来の大学入試対策に備えるためにも、初年度に学習の基礎をきちんと身につけることが大切だと考えているんですね。ここでしっかりとした土台を作ることで、確かな学力を積み重ねていくことができます。

STSC(個別学習支援「スクールTOMAS」)を導入し、授業以外でも一人ひとりに合わせたサポートをする体制を整えていますし、高校ではスタディサプリや代ゼミの大学受験講座を自由に受講したり、校内模試に加えて外部模試を受験したりすることもできます。
それから夏・冬・春の長期休暇には全員参加の講習を行い、英数国の主要教科を中心に徹底した復習をするのですが、中高6年間の平常授業と長期休暇中の授業時間数を合計すると、8年分に匹敵する授業時間になるんですよ。

8年間分ですか…「成立学園は塾いらず」という話を聞いたことがありますが、本当に手厚いサポート体制が用意されているのですね。

福田:そうですね。「校内完結型の学び」をモットーに様々な環境を整えています。ですが、生徒1人ひとりに合わせて適切なサポートをするためには、こうしたシステムだけではなく、教員や講師、STSCのチューターなど大人たちの連携が不可欠です。生徒の学習状況をしっかり共有し連携することで、初めて適切なサポートにつながるんですね。
例えば、本校では定期テスト毎に年5回の生徒面談をベースとしているのですが、ほとんどの生徒がそれ以上の回数、教員と面談をしています。生徒の方から相談に来ることも多いようですが、先生たちには日頃から「立ち話でもいいからとにかく生徒と接触をしなさい」と伝えています。勉強の悩みはもちろん、部活・友達・家庭と思春期の生徒たちが抱える様々な悩みをキャッチすることが重要なんですね。

生徒と密にコミュニケーションを取ることを大切にしているのですね。

福田:はい。これは昔からそうなのですが、成立学園の先生はみんな本当に面倒見が良いんです。生徒と教員がよく話す、距離が近いというのは本校の特徴の一つだと思いますね。私も毎朝校門に立って生徒を出迎えるようにしているのですが、時には生徒とグータッチしたりしてコミュニケーションを図っているんですよ。

校長先生とグータッチですか!校長先生と生徒の距離も近いのですね。

福田:そうですね。近いと思います。実は今日もこの後、大学4年生になる本校の卒業生が訪ねてくる予定なんですよ。この間偶然会った時に「教員になるか民間企業に就職するか迷っている」と言っていたので、一度話そうよと声をかけたんです。このように相談に来てくれる生徒がいることは、校長として嬉しいですね。

「生徒の好奇心をゆさぶる」
正解のない現代を生き抜く力を身につけるためのカリキュラムとは

「見えない力」を伸ばすための取り組みについて伺えますか。

福田:本校では、正解のない現代、変化の激しいこれからの世の中を生き抜くためには、好奇心や探求する力が不可欠だと考えています。ですから、「生徒の好奇心をゆさぶる」をテーマに様々なカリキュラムを用意しているのですが、例えば「アース・プロジェクト」や「ナショジオ学習」といったものがあります。

「アース・プロジェクト」では、水田学習や国際交流など、様々な体験学習や校外学習を通じて、教科書では学べない「発見」や「驚き」「感動」を共有します。この学習で大切にしていることは「本物」を体験するということです。本物を体験し、自分で考えて行動し時には失敗もする。その経験を繰り返すことで、真の教養や思考力、自己表現力を身につけることができるんですね。

「ナショジオ授業」では、「ナショナル ジオグラフィック日本版」を教材に授業を進めるのですが、一流ジャーナリストによる記事と迫力のある写真や映像を通して生徒の好奇心を刺激し、新たな出会いや発見につなげていきます。自分なりの課題を見つけ、そのテーマをもとにグループワークを行いレポートにまとめて発表することで、社会で通用するコミュニケーション力や発信力を身につけます。

「ナショナル ジオグラフィック」を教材にするというのは珍しい取り組みですね。「アカデミックツアー」というカリキュラムもあると伺ったのですが、こちらはどのような内容ですか。

福田:「アカデミックツアー」は、中1から高2までを対象としたカリキュラムなのですが、本校の教員が「人文科学」「自然科学」「スポーツ科学」「情報科学」「社会科学」の5つのカテゴリーで講座を考案し、生徒は自分の好奇心に応じて自由に選んで受講できるというものです。この講座は「教員の興味関心を生徒と共有する」という側面もあるため、自身の担当教科とは関係のない授業を企画する教員も多いのですが、学年の異なる生徒と共に、先生のいつもとは違う一面を通して学ぶことで、好奇心を持ち、学び、共有することの楽しさに触れることができます。

先生方が楽しいと思っていることを授業にするのですね。

福田:はい。これは「アカデミックツアー」に限らず、他の行事や日々の授業においても言えることですが、「我々教員が楽しむ姿を生徒に見せる」ということも大切だと考えているんですね。教員側が楽しくないのに、生徒が楽しい訳ないよねと。先生が楽しんでいる姿を見るからこそ、生徒たちもより関心が湧いてくると思いますし、楽しいと感じてくれると思うんです。
ですから先生たちには普段から、「生徒の好奇心を刺激するのに、まずは我々教員が好奇心旺盛じゃないと響かないよ」と話しています。

近年は貴校から海外大学へ進学する生徒も増えていると聞きました。その背景には数年前に開設された「探究クラス」の影響もあるかと思うのですが、このクラス以外にも、成立学園では高校2年生以降様々なクラスが用意されていますよね。

福田:はい。5つのクラスを用意しています。入学時からクラス分けをする学校もありますが、本校は中学からの内部進学生も高校入学生も全員、高校1年時に同じフィールドで自分の将来を見つめます。この一年間で様々なことにトライしたうえで2年生以降のクラスを選択するんですね。

先ほどからお伝えしているように、私たちはとにかく生徒の「好奇心」を大切にしたいと思っています。中高の多感な時期には興味が変わることも多くありますし、それはとても良いことだと思うんですね。もっと言えば自分の進む道を高校卒業までに決める必要もないし、社会人になってから違う世界に飛び込んだっていい。ですから学校としては、様々な学びにおいても、クラス選択においても、色んなことにトライできるチャンスを用意しておきたいと思っているんです。

「生徒が好きか」「人に興味関心があるか」
教員に必要な素養とは

これまで伺った成立学園の取り組みを実現するために、教員に必要な力とはどのようなものだとお考えですか。

福田:教員にとってまず必要なことは、「人が好き」「生徒が好き」ということだと思います。
生徒は一人ひとり違い、個性がありそれぞれの考えを持っていますよね。雰囲気が似ているとか得意分野が似ているということはあっても、全く同じケースは無い。理解するポイントも、つまずくポイントも違う訳です。この生徒一人ひとりの状況をきちんとキャッチするためには、「生徒が好き」という気持ちや「人に関心を持つ」という素養が必要不可欠なんです。

その次に必要なことは、自己研鑽を続けられるかということです。中1から高3まで1〜2サイクルくらい指導をすると、なんとなくコツが分かってくると思うのですが、慣れて指導の型を作ってしまうようではいけません。数学の公式や、英語の文法に変化がある訳ではないですが、一つのやり方で理解できる子もいれば、他のアプローチが必要な子もいるので、相手に合わせてアプローチの仕方を変えて対応していく必要があります。ですから自分の指導力や知識をブラッシュアップしていくことが求められるんですね。

教員は、この二つの力を有した上で、生徒の目を見て「あ、今理解できてないな、では伝え方を変えてみよう」ということができないといけない訳です。
最初からうまく教えられる人なんていないですよね。でも、生徒が好きだからこそ努力していかれる。そういう感覚が教員には必要だと思います。

「失敗を恐れず積極的に挑戦できる人」
成立学園が求める人材とは

福田:積極的な人を求めています。極端かもしれませんが、個人的には「当たって砕けろ」くらいの精神を持った人の方が私は好きですね。
失敗することもあるかもしれませんが、それを恐れて欲しく無いんですね。失敗も自分の生き様として積み重なっていき、後々生徒に接する際の糧になっていきますから。失敗しないようにいつもバントをするくらいなら、思いっきりバットを振って失敗した方が良いと思うんです。その時は辛いかもしれませんが、必ずその人のプラスになります。

それから先ほどお話しした「生徒が好きか」というところも大切です。教員採用の際にも筆記試験や模擬授業の成績だけでなく、「人に興味関心があるか」という点も重要視しますね。

「教職以外のことにも興味を持ち、沢山の経験をして欲しい」
教員志望者へ向けたメッセージ

福田:もちろん自分の専門科目は深掘りしていくべきですが、それ以外の教科や事柄にも興味を持ってほしいなと思います。
教科に関して言えば、例えば国語の教員だから理科は関係ないなんてことは無いですよね。国語の読解力がなければ他の科目の問題をきちんと理解できませんし、社会科に数学が関係していることもあります。ですから「学びは全てにつながっている」という感覚を忘れないでほしいと思います。

それからこれは教員になった後にも言えることですが、教職に関わらず様々な世界や事柄に好奇心を持ち、沢山のことにトライして欲しいなと思います。色んな業界の様々な人と会い、交流し情報を得ることも大切ですし、時には自身のリミッターを外して思い切り飛び込んでみることも必要だと思います。

生徒はもちろん、先生においても「好奇心」を持っていることが大切ということですね。

福田:そうですね。学校には色んな個性や価値観を持った生徒がいます。この多種多様な生徒と関わり導いていくためには、失敗も含めた様々な経験を積んでいることが必要なんです。

貴重なお話をありがとうございました。

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