教員採用試験に限らず、受験や採用試験で実施されることが多いものが面接です。受験者は面接に合格するため、事前に練習したり、想定問答に答えたりと対策を考えていると思います。筆者もここ数年、教員採用試験の係として受付や面接などで関わってきました。では、教員採用試験の面接官はどんなところを見ているのでしょうか。実例を取り上げるのは1つの都道府県の例ですが、今後教員採用試験を受けようと考えている人は参考にしてください。
参考文献:NSK教採ネット 令和6年度教員採用試験 倍率速,https://nsk-japan.sslserve.jp/kyosai/bairitu.htm(参照2023-09-19)
紙の経歴では分からない部分が知りたい
まず、教員採用試験の面接官を引き受けるのは、採用を希望する自治体の校長や教頭などの管理職、教務主任や教育委員会の指導主事になります。どの面接官も現場での経験が長い「教育のプロ」です。面接をするときには、概ね3人から4人の面接官がいて、受験者は1名から3名で行うケースが多いです。面接官には役割分担が決まっていることが多く
A:教育法規などの基礎知識を確認する人
B:履歴書の内容を確認する人
C:教員の志望動機やこれからのビジョンを聞く人
概ねこのような分担になります。
法規などの知識的なことを聞く人は、教育基本法や地方公務員法に関する話を聞くことはあまりしません。教育の基本的な法規は一次試験ですでに質問されており、受験生は突破してきているからです。
それよりも、最新の教育に関するニュース、文部科学省から直近に出された答申や提要(令和5年度であれば「新生徒指導提要」など)、他にもチェックしておきたいのが、採用を希望する自治体の教育プラン
・東京都教育ビジョン(第4次) 【東京都】
・「大阪の教育力」向上プラン 【大阪府】
・「あいちの教育ビジョン2025」 【愛知県】
上記のようなものが各自治体から発行されています。それぞれの自治体の特色ある教育目標を定めたものであり、国の教育振興基本計画に沿って作成されています。教員を目指す人のほとんどが、それぞれの自治体の職員になるので、自治体が何をしようと考えているのか知っておくことは大切です。
こうした内容は一次試験で行われる紙のテストでは分かりません。特にBとCを担当する面接官は、履歴書に書かれている内容は読めばわかります。面接で知りたいのは、ここに書かれていない部分になります。
参考文献:東京都教育ビジョン(第4次)東京都教育委員会
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/administration/action_and_budget/action/files/vision2019/gaiyou.pdf,(参照2023-09-20)
参考文献:「大阪の教育力」向上プラン 大阪府
https://www.pref.osaka.lg.jp/kyoikusomu/osaka-plan/index.html (参照2023-09-20)
参考文献:「あいちの教育ビジョン2025 -第四次愛知県教育振興基本計画-」 愛知県教育委員会,https://www.pref.aichi.jp/soshiki/aichi-manabi/20210212.html (参照 2023-09-20)
面接であなたが話すべきこととは?
履歴書は受験者が自分をアピールするため、様々なものを書いてきます。書籍やインターネット上にも「履歴書の書き方」や「テンプレート」があり、参考にしている人が多いなというのが試験官として履歴書を見てきた感想です。
新卒の受験生であれば学生時代に行ってきた勉強の内容、研究の業績、サークルなどでの活動内容が記載されています。面接官は、こうした履歴について深掘りをしていきます。では、どんな視点で深掘りをしていくかというと「どんな目的で活動をしていたのか」「それが教職にどう関係するのか」という点です。なぜなら、Bの面接官は受験生を深掘りすることによってCの面接官に繋げなければいけないからです。3人の面接官がいるといっても、なんの脈絡もなく聞くのではなく連動しています。
面接官が聞きたいのは、履歴書に書かれている活動内容ではなく、なぜその活動をしたのか、成果はどうだったのかという点です。よくあるのが「海外にワーキングホリデーに行っていました」という履歴です。こんな経歴があれば面接官は当然深堀をして聞きたくなります。そして知りたいのは「目的」「結果」「活かし方」です。ワーキングホリデーに行ったという履歴があっても、その人がどんな目的で行ったか気になります。
このときに、教職と関係ないことを述べても特段マイナスにはなりません。知りたいのは「受験者が目的意識をもって行動し、終わった後に振り返り、どう今後に生かしていくのか」ということです。まさに「PDCAサイクル」の話しですが、活動をするときに目的をもって活動できる人なのかどうかは、教員になってからも大きな差になります。何の目的もなく行って、経験してきただけという話しでは、これから教職についても成長を見込めないのではと判断されるケースもあります。
理想的な話をすれば。履歴書の経験がこれからの教職に生かすことができる内容の話をすればよいのですが、学生時代から将来の教職を考えて活動している人は少ないと思います。それよりも、履歴書に書かれた経験で自分が何を得たのか、どんな行動をしてきたのかという過程をしっかりと説明できると好印象です。失敗した話しでも問題ありませんが、失敗談をするときには、その後自分がどうしたのか、変化の部分を強調して話をすることができるとよいです。
高評価を獲得する受験生ってどんな人?
筆者が経験した自治体の採用試験では、3人の面接官がそれぞれ10点満点で受験生を採点しました。実際に面接をすると3人の面接官の点数はバラバラになることが多く、面接をする人によってずいぶん評価が変わると感じたものです。でも、中には3人そろって高評価を付ける受験生もいます。筆者の経験から言うと以下のような受験生です。
〇何かを探究するような活動をしてきて、成果と反省ができている
小学校の先生を除くと専門教科があると思います。その中でも、さらに狭い分野について探究的に学び、深めるような経験をした先生は評価がよくなる傾向があります。なぜなら、今、文部科学省が発表する「主体的・対話的で深い学び」を自分自身で経験してきているからです。この際によい結果が出ていなくても問題ありません。結果ではなく、探究していくプロセスや上手くいかなかったときの解決策が、子どもに教えるときに関係します。受験生が、探究的な学びをしてきた経験があれば、アピールできるようにまとめておきましょう。
〇明瞭な受け答えとポイントを抑えた話し方
2つ目のポイントは、はっきりとした受け答えです。質問に関してどんなことを言っているのか分からない人は印象がよくありません。受験者にとってはトレーニングが必要になるかもしれませんが、質問に関する答えを明確に話すことができるよう練習はしておきましょう。知っている人も多いと思いますが、理由や説明をするときには先に結論を述べておいてから理由や説明をしたほうが伝わります。また、根拠のある話なのか、自分の考えなのかを分けて述べることも大切です。
逆に面接でやってはいけないことは「嘘」をいうことです。間違ってしまったことを面接官に指摘された場合には、素直に謝り、勉強不足なので勉強しなおしますと正直に言いましょう。法規などが出題されると、知らないことが出されることもあります。知っている部分だけ述べて、分からない部分については分からないと言うことが大切です。知識に関しては一次試験である程度問われているので、面接で意識がないからという理由で落とされるのは稀です。面接で見ているのは、人間性や受験生の考え方などを審査しています。
面接の質問は深い意味がある 自分に興味をもってもらおう
面接の受け答えをするときには「自分に興味をもってもらう」ことを意識してみましょう。どの受験生の履歴書にも面接官が興味をもつような部分はあります。そこで何をしてきたのか、教職に就くためにどんな勉強をしてきたのか話をすれば、きっと興味をもってもらえるはずです。面接練習するときには、事前に自分が書いた内容を深堀されてもよいように準備しましょう。
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