【校長インタビュー#11】十文字中学・高等学校 校長の横尾 康治先生へインタビュー! 

今回は、十文字中学・高等学校 校長の横尾 康治先生にインタビューをさせていただきました。価値観の多様性を実感することを目的として行なっているワーク活動について、数学が苦手な生徒への対応、生徒から人気の生徒広報活動についてなど、様々なお話を伺いました。

横尾先生のご経歴~専攻科、大学院で学びながら非常勤講師に~

―先生は、教員1年目からこちらで数学を教えられているんですか?

横尾先生(以下敬称略):そうです。

小学校の頃から数学が大好きでした。例えば、『3分の1』という数字は小数で表わすと『0.33333…』じゃないですか。無限に続く奇妙な数字なのに、『3分の1』と分数にすると明確になる。1つの長さを3分割するのは簡単なのに、なぜ表現次第で複雑になるんだろうと不思議に思っていました。

そのあたりから、興味を持ち始めたのです。そうこうしてると、友達から『数学を教えて』と言われる機会も増え、教えてあげた時に喜んでもらえてすごく嬉しかったんです。そこから算数・数学を教えることがすごく楽しいなと思うようになりました。将来は、クリエイティブな仕事か数学・算数の教員になるかの二択で考えていました。

大学を選ぶ時は、工学と物理、それから当時人気だった船舶関係も迷っていましたが、やっぱり1番好きなことをやりたいなと思い、理学部数学科を選びました。

―小学生の頃から好きだった数学の道を突き進んでいかれたのですね。卒業後は大学院に進学されたのですか?

横尾:1年間専攻科で学んだのですが、やっぱり専門を研究したくて大学院に進みました。学びたい分野を研究している教授が立教大学にいらっしゃったのでそちらに移り、2年間学びました。研究職に行くのもいいなと思っていましたが、結局数学の教員になることを選びました。

実はその3年間は、他校で非常勤講師をやっていました。そこで、「教えることは楽しいな」「私がやりたいことは教えることだな」ということをすごく実感したんです。

―そうなんですね。非常勤講師をされながら、公立の教員採用試験は受けたのですか?

横尾:教採は受けてないですね。非常勤として勤めていた学校は私立だったのでそのまま私学に行こうと思っていました。

その後ご縁があり、本校で働くこととなりました。本校は、教えることを通して生徒に色々なことを伝えられる環境が整っていて、居心地が良いんです。本校が自分の居場所だなと思っています。

校長先生と生徒の活動

価値観の多様性を実感させたい~中高6年間のワーク~

―横尾先生が校長になられてから授業はされているのですか?

横尾:授業自体はもっていません。ただ生徒に教える機会がなくなってしまうのは寂しいので、中1から6年間のワークを行なうことにしました。

どうしても中学の頃って自分の意見が正しいと思いがちじゃないですか。そこでまずは“価値観の多様性”、自分の考えとはまた違う考えを持つ人がいる”ということを実感できるようなワークを行います。

ー大人でも難しいですよね。どのように行なうのですか?

横尾:こちらから問いと選択肢を2つ与えて、2、3人くらいのグループを作って、話し合いをさせます。

すると、話し合いをしていく中で「そうか、自分と違う価値観がこんなにあるのか」ということを体験できるんです。従って取り組み後の感想を見ると、『人によって考えが違うこと、価値観が違うことが、すごく新鮮だった』という声が多かったですね。

ーこのようなワークを6年間続けるのですね。

横尾:その予定です。

実は入学前からすでに種まきをしているんですよ。入学予定者説明会の時に、「あなたが幸せだと感じることは、どんなことですか?」という問いを最初に投げかけて、QRコードからサイトに誘導し、そこで全員に答えてもらいました。

入学後のワークの後で「そういえば入学前に色々質問したけど、あの時の皆の意見もこんなに違ったんだよ」ということを紹介しました。そこでも価値観の多様性を実感できるんです。

本校の最大の目標が、『自分の頭で考えて、そして実際に行動に移せるようにする』ということなのですが、6年間を通して常に自分の頭で考える体験をさせたいと思っています。

そして、そのことは本校の建学の精神『身をきたへ 心きたへて 世の中に たちてかひある 人と生きなむ』と繋がっています。社会に出て役に立つ有用な人になって生きていってほしい。誰かのために行動することがそのまま自分の喜びであって、自分の幸せにつながってるんだよ、と伝えるのがワークのもう一つの目的です。

ー6年間をかけた、大きな取り組みですね!他にも独自の取り組みってありますか?

生きるってどういうこと?~中3全員とのディスカッション~

横尾:中学3年生全員と必ず話す時間を作っています。グループでのディスカッションです。

校長先生とディスカッションする機会があるんですね。

横尾:中高6年間の折り返し地点ですので進路などいろんなことを考えたりする時期だと思います。

そこで「生きるってどういうこと?」「学校ってどんな存在?」「仲間って、何?」みたいなことを問いかけて、みんなでディスカッションをします。そうすると、自分の考えとか、友達や先生の考えが分かるので、そこでまた1歩成長できるのです。あとは単純に生徒達の考えを私も知りたいし、何より生徒と会話できるのも楽しいんです。

ーこの取り組みは横尾先生が校長になられてから始まったのですか?

横尾:面談の取り組み自体は、昔から本校では伝統的に行っています。歴代校長によってやり方は違いますが、私の場合はディスカッションを通して成長を促したいと思い、このような方法をとっています。

生徒がおもしろがっても、見せるだけじゃダメ

ー何か失敗談はありますか?

横尾:20年くらい前にコンピューターを使って「放物線がこのように動くと、式も変化する」というのを見せたことがあります。当時はまだそんなものは生徒にとって目新しくて、面白い面白いとすごく興奮していたんです。でも、次の授業の時には数学的な部分はほとんど覚えていませんでした(笑)

目新しさが先行しちゃったり、それからテレビを見るような感覚で自分の頭では考えてかったり、板書よりもスピード感がありすぎて定着しなかったり、見せるだけじゃダメなんだなっていうことをそこで学びましたね。今はICTを使う流れが主流ですが、見せるだけにしないようにしなくてはと思いますね。

笑わない特クラスを笑わせたい

ー忘れられない出来事ってありますか?

横尾:特選クラスの授業を担当していたのですが、なぜかなかなか笑わないんです。

ちょっと馬鹿げたことを言っても笑わないし、これ面白いでしょ、すごいよね、感動するよねって言っても、クスクスクスっていう程度で、何かどんと盛り上がらない。表情を見ていると面白がっているのは伝わってくるのに、絶対に笑わないんですよ。

謎なんです。もう絶対笑わせてやろうって思って、色々試行錯誤して、いろんなものを作って持っていったり、いろんな取り組みをしましたね。だから自然と授業自体も新たな挑戦に満ちていました。

ーどんな取り組みをされたのですか

横尾:生徒参加型が多かったですね。教育実習生のようなこともさせたことがあります。

順番に今日はあなたが先生ねと授業を任せる。人に教えるということは、当然かなり勉強しないとできないから、事前に相談に来ます。聞いている方もわからないことは必ず質問するのがルールだったので、そのやりとりは楽しいんですけど、生徒はしんどかっただろうと思います。

ー先生もずっと実習生を受け持っているような状態ですよね。

横尾:そうですね。でも単元は全部やり切ったんですよ。私は自分が教えてないから達成感がなくて、これでほんとに良かったのかなってずっと思っていました。でも、卒業した生徒が「あの時のあの授業がすごく印象に残ってます」と言ってくれたんですよ。

自分の感覚と生徒の感覚って違うんだなと実感しました。どんなに教員が「パーフェクトな授業だ!やりきった!」という達成感があっても、それって生徒の達成感じゃないからダメなんです。生徒の達成感につながっていくと、生徒はすごく習得してるなっていう実感が湧く。先生の独りよがりにならないよう気をつけたいものですよね。

授業に試行錯誤した若手のころ

ー非常勤講師を3年間経験されて、その後に十文字中高に専任採用されたのですよね。もうその頃には自信をもって授業できたのでしょうか。

横尾:いろいろ試行錯誤しながら授業していましたよ。最初は、どういうふうに丁寧にわかりやすく教えられるか、印象に残るか、そして定着するかということを考えていましたね。

教科書が気に入らなくて自分でオリジナルの教科書を作って授業をしていたこともあります。

基本的に教科書に書いてある内容をそのまま教えるのは意味がないと思っていたので、わざと間違えて生徒に見つけさせたりするのが好きでしたね。生徒の頭が活性化しないとダメだというのはずっと思ってるので、生徒を動かして、生徒に考えさせるというような授業をしていました。でも、こちらが一方的に教えるだけじゃダメなんだっていうことに到達するのは、少しあとです。


数学が苦手な生徒に対して

ー他の教科では「歴史は嫌いだけど、戦国時代だけは好き」というのがあると思うのですが、数学って「ベクトルだけは好き」みたいにはならないじゃないですか。数学が苦手な子たちに対して、授業をやっていく難しさみたいなものはありますか?

横尾:もちろんあります。ずっと初期の頃から課題だなと感じていました。

数学が好きな子、嫌いな子、得意な子、不得意な子が同じ教室にいる中で、不得意な子に分かってもらうための手法ってなんだろうと試行錯誤しました。イメージすることが苦手な生徒もいるので、できるだけ具体的なものを持っていって見せたり、実際に一緒に作ってみたりという工夫をしましたね。

どこでつまずているかをこちらが理解する、ということがとても大事なポイントだと思うんですよ。そこをしっかりケアしてフォローしてあげるっていうことができると、わからなかったところがだんだんわかってくる。わかってくると今度は楽しくなってくる。

ー数学が不得意だと思っていたのに、楽しくなって数学の道に進む子もいそうですね。

横尾:高一までずっと自分は文系だと思っていたのに「数学面白い!」と理転した生徒はいます。文系だと思っていた子が理転すると、国公立が受けやすくなるので受験には強いんですよね。その子は実際、国公立に進学しました。

でも、こういう話をすると全部うまくいってるように聞こえるけど、そんなことばかりではなくて、どうやっても理解できない、うまくいかないっていう子もいるんですよ。それはもう特性のようなもので、嫌いじゃないんだけど、できないになっちゃうんですよね。

ー嫌いじゃないけど、できない。その場合、どんな関わりをしていたのですか?

横尾:例えば、1人どうしてもできないと言ってきた生徒にはその子にあわせた問題を作って個別指導しました。2次関数を変形する問題なら数字を変えて何度も。そうすると、間違えるパターンがいつもプラスマイナスを間違えるとか、ある程度規則性があるんですよ。

「ほら、ここまた間違えたよね。ここに気をつければいいんだよ」と声をかける。そうするとまた持ってきて、言われたその場ではできるのだけど、もう一度持ち帰るとまた間違えるんですよ。これはもう特性のようなものですね。それでも真剣に問題をやってくるので、もそれに応えていました

こちらから強制していたわけではないけど、こまで食らいついてやるというその気持ちが嬉しいなって思ってたから、そんなやり取りをずっと続けてました。できないけど好きってあるんですよね。

教員採用について

ー教員採用のポイントを教えてください。

横尾:適性が本校に合ってるかというところが、一番のポイントです。

模擬授業では、生徒からの質問に対してどういう答え方をして生徒を育ててくれるかをみています。「先生、そこわかりません」って、わざと生徒役の教員は質問するんですけど、先生が「生徒がどこにつまずいているのか」を理解した上で教えてあげられるかというところが大切です。

生徒と個別でやり取りをした時に、先生が全部答えを言ってしまうと生徒が考えるところを奪っちゃうので、そこでどんな風に声かけしてヒントを出しつつ生徒に考えさせるかというところが肝かなと思っています。

ー今年の採用は?

横尾:毎年何かしらの採用はあると思いますので、HPをチェックして欲しいと思います。

女子校の男性教員ってどうなの?

ー男性の教員志望者が女子校を志望するのって結構ハードルがあるのかなと思うのですが、貴校では男性教員の応募もありますか。

横尾:もちろんあります。

女性比率が少し高いのですが、実際は男性教員の力もすごく重要ですし、もっと男性の教員に応募してほしいなと常々思ってます。女子校とは言っても、社会に出たら男女どちらもいるわけで、女性だけで教員構成してしまうのは、バランスが悪いと思ってるんですよ。男女半々とまではいかなくても、4:6くらいの男女比がいいなと思っています。

ー横尾先生は実際に「男性は女子校で教えるのは難しい」と感じることはありましたか。

横尾:私は女子校だから難しいと思ったことはないですね。難しいと感じるのは、男女差ではなく個人差ではないでしょうか。一人一人の個性をしっかり見ていくことが大事だと思います。

ー男性の教員志望者に知っておいてほしいことってありますか?

横尾:女子校だからと特別扱いしないということを知っておいて欲しいですね。男子がいない分、自分たちで何でもするということが女子校の良さです。時にはリーダーとして、時には重いものを運び、遠慮なく言い合って、お互いを尊重し合える環境なのです。

生徒が質問に来た時には「どうしてそうなるのか」と一緒になって考えて欲しい。答えは最後まで教えない。途中過程しっかり教えてあげることで生徒は納得感を得ていきます。考えさせる先生であって欲しいと思います。

SNS

ーYouTubeの「十文字チャンネル」、やってるのは、生徒さんですか?

横尾:はい。生徒がドラマを作ってアップしたり、日常を紹介したりしています。

生徒が自分たちの力でどれだけ活動できるかっていうことにかかってると思うんですよね、学校って。やっぱり楽しくないと。本当に生徒が自分たちの手で作ってアップしているのって珍しいかもしれないですね。

ーそういったSNSの運用って広報の先生方がされているのですか?

横尾:広報の組織の中に生徒広報という部署があります。生徒たちが学校説明会でプレゼンしたり校内案内をしたりするのですが、ここの部署で動いています。

ー組織でやってるんですか。海外の学校みたいですね。

横尾:以前からずっとやりたくて進めたことなんですけど、生徒の帰属意識とか達成感とか、自己肯定感、とかいろんなものが全部詰まってるんですよ。

「やりたい人!」って声をかけるとたくさん手が上がってきて、「じゃあ、その中でプレゼンやりたい人」っていうと、また手が上がる。「得意だからやりたい」という子もいるんだけど、意外と「経験したことがないからやってみたい」とか、「あんまり得意じゃないから挑戦してみたい」っていう子も多いんです。

プレゼンの中身も生徒が考えてるんですよ。例えば、カフェテリアを紹介したいという生徒もいるし、「私が受験の時はもっと制服のことを知りたかったから、制服でファッションショーをしたい」という生徒もいます。

ーすごくやりがいがありそうです。

横尾:教員が出す注文は「あなたたちらしさを出してね」というくらいで、全部生徒たちに1から作ってもらいます。あとで生徒たちに聞くと、「めちゃくちゃ大変だったけど、すごくやりがいがあって、やれてよかったな」という答えが必ずかえってくる。全部自分たちで考えてやってるし、前例に従わないでやっているから大変なのは当然だけど、その分ほんとうにやりがいがあるし楽しいんですよね。

ー先ほどおっしゃっていた、『自分の頭で考えて、そして実際に行動に移せるようにする』『身をきたへ 心きたへて 世の中に たちてかひある 人と生きなむ』にもつながりそうですね。横尾先生、本日はありがとうございました!

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edulo編集部

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