学校で子どもたちから「先生」と呼ばれる方の中には、教諭や講師がいます。
子どもたち側からすると教諭であろうが講師であろうが同じ先生ですが、実際は教員採用試験に合格したかしてないかの違いがあります。中でも公立学校は、基本的に教諭を配置し補充要員として講師を採用することが多く、本当の先生は教諭で、講師はサブ的なイメージをもつ方もいるかもしれません。しかし、働き方次第では講師でも教諭と同じような労働条件で子どもたちと触れ合うこともできます。
これから教員を目指す方の中にも、まずは講師として経験を重ねたい方もいらっしゃるでしょう。また、次回の教員採用試験に向けて、勉強をしながら学校で働きたいと希望する方もいると思います。
一言に講師と言っても、常勤と非常勤などの種類があり、どのように働きたいかで大きく変わるものです。この記事では、教諭と講師の違いやそのメリット・デメリットについて解説します。将来の教員生活で、講師という選択肢がある方は参考にしてください。
公立学校教諭と講師の違い
公立学校で働く教諭は、大学で教員免許を取得し、各自治体の教員採用試験に合格した方です。いわゆる正規雇用であり、公立学校で働く先生の8割程度は教諭です。一方、公立学校講師は、教諭と同じく教員免許状を取得していますが、教員採用試験には合格していない方です。教員採用試験に受かっているかどうかが大きく違う点になります。
公立学校講師になるには
先述したように、公立学校で講師として働くためには、教員免許状が必要です。その上で、各自治体の教育委員会に講師登録をします。そして、学校に教諭の欠員等があれば面接などを通じて採用が決定されます。なので、講師を希望し登録をしたからと言って、必ず講師になれるわけではありません。
年度初めからの勤務を希望する場合は、だいたい前年11月ころから募集が始まることが多いので、各自治体教育委員会のホームページを覗いてみると良いでしょう。
公立学校講師の採用は、人員補充の意味がメインです。また、正規雇用である教諭の産休育休中や病休で穴を埋めるためにスポット的に採用されることもあります。そのため、「来週から勤務できますか?」と急な連絡が入ることも。さらに、正規教諭で学校が回るのであれば、講師の募集はありません。
公立学校講師の種類
講師は大きく分けて「常勤講師」と「非常勤講師」の2種類があります。東京都では、「臨時的任用教員」と「時間講師」と呼んでいます。その違いは、働き方です。
また、公立と私立でもその扱いが違います。今回は公立学校のことに絞って説明します。
参考文献:東京都教育委員会.東京都公立学校臨時的任用教員・時間講師の募集について【令和5年度採用名簿登載選考】|東京都教育委員会ホームページ (tokyo.lg.jp),https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/staff/recruit/teacher/part-time.html#moku1
常勤講師とは?
常勤講師は、正規雇用である教諭と同じように担任を受け持ったり、部活動顧問を任されたりします。勤務時間は教諭と同じですが、雇用期間に定めがあるかないかが教諭と大きく異なる点です。一般的には1年毎の更新が多いようです。
正規教諭は、採用初年度から初任者研修と呼ばれる時間が設けられ、ベテラン教員から指導やアドバイスを受けられるのに対し、ます。しかし、常勤講師は採用がはじめてでいきなり担任を受け持ったとしても同じような初任者研修はありません。もしも、常勤講師としてはじめての授業や学級経営に不安があったら、その学校内のベテラン教諭に相談すると良いでしょう。
常勤講師の給料や有休は、正規教諭と同じように支給されますが、昇給については限界があるようです。常勤講師は非常勤講師よりも安定した働き方ができ、子どもたちとより密接に触れ合うことができるのです。
非常勤講師とは?
非常勤講師は、学習指導としての授業のみを担当します。担任や部活動顧問はせず、単純に授業の時だけ出勤するので、2~3校から同時に採用されることもあります。例えば、体育の教員免許を取得していて非常勤講師登録をしていた場合、A校の2年生・B校の3年生の体育の授業だけを任されるなんてこともあるのです。講師をしながら教員採用試験の勉強も時間もしっかり設けたい場合は、非常勤講師の方がいいかもしれません。
給与は、時給制のように授業をしたコマの分だけ支給されます。担当するコマ数が少なければその分収入は減るため、収入面で不安があるでしょう。しかし、担当する授業にだけしっかり集中できるため、授業の経験値をグンと上げることも可能です。
講師のメリット
常勤でも非常勤でも、現場経験を積めるのが講師の一番のメリットです。
いくら勉強を積み重ねて知識を増やしても、実際に子どもたちの前で授業をするのには慣れが必要だからです。また、授業だけでなく学級経営や保護者対応の経験は、学校現場でないと経験できないことではないでしょうか。
学校ならではの時間の流れ方や、先生同士の関わりを体感することで、本当に教諭になりたいのか又は、自分は教諭に向いているのかをリアルに感じることもできます。先生として子どもと関わり、やりがいを感じることで更に意識が高まるメリットもあります。
また、何らかの理由で長時間働けない方や、家族の転勤などがあり長く同じ場所で働けない方で、教員をしたい方もいるでしょう。そういった方にとって、時間や期間が定められている講師としての働き方は適しています。
講師のデメリット
教諭と同じように子どもたちと関わっていても、自分は正規雇用でないという負い目を感じることもあるかもしれません。実際には、教諭でも講師でも、情熱を持って子どもに関わってしっかり授業ができているのなら、先生であると胸を張って良いはずです。また正規教諭であっても、うまく授業が進められなかったり、学級経営がうまくいかないこともあるので、講師であるかどうかはあまり関係のないことです。自信をもって先生になれたら良いですね。
また、講師は有期雇用なので将来や給与の面で不安もあるかもしれません。
講師をある程度経験し、それでも先生を続けたい希望があるのなら、やはり教員採用試験に受かるのが一番です。また、常勤講師として勤務しながら教員採用試験の勉強時間を作るのには相当な努力が必要です。なので、勉強時間の確保が難しいことが講師のデメリットの一つかもしれません。とはいえ、講師をしながら教員採用試験に受かる方も多くいるので安心してください。
子どもや保護者に対する責任感は正規雇用教諭と同様!
学校で子どもたちにとって先生は、勉強を教えてくれる人だったり、困ったときに助けてくれる人だったりその存在の在り方はそれぞれです。先生という存在は間違いなく子どもに必要で、大切なのです。保護者からの目線も同様で、大切な子どもを見てくれる先生は教諭でも講師でも同じ扱いでしょう。先生として学校で働く以上、講師であることは関係ありません。教諭と同じように責任感と情熱をもって、より良く子どもや保護者と係わっていくことが大切なのです。
講師になるタイミングは、大学を卒業してすぐであったり、教員免許取得から時間が経っていたりと人それぞれです。どんな仕事も同じですが、はじめて講師となり先生として子どもと過ごすときその不安は大きいでしょう。そんな時は、周りの先生など身近な人に積極的に相談してください。一人で何人もの子どもと過ごすことは思った以上に責任とプレッシャーがあるからです。講師だから、教諭だからなど肩書は関係なく、子どもや保護者の目線でみる「先生」として、自信をもって働けたら良いですね。