教育実習の心構え

教育実習は、教員になることを目指す人ならば、必ず通らなければいけない道です。期待と共に、「うまく授業ができるだろうか」と不安と緊張でいっぱいになる人も多いと思います。

今回は教育実習を行う際の心構えについて説明していきます。

事前にやること

教育実習は、いつでも誰でも教育実習を行える訳ではなく、決められた条件を満たしている必要があります。

その条件とは、例えば、「大学の授業の単位が足りているか」「必要書類を定められた期間までに提出しているか」「来年度その自治体で教員採用試験を受験する予定があるか」「母校実習の場合はその学校の卒業生であるか」「実習期間は私用で休むことがないか」などが挙げられます。

また、心身共に健康で、伝染病のおそれのある疾病を有しないことや、誠実で意欲的に実習する人でなければいけないなど、人物的にも健康で優れていなければいけません。

この条件は、大学や自治体、実習校によって様々ですので、あらかじめ調べておく必要があるでしょう。また、校種によって、1~4週間と実習期間に差があります。栄養教諭は1週間、特別支援学校は2週間、中学校は3週間、幼稚園は4週間などです。

自分の希望する校種の実習期間もあらかじめ調べて、知っておきましょう。

いざ実習校が決まったら、当日までにやっておくべきことがたくさんあります。これから、その準備について詳しく紹介していきます。

事前指導に出席

大抵の場合、実習の数週間前に実習校での事前指導が行われます。

そこでは、実習費を支払う必要があります。財布から出した現金をそのまま渡すのは、社会人としてあまりにもマナーがなっていないと思われてしまいます。封筒に入れて、のりで封をして提出するようにしましょう。

封筒の表に、「実習費在中」、「所属」、「名前」を書くことも忘れずにしましょう。事前指導から既に実習は始まっていると考えて良いでしょう。

実習校からクラス名簿をもらえた場合は、実習が始まる前に全員の名前を覚えておく

実習中は、授業のことに必死になり子ども達の名前を覚える時間が取れません。先に覚えてしまって、実習が始まったその日から積極的に名前を呼べるようにしておくと良いでしょう。

さらに、担当の先生によっては、学級写真を貸してもらえる場合があります。その際は、顔と名前を一致させておくと、実習生としてよりハイレベルです。

ここで最も大切なことは、個人情報の扱い方です。校外に持ち出す場合の決まりがあると思いますので、必ずそれに従うようにしましょう。

事前に授業作りの準備をする

あらかじめ担当学年と担当授業範囲を指定されると思います。

実際に、子ども達の反応を見て授業を組み立てる必要はありますが、どんな展開にするのか、教材教具の準備を早速しておきましょう。教具は、学校によっては備品として置いていない場合もあるので、事前に電話連絡などで確認しておきましょう。

また、少し時間はかかるかもしれませんが、一時間毎に学習指導案を書いておくと、確実に自分の力になります。

衣服や靴など、身の回りの物を準備する

実習は慣れないスーツを着て授業を行う場合が多いので、ワイシャツやジャケットの替えを準備しておく必要があります。

また、教室だけでなく、運動場や体育館に移動をすることもあります。スーツの革靴だけでなく、運動靴や室内履きも用意しましょう。基本的に、自分の学生時代を思い出して、学校に持っていった物を思い返せば間違いないでしょう。

以上が、実習までに準備をしておくことです。事前の準備が整っていれば、安心して実習に集中して取り組むことができます。

実習中気をつけること(授業面)

授業は、主に3つの段階から成り立っています。それは、「見て学ぶ段階」「実際に試す段階」「見て貰う段階」です。今回はこの段階毎に、気をつけるポイントをご紹介します。

見て学ぶ段階

最初の「見て学ぶ段階」とは、いろいろな授業をみることです。

できるだけ、多くの先生、多くの学年、多くのクラス、多くの教科を見ることが効果的です。

ついつい、自分の学年や教科に偏った授業を見てしまいがちですが、大切なことは、授業の内容を理解することではなく、授業のやり方を盗むということです。

子ども達の様子はもちろんですが、見るべきポイントは山のようにあります。どこを見てよいかわからないうちは以下を中心に見てみてください。

  • 先生の質問内容や雰囲気作りの仕方
  • 教材の使い方
  • 板書の仕方
  • 机間巡視のルート

その授業で疑問に思ったことは、メモしておき、授業後にその先生に質問をしましょう。きっと親身になって答えてもらえると思います。

大切なことは、先生に「○日の○限、○○の授業を見学させて頂いてもよろしいでしょうか。」と事前に断っておくこと。そして、授業後には「ありがとうございました。」とお礼を伝えることです。

たくさんの授業を見るメリットは、自分の力がつくだけでなく、子ども達に顔を覚えてもらえるというメリットもあります。ちょっと図々しいかな?と思うくらい、積極的に授業を見に行きましょう。

実際に試す段階

次の「実際に試す段階」とは、準備してきた授業を、「見て学ぶ段階」で得た技を使いながら、自分で授業を行ってみることです。

ここでは、「事前にやること」でも述べたように、少し大変かもしれませんが、学習指導案を一時間毎に作りましょう。

学習指導案には、それを見たら自分以外の誰でも授業を行うことができるように、詳しく書いてみましょう。目標や評価基準はもちろん、準備物、板書計画、時間配分、発問内容、机の配置、指導上の留意点を詳しく書きましょう。

なぜこんなに詳しく書くのかというと、指導案を詳しく書くということは、一時間の様子をリアルに思い浮かべることと同じだからです。授業は、準備が8割です。あとの2割は、子ども達の発言やリアクションからその場で展開します。

ですので、この準備8割の部分に時間を割くことが、正に教員としての仕事なのではないでしょうか。

教科書の内容を浅く説明するだけの授業なら、学校は必要ありません。子ども達の「ナゼ」を刺激できるようなスパイスを用意できるとベストです。

指導案も、実際の授業も、最初からうまくいくはずがありません。戸惑ったり、泣きたくなったり、担当の先生に助けを求めたくなったりするのも当たり前です。

生徒たちは既にあなたを実習生としてではなく、一人の先生として見ています。一生懸命にやろうとする姿は必ず子ども達に伝わるので、うまくいかないなりに精一杯の授業を行いましょう。

見て貰う段階

最後の「見て貰う段階」は、「実際に試す段階」で学んだことのまとめとして、色々な先生に自分の授業を見てもらうことです。

主に、実習期間の最終日や前日に行われます。ここでも、うまくいかないこともあるはずです。もしそうだとしても、今の自分の力を素直に認めましょう。そして、授業が終わった後には、見に来てくださった先生を訪ね、「ご多用の中、見に来てくださってありがとうございました。ご指導お願いします。」とお話を頂きましょう。

この時に、自分はこういう考えを持っていたから、こうしたんだ、というように、自分の意見をしっかり言えるようにしておきましょう。ただ、なんとなくその場しのぎで授業を行ったのであれば、後に残る物は何もありません。

ここまで「見て学ぶ段階」「実際に試す段階」「見て貰う段階」に分けて、気をつけるポイントを整理しました。3つの段階において共通していることは、自分の学びたい気持ちが大切だということです。子ども達の前に立って授業を行うようになったら、急に偉そうな態度をとるなんて、もってのほかです。常に、勉強中なんだという意識を持っているようにすることが大切です。

実習中気をつけること(授業以外)

実習中は、授業の経験を積むだけの時間ではありません。学ぶべきことはたくさんあります。

挨拶

大学内では、すれ違った人全員に挨拶する必要はありません。実習中に校内で子どもとすれ違ったら、また、学校の最寄り駅で子ども達と会うこともあるでしょう。子ども達のお手本となるように、自分から笑顔で挨拶ができるように練習をしましょう。

スマートフォンの扱い

教室に持っていくなんてことはもちろんしてはいけません。例え控え室であっても、実習中は勤務と同じです。所構わず触っていると、写真を撮ったり、SNSで個人情報をばらまいたりしていると誤解されても仕方ありません。マナーモードに設定し、むやみに触らないようにしましょう。

余裕を持った行動

子ども達と同じではいけません。遅刻はよっぽどの理由が無い限り無いようにして、体調不良や交通機関の影響などで遅刻してしまう場合は、すぐに実習校に連絡を入れましょう。決められた集合時間があったとしても、余裕を持って到着できると良いでしょう。早く学校に着いて、控え室の掃除をしたり窓を開けたりしておくのも、良いかもしれませんね。校門に立って、子ども達が登校してくる様子を見守るのも、アイデアの一つです。

授業後

控え室で翌日の準備をしているだけではもったいないです。掃除をしていたり、部活動があったり、委員会活動をしていたり、子ども達は授業が終わった後も何らかの活動をしています。子ども達全員が完全に下校するまでは、控え室にこもるのでは無く、子ども達の近くで一緒に活動を見守ったり、助言をしたりしましょう。他愛も無い話の中にも、教員になるためのヒントがたくさんあるはずです。

施設や道具の使い方

トイレのスリッパを履き替えなかったり、揃えなかったり。廊下を逆走したり、走ったり。ゴミをゴミ箱に投げたり、分別しなかったり。学生の時は注意されておしまいだったことも、実習中は許されません。常に子ども達に見られている意識を持って、緊張感をもつようにしましょう。

事後にやること

実習の全日程が終了したから終わり、ではありません。

実習後、なるべく早くお礼状を実習校に出しましょう。校長先生、担当クラスの先生、実習担当の先生、教科の先生など、お世話になった先生全員に出すのが礼儀です。時間はかかりますが、手書きで心を込めて書きましょう。内容は、実習中に感じたことや、学んだこと、これからの抱負などを書くと良いでしょう。

大学に実習修了の証明書や実習ノートを提出する必要がある場合もあります。大学と実習校と密に連絡を取り、漏れが無いようにすることが大切です。

実習校が高校であった場合には、学校祭や文化祭に来て欲しいとお願いされる場合もあります。お世話になったのですから、都合がつく限りは、行って実習のお礼を伝えたり、場を盛り上げてあげたりすると子ども達も喜びます。

おわりに

ここまで、教育実習の心構えとして、実習中に気をつけるべきポイントをたくさん説明してきました。

忘れてはいけないことは、自分はお世話になっているのだということです。

現場の先生からしてみたら、大きな生徒が一人増えたことと全く同じです。余分なお給料も手当も出ないのに、限られた時間を自分の指導に充ててくださることに感謝しなければいけません。そして、本来なら、先生が授業や学級運営を年間通して行いたいはずなのに、それを教員でもない人間に任せてもらえることに感謝しましょう。

また、子ども達からしても、いきなり来た自信が無さそうな大人から授業を受ける訳ですから、不安感があるに違いないでしょう。先生が上手に説明をしてくださると思いますが、自分でも子ども達に誠意を伝えるべきだと思います。

学校を卒業後、教育実習で初めて学校に行くという人もいるかもしれません。世代のギャップに戸惑うこともあるでしょう。それでも、実習期間中は失敗を恐れず、どんどん子ども達の世界に飛び込んでいった人が、より充実した時間を送れると思います。

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