働き方改革って本当に進んでるの?10年前と比べてみよう!

教員の働き改革が注目されるようになり「業務の効率化」「外部委託」など様々な改革が学校現場では進んではいますが、まだまだ課題が多いのが現状です。

自治体によって進み具合に差があるものの、全体で見れば教員の在校時間は年々、減少傾向にあります。

では、今の学校と10年前の学校では、どんなところが変わったのでしょうか。教員のアンケートから見える実状を紹介していきます。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

10年前と変わった今の働き方

本記事を読んでいただいている読者の皆さんは、小学校を卒業して10年以上の時間が経過している人が多いのではないでしょうか。10年前といえば、学習指導要領は2つも前のものになります。「働き方改革は進んでいない」と言う人も多くいますが、教育界もこの間に大きく変わりました。

一人一台端末の実現による改革(2021年4月から)

かつては、授業で使う副教材を自作する教員が多く、既存の問題をコピーしながら作成し、児童生徒数分印刷して配付していました。読者の中でも紙のプリントをたくさん解いて「綴り」のようなものに貼っていたという方もいるのではないでしょうか。現在は、「GIGAスクール構想(2021年4月から)」をきっかけに効率化が進みました。

ワークシート・プリント類の自作の効率化

一人一台の端末を持つことによって、ワークシートやプリントは紙での配布からデジタルに変わりました。作り方もデジタルデータを編集し、子どもにクラウドのデータ共有で配布する方法が主流になっています。

これまでのように印刷して配付する手間を大幅に削減するだけでなく、問題作成に関しても個々の学習状況に合わせてAIが判断してプリント作成ができるなど、これまで人の手では難しかった問題作成ができるようになりました。

ドリルやテストに自動採点システムの導入

教員の事務作業時間で大きなウェイトを占めていたのがドリルやテストの採点です。中学校の定期考査となれば百人以上の生徒の採点を一人でやらなければいけないケースもよくありました。そこに入ってきたのが自動採点システムです。自動採点と言ってもオンラインのテストを自動採点するだけではありません。先生が作成した紙のテストを自動採点することも可能になりました。全ての問題を自動採点システムができるわけではありませんが(数学で言えば、計算問題は自動採点可能だが証明になると自動採点が難しい)半分以上を自動採点するだけでも採点時間は短くなります。

ドリル学習もオンライン教材が入ってきたことでその場で自動的に採点し、教員の手元に記録されるだけでなく、児童生徒の学びの記録としても残ります。自動採点システムは、データとして蓄積されることで、効率の良い学びを子どもに提供することもできます。ドリルなどを販売している教材メーカーでは、オンライン学習ツールの多様化を進めており、毎年毎年、よりよいソフトが発売されたり、バージョンアップがされたりしている状況です。

宿題の配布や点検・出席確認の効率化

宿題の配布や点検についても効率化が進んでいます。タブレット端末の持ち帰りをしている学校では、宿題もオンラインで配信、提出もオンラインで行うことが多いので、わざわざ「チェック係」のような児童生徒が確認する必要はありません。さらに、その時点で採点も完了しているので教員がするのは「出してか・出していないのか」を確認するだけです。

また、毎日宿題を出す方式ではなく、一週間分をまとめて出し、提出するのも決まった曜日に提出をさせる取組をしている学校もあります。このほうが点検回数を減らすことができ、業務の効率化も図れますね。

オンライン化の取り組みでは、毎日の出欠連絡をオンラインで実施する学校が増えてきました。従来は保護者からの電話連絡が中心で、インフルエンザが流行する時期になると朝から職員室の電話が鳴りっぱなし、そのたびに電話を受けた人が教室に連絡に走るという状況でした。出欠連絡をメールやアプリですることにより、電話対応する時間を削減できるだけでなく、担任が教室から出欠状況を確認することができ、朝の忙しい時間帯の業務改善に役立っています。

定期テストの回数削減と効率化

中学校では従来年に6回から8回ほどの定期テストがありましたが、この回数を見直し、テストの回数を5回程度に抑えているところが増えてきました。その分、平常テストやパフォーマンステストといったペーパーテストでは分からない部分を評価に入れています。

これは、新学習指導要領で「主体的に学習に取り組む態度」が重視されるようになり、従来の方式では評価しにくかった部分を評価するため、新しい評価方法が取り入れられた影響があります。新しい評価方法を取り入れることによって従来のテストの回数を減らした結果、テスト作成の時間や採点時間を少なくすることが可能になりました。

会議のオンライン化に伴う出張回数の削減

オンライン会議が主流となり出張が削減されています。学校を離れて別の場所に行くだけでも大変ですが、オンライン化により移動時間の削減が行われました。

また、教員に義務付けられている法定研修に関してもeラーニングなどの手法が取り入れられ、集合研修が大幅に削減されています。どうしても集合での研修が必要な場合には、学校への影響が少ない長期休暇に実施するなど各教育委員会においても教員の負担を軽減することができるよう努力が行われています。

 

確実に勤務時間は短縮 ただし取組の差は大きい

10年前の学校に比べて働き方改革への意識が大きく変わっています。特にICT機器が導入されたここ数年は劇的な変化が起きているといってもよいです。導入直後は保護者もICT操作への不慣れなどがあり、ICTと紙を併用するダブルスタンダード状態で負担が増えていました。ただ、最近ではオンラインで実施する、提出するということが当たり前になってきた雰囲気があります。

懸念事項としては「取り組み差が大きい」ということです。同じ市内の隣接する学校でも片方はタブレット端末を使って情報を提供し、子どもが持ち帰るのが当たり前という学校がある一方、隣は従来の連絡帳を使っている。ひどい場合には同じ学年でもクラスによってやり方が違うというケースもあります。自治体レベルであれば、ICT教育にかける予算に大きな差があります。

このように取り組み差は大きいことを意識したうえで、これから教員を目指す人は「子どもたちが楽になる」「できれば先生も楽になる」という視点で改革を進めてほしいと思います。筆者の知っている学校でも若手の取り組みから生まれた校務改革をしているところはたくさんあります。

参考文献:GIGAスクール構想の下での校務DXについて~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~,文部科学省,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/175/mext_01385.html(参照2024-2-10)

参考文献:1日あたりの勤務時間数は減少するも、平均在校時間は依然として10時間以上,独立行政法人 労働政策研究・研修機構,https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2023/08_09/top_07.html(参照2024-2-10)

【参考文献 執筆上の資料】

・自動採点システム リアテンダント,https://www.dnp.co.jp/biz/solution/products/detail/1192360_1567.html

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