業者テストは使うべきでない? 業者テストのメリット・デメリットとは?

小学校から高校まで児童生徒にとって「嫌なもの」の代表格がテストです。しかし、教員から見ると、子どもを評価するための大切なもので、テストをなくして評定は出せません。

テストの内容や手法は学校種によって異なり、これが「小1ギャップ」「中1ギャップ」などという学校種が変わったことによる、子どもへの負担ととらえられることもあります。

なぜこのようなギャップが生まれてしまうのでしょうか。要因の1つに挙げられるのが「やり方の違い」です。近年小学校は、後述する理由から教科書会社や学習教材販売業者が作成する「業者テスト」を導入するところが増えています。一方で、中学校や高校は「教員が作成したテスト」を使っているところが多く、問題から範囲、やり方が大きく異なります。

今回は、小学校の先生にとっては、頼りになる業者テストのメリットやデメリット、知っておきたい補足について解説していきます。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

業者テストを利用するメリット

業者テストを使う一番のメリットは「教員の負担軽減」です。小学校と中学校の教員の違いは、小学校は一人の教員が全教科のテストを作らなければいけないことです。もし、1学年1クラスであれば、国語から算数、理科、社会など一人の教員が全教科のテストを作成し、実施することになります。1学年2クラスあれば隣のクラスの教員と分業することもできますが、それでも大量のテスト作りに追われることになります。しかも、小学校と中学、高校ではテストの回数が異なります。小学校では単元ごとにテストをするのが一般的で、中学、高校のように一定期間内に学習した範囲をテストするよりも回数が多くなります。

中学校や高校のテスト期間は年間に5回から6回という所が多いですが、小学校の場合、小学5年生の国語だけでも20以上の単元光村教育図書の場合)があります。これだけのテストを毎回作っていては大変です。しかも、最近はAIの普及もあって自動採点システムに対応している「業者テスト」もあります。業者テストを導入することで、テストの作成、採点時間を大幅に削減し、教員の負担を軽減することができます。また、子どもの学習状況をAIが判断し、テストの結果に対して、子どもがどんな問題に取り組めばよいのかをAIからフィードバックできるようになってきました。このような個別の支援策を教職員が一人一人に提供することは従来不可能でしたが、業者テストであれば可能なものもあります。

業者テストを利用するデメリット

教員の負担を軽減できる業者テストは大変魅力的に思えますが、良いことばかりではありません。デメリットもあります。1つ目が保護者の負担が増えることです。業者テストは保護者負担で購入することが多く、年間1教科300~400円の費用がかかります。4教科全部導入するとなると1200~1600円近い負担を保護者にお願いすることになります。

さらにAIでの分析までつけるとなると、

さらに大きな負担となります。教材費に関しては、準要世帯では補助の対象にならないケースもあり、低所得者への負担が大きくなることから公立学校では導入を足踏みさせる要因になります。

2つ目が、完全消化をしなければいけないことです。業者テストを保護者負担で購入した場合、基本的にテストを完全消化しなければいけません。せっかく購入したのに未実施でテストを返却したり、宿題でやらせたりするというのは本来の使い方ではありません。業者テストは出版社によってテスト回数に差があるので、事前に学年で検討したり、学校内の教材採択委員会で助言を得たりしながら、適切なテストを選ぶ必要があります。

3つ目は、テストありきの授業になりやすいということです。本来の学習の流れとしては、

・教員が指導要領や指導書を読み、子どもにつけさせたい単元の目標を設定する

・元の目標を設定する

・単元の目標となる力を培う授業を行う

・評価テストを行って評価する

この流れが理想ですが、業者テストを使うと「既に評価が出来上がっている状態」から授業のプランを練ることになります。業者テスト自体、考えて作りこまれていますが、学校や子どもの実態は考慮されておらず一律のものになっています。学校や子どもの実態に応じて柔軟に変更できないことが欠点になります。

中学校・高校では業者テストがあまり導入されていない理由

ここまで解説すると「なぜ中学校・高校では業者テストを導入しないの?」と疑問に思う人もいると思います。実際には中学校、高校向けの業者テストも販売をされています。しかし、小学校と比べると採用率は低いです。要因として挙げられるのが「範囲」と「難易度」です。

中学校や高校ではテスト期間に、そこまで学んだ範囲をまとめてテストします。テスト範囲は学校行事や学校ごとに決めることができるカリキュラムによって変動します。業者テストは個々の学校のテスト範囲に完全対応していません。難易度も業者テストでは「一般的なレベル」に合わせて作成されています。そのため、やや難易度が低く、学力の高い中学校や高校では高得点が続出していまい、評定が付けにくくなります。レベルの高い高校や大学の入試問題に対応するような問題レベルになっていないので中学校や高校では導入しにくいのが現状です。

小学校でも業者テスト任せは危険不足しがちな評価の観点

小学校のテストも全て業者テストでよいかと言えば、これは違います。

平成29年から各教科における観点、別学習状況の評価の観点について「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つにまとめられました。「知識・技能」と「思考・判断・表現」については業者テストで評価することができ、評価の観点まで資料として付いているものもあります。一方で「主体的に学習に取り組む態度」については、業者テストの評価基準に入っていないこともあります。この場合、別の手段で第3観点については評価をしないといけないので必ず確認しましょう。

必ず自分で解いて確認しよう

教員の中には「業者テストだからミスはない」と思い、確認を怠ってしまう方もいますが、これは危険です。

教科書に載っている問題例とテストで出ている問題例が異なったり、教科書には記載されていない用語がテストで出題されているということもよくあります。テストを作成する側も、毎年編集会議を開いてチェックをしていますが、それでもずれている可能性があり、特に教科書の改訂時には注意が必要です。(直近で言えば小学校は令和6年度)テストを開始してから慌てることがないように必ず教員も一度は解き、どのような問題が出ているのか、子どもにどんな力を付けさせておかなければいけないのかを確認しましょう。

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