新任の教員がゴールデンウィークが始まる頃から考えなければいけないものの1つに定期テストがあります。子どもの学力の評価に重要となるテストだからこそ作り方に悩む方もいるのではないでしょうか。
はじめに、テストの意味合いは小学校と中学校、高校では大きく異なり、その理由は「最終的なゴール」にあります。
小学校の場合は、多くの子が中学校へ進学する際に受験がありません。もちろん、中学受験をする子どももいますが、子どもを学力で振り分けるという観点でテストを作っている教員はあまりいません。一方で、中学校、高校になると受験というゴールがあるため、子どもたちに自分の実力を知ってもらいつつ、さらに意欲を高めるようなテストをしなければいけなくなります。この「評価」という点でテストの内容や出題方法が変わってきます。
ライター
emikyon
・元公立学校教員
・教育委員会にて勤務
・eduloライター歴2年
個々の能力を全国のレベルと比較して評価していく
既習事項を確認し、子どもの基礎的な学力の定着を確認する小学校と同じような感覚で中学・高校のテストを作ると高得点域に子どもが固まってしまい、入試に向けた評価をすることができなくなってしまいます。そこでテストを作るときには全国のレベルと比較しながら、子どもの能力をはかっていくという視点が必要になります。
適切な難易度や問題のバリエーション
全国のレベルとはかるというとすごく難しく感じるかもしれませんが、大切なのは
・適切な難易度で作ること
・多様な問題のバリエーションを用意すること
この2つになります。筆者もいろいろなテストを作ったり、各学校の教員が作ったテストをみたりしてきましたが、1と2ができていないと平均点の安定しない無茶苦茶なテストが出来上がります。そこで、テスト作成初心者が意識してほしいのは「4-4-2」という考え方です。
・優しい問題(4割)
単純に重要語句を問う一問一答式、基本計算、漢字や単語の知識を問う問題など
・中難度の問題(4割)
図やグラフを読み取る問題、算数の文章題、文章を読み取って表現する問題、英作文など
・高難易度の問題(2割)
入試レベルの問題、複数の条件をとらえて自分の言葉でまとめる問題(小論文や数学の証明など)、複数の図表から変化や推定をしなければいけない問題など
自分の作った問題を「優しい・中難易度・高難易度」に分類してどの程度の配分になっているのか確認してみましょう。そして、1つの目安として「4-4-2」でやってみる。これで平均点が高くなるようであれば「3-4-3」「3-3-4」というように難易度のバランスを整えます。この「問題難易度の見立て」ができるようになるとある程度平均をコントロールできるようになりますよ。
生徒や保護者に納得してもらえる点数と評価
高校入試で内申点が重視される中学校のテストではテストの点数と評価の連動性に気をつけましょう。
例えば、中間テスト、期末テストで両方とも90点以上を獲得している。だけど通知表では「4」がついてしまうと生徒や保護者からは不信の目で見られてしまいます。もちろん、絶対評価なので、「4」がつくのはあり得ます。このようになるときにはテストの平均点が非常に高くなり、評価のラインを上げざる負えなくなったときに起こりがちです。
テストが難しすぎると80点台が2回なのに「5」になるケースもあります。この場合は、あまりクレームにはなりませんが、よい評価かと言えば疑問が付くところです。このように、テストの点数ともらった評価がずれていると不信感を招くことになります。
高校入試・大学入試を見据えた問題作り
中学校や高校のテストでは、どうしても受験を見据える必要が出てきます。高校入試では、近隣私立高校や県立高校入試に似たような問題を出す必要がありますし、大学入試では、共通一次テストを見据えた問題を取り入れましょう。ただし入試問題というのは難易度が高いものが多いです。
入試問題ばかり入れていると平均点が低くなってしまいますし、前述した「児童生徒の到達度」を知ることが難しくなります。出題の割合は全体の2割程度までにとどめておき、問題も今の子どもたちの力量で解くことができるのか見定めることが大切になります。
テストを作った後の確認ポイント3点
テストを作ったらすぐに完成ではありません。必ず確認をしましょう。その際に気を付けるとよい3点を紹介します。
①時間配分の確認
1つ目がテストの時間配分です。問題量が多すぎると子どもたちは時間内に解くことができません。中学校や高校であれば、先生が解いて「およそ30分」が目安になります。ただし、自分自身で解いていては出題が分かっているので早くなります。できれば、同じ校内の教員(教科は違っていてもよい)と交換するのがよいです。
②過去問の使用
昨年、一昨年の問題との比較過去に出した問題と同じような問題がないかの確認をしましょう。多くの子どもたちは学習塾に通っており、塾に過去のテストは全部ストックされています。「内申点対策」として、同じ学校の前年や一昨年の問題は解いていると考えたほうがよいです。塾に通っている子とそうではない子で差が付かないような配慮も必要です。
③評価の観点に一致しているか
学習指導要領や教科書の解説には単元ごとの評価基準が掲載されています。テストの内容が、どの単元のどの観点の評価を取っているか確認します。小学校では単元ごとにテストが行われるケースが多いので、点数の配点にアンバランスは起きにくいですが、中学校・高校の場合、一定期間分の学習内容をまとめてテストするため、点数配分にアンバランスが起きやすくなります。後になって、評価を取り忘れたということがないように確認しましょう。
同一教科の先生との問題の解き合いを忘れずに!
最後に、テストを印刷する前は、できるだけ同一教科の先生で問題の解き合いをしましょう。特に大きな学校で、1つの学年を複数の教科担任が見ている場合には注意が必要です。(例国語の担教員が 1~3組はA教諭、4,5組はB教諭というケース)
授業の内容は基本的に同じように進めているはずですが、それでも多少のずれが出てきます。テストで出ている用語をA教諭は教えたものの、B教諭は教えていないという場合、そのままテストを向かえるのは生徒が不利益を被ることになります。事前にテストを見せあい、内容を確認しておけば、最悪直前の授業で修正できます。本来教え忘れはあってはいけませんが、テスト後に発覚することのないようにしましょう。
テストは生徒一人一人を適切に評価し次への意欲を引き出させたい
テストは児童生徒の能力を評価するものですが、適切な評価をしなければいけません。あまりに低い点数になってしまっては次への意欲を持たせることができないのです。教員の中には、難しいテストで差を付けたいと思っている人もいるようですが、それよりも教員が子どもの到達状況をしっかりと把握する、不足があれば次で補うという視点を持っていないとテストをする意味がありません。「テストの点数が低いのは子どもの出来きが悪い」という教員は間違っています。これは「指導者の指導が悪いからできない」のです。このことを常に考えておけば、日頃の授業やテストのやり方も変わってきます。