基本的な評価に対する考え方
先生になって悩むことの1つに評価があります。既に初めての評価を終えたという先生も多いのではないでしょうか。この評価の仕方には5つのポイントがあります。ただ、子どもの優劣を判断する数字ではなく、次につながり、やる気を引き出させることができるような評価ができるようにしましょう。
正しくやる気を引き出す評価を
評価で大切な視点は「優劣の判断」ではなく、「子どもや保護者に現状を伝え、次につながるもの」でなければいけません。では、「次につながる評価」をするにはどうすればよいのでしょうか。
評価の基準を明確にしているか
大切なポイントの1つ目が「基準が明確」になっているかどうかです。これは日々の授業でも同じですが、評価の観点が途中で変わってはいけません。授業が始まる前に、評価基準を設定し、毎時間評価をするのが理想です。絶対にやってはいけないのが、単元末に行う「テストの点数」のみで評価することです。
そもそも子どもの評価は下の3つの観点で行います。
① 知識及び技能
② 思考力、判断力、表現力
③ 学びに向かう力、人間性
①,②はテストで評価することができますが、③は難しい部分が多くあります。②に関してもテストだけではわからない部分があり、その点を評価しなければいけません。本来は、全ての観点について毎時間評価するのが理想ですが、現実は難しいので、1つの観点に絞って評価するのもありです。その際に、必ず評価の基準を明確にして、子どもが聞いても納得できるようにしなければいけません。基準が曖昧では、保護者からも不信感を抱かれることになります。
評価に対する根拠を必ず持っているか
2つ目は「評価の根拠」です。一番わかりやすいのが「算数の計算技能として計算テストをする。その際に5分で20問中16問できればA、12問までがB,それ以下はC」という基準を設定する。ただし、この正解率に根拠はありますか?という問題になります。
実は教科書会社が出している指導書には、明確な数値基準がありません。「概ね理解している」「理解できている」の表現にとどまっています。では、この数値の根拠になっているのは何かというと、教科書会社が作成しているテストの基準に準じています。多くの業者が作成しているテストでは3段階の評価で「よく達成=80%」「おおむね達成=60%」としています。この数字から「20問中16問できればA評価」という根拠が生まれます。このように評価をする場合には根拠となるものが必要になります。
中学校の技能教科ではこの根拠を明確にすることが難しいので、どうしても評価しにくくなります。その際には、先輩に聞きながら評価を付けていくことが大切になります。また、1回の大きなテストで評価をしてしまうのではなく、小さい評価を積み上げていくことで、保護者に説明するときの根拠となるデータを増やすことができます。毎時間の評価基準を明確にもち、結果を細かく記録しておくということが後になって役に立ってきます。
子どもが前向きになれる評価になっているか
3つ目は「子どもが前向きになれる評価になっているか」という点です。前向きになれる評価と言っても評価基準を甘くして、よい数字を与えるという意味ではありません。子どもや保護者が評価を見て、やる気になることができる説明があるかという点です。
評価を記載した通知表やあゆみを渡すときは、ただ渡すだけでは意味がありません。その数字についての価値付けをする必要があります。一番簡単なのは評価を渡す際に子どもに声掛けをすること、成績が下がっているのであれば「どうすれば上がるのか」「どこが上がりそうなのか」こうした情報を提供します。もっと効果があるのは保護者に直接伝えることで、保護者会や懇談会があれば、直接保護者に話をするチャンスです。まだ、成績表を渡し前の段階かもしれませんが、その段階での学習の到達度、どの分野をどれくらい頑張ればよいのかといったことを話せば、保護者にも成績の説明をすることができ納得してもらうことができます。
成績は上がればうれしいものですが、下がると嬉しくありません。しかし、下がったときこそチャンスでもあります。よい先生は「成績の下がった子に対して具体的なフォローアップをします。さらに成績が上がったことを確認して褒めます。」、できない先生は、ただ数字を言うだけ、または「がんばれ」というだけで具体的なフォローアップはありません。この記事を読んでいる人であれば、どっちの先生の言葉がやる気になるのか分かると思います。
評価のラインは一定に保たれているか
4つ目は、非常に難しいことですが「評価のライン」を統一することです。小学校で1クラスの学年では気にすることないのですが、複数のクラスがあったり、中学校では1つの学年を複数の先生で教科担任していたりするケースが多いと思います。こうなると難しいのが評価するラインの統一です。テストであれば「カットライン」というのを設けて、統一すればよいですが、実技教科(音楽や保健体育など)や表現力、思考力を問うような問題では、評価基準が統一しにくくなります。ラインのずれが発生しないように教科部会や学年会などを通して意思統一を図っておきましょう。このあたりは先生たちの連携力が問われることになります。
評価ラインにぶれをもたせないようにするためには、評価基準を作る段階で「最低ライン」というのを設定しておくのが良いです。「〇〇ができたらB」というように最低基準を作っておくと採点しやすくなります。また、3段階の評価で基準を作ると2段階目の評価基準範囲が大きくなってしまい、差がつきにくくなります。3段階を5段階にして採点し、最後に観点ごとに加算して、3段階にまとめるような方法を取ると差がつきます。7段階や10段階にすると差がつきやすくなる半面、評価しにくくなるので注意が必要です。
学年、発達段階に応じた評価になっているか
5つ目は発達段階に応じた評価になっているかどうかです。例えば、小学校1年生の評価と中学校3年生の評価では重みが変わってきます。小学校1年生であれば少し甘めに評価基準ができ、子どものやる気を評価してあげるウェイトが大きくなることが多いです。一方、中学校3年生になると進路選択がかかわってきます。実力と一致しない評価が付いていると受験を突破することができず進路選択を誤ることにもなります。中学校になってくると実力と見合った評価が必要になります。
評価するときの3つの観点も同様で、文部科学省が打ち出している理想の比率は「1:1:1」となっていますが、これでは正しく評価することができない学年もあります。学年(学校)として評価したい観点を明確にして、観点の比率も変える必要があります。
ただの数字ではなく やる気をなくすこともやる気を引き出すこともできる
通知表やあゆみの評価は、子どものやる気を引き出すこともできますし、逆に下げることもできます。数値が下がるというのは子どもにとって「ショック」なことであり、子どもであってもなぜ下がったのか、どうしたら上がるのかというフォローアップを必ずしましょう。評価は学習へのやる気を高めることもできますし、なくすこともできるものであることを意識して作成しましょう。
出典:大日本図書 小学校算数指導計画に関する資料
https://www.dainippon-tosho.co.jp/sansu/curriculum.html