ダイナミックな学習意欲

主体的に学習に取り組む子どもたちの姿を思い浮かべ、日々悩まれている教員方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、主体的に学習に取り組むための始まりの部分である「動機」について考えていきたいと思います。

私の中で考えた結論をお話しすると、動機付けというものは「イノベーション」なのだということです。言い換えるならば「創発」です。創発という言葉は、例えば、医学の専門家と、物理学の専門家と、教育の専門家が集まって、ある目的に向けて話し合ったときに、革新的なアイディアが生まれるというようなことです。人間は、認知、感情、欲求、そして環境が要因(以下、4要因)となって動機付けられています。それらが、個別に動機付けられるというような器用な人間はいません。動機というものはこれらがダイナミックに影響し合いながら動機付けられていきます。つまり、心という宇宙の中で、4要因がぐちゃぐちゃに合わさって、内省しながら偶然生まれたものということだと捉えられます。例えば、「学校の掃除でいつも頑張っている子」や「運動部で見られるボランティア精神」なども、4要因がダイナミックに働いたことで、偶然子どもたちの心の中に表れ、動機と言われるものに表れるということです。偶然出来上がるということから、動機というものはあくまで100%主観なものだと考えられます。だからこそ、操作することはできないですし、見取れても、客観的な数値のような評価はできないだろうと考えられます。疑似的なものとして「私の見取れた範囲ではこんな感じでした」ということを伝えるような評価は有意義でしょう。

教員という職業では、強制を強いることもできれば、支援することもできます。動機付けに関しても、昨今では「支援」が強調されて主張されていることも多いかと思います。しかし、動機についてわかってくると、支援という言葉の幅もまた広いことに気付きます。

例えば、強制的に挨拶を習慣付けていくと、規律正しくなります。そのような部活動の環境に居心地の良さを感じ、その結果、勉強に身が入る可能性もあるのです。

これは、挨拶が強制的でも、環境を整えるという意味で支援だともいえるのです。学校のルールによって規律正しい生活が保障されることで、居心地が良いと感じる子もいる反面、さらに家庭でのルールも厳しいと、学校でのルールが窮屈に感じてしまう子もいる可能性もあるのです。このように生きていく中で、学習意欲自体が「学習」されていきます。意欲が起こることで、次の意欲が起こりやすくなり、動機が生まれる可能性が広がるでしょう。

最後に、教員としてどのように動機付けと関わるのか。私は子どもたちが楽しそうだと思っているなら一緒に楽しみ、ちゃんと手伝おうということが大切だと考えています。そんな簡単なことと思われるかもしれませんが、意外にもめんどくさがったり、怒ったりしてしまい、今、偶然にも起こりそうな動機(イノベーション)を消し去っている可能性があるのです。ゆっくりと個々に関わることをしながらも、偶然に動機が起こるかなと、試してみる。そんな心の余裕をもつことを意識してみてはいかがでしょうか。

NPO独立総合教育政策研究所次長小泉尚人

参考文献:鹿毛雅治,「学習意欲の理論ー動機づけの教育心理学」,金子書房,2013年8月

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