教員不足が深刻化!現状と解決策は?

近年、教員不足があちこちの自治体で叫ばれています。新聞やニュース、SNSなどのメディアでも話題となりました。事実、現場では人手が足りない事態が続いています。

現場からも悲鳴が。人手が足りない!

3月になっても新年度の担任枠が埋まらない、2週間後の夏休み明けからの社会の担当がいない、など、現場は窮地に立たされています。かつては、教員採用試験といえば、採用予定人数の少なさに反して志望者数が多く、非常に狭き門でした。そのため、教職志望者はこぞって、学科の勉強や面接、模擬授業などの試験対策に励みました。教員は、憧れの職業の1つだったのです。では、現在なぜこんなにも教員不足が深刻になってしまったのでしょうか。今回は、教員不足の現状及び今後の解決策について考えてみたいと思います。

教員不足の実態

2022年1月、文部科学省が教員不足の実態について発表しました。全国の公立の小学校・中学校・高校・特別支援学校で、予定していた教員数よりも2558人不足(2021年4月の始業日時点)という結果が明らかになったのです。文科省が教員不足について調査を行うのはこれが初めてのことです。校種別にみると、最も不足人数が多いのは、小学校で1218人です。不足が生じている学校の割合では、特別支援学校が最も多く、13.1%という結果になりました。全国の特別支援学校のうち、実に13%もの学校が人手不足を嘆いているというのは非常事態であることがわかります。全体でも、20校に1校程度の割合で教員不足が起きていることになります。この教員不足が、今後さらに深刻化していくことも十分起こり得るのです。

参考文献:読売新聞
「全国で教員2558人不足、担任不在の事態も…小学校の採用倍率は過去最低に」.https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20220131-OYT1T50176/
(参照2023−1−13)

子どもの学びにも影響が

担任教員が1人欠けた時、現場ではどう対応するのでしょうか。担任不在というわけにはいかないため、代役を立てることになります。しかし、その代役は年度途中であればなおのこと、なかなか見つかりません。仕方なく教務主任や主幹教諭、教頭などが自分の業務で忙しい中担任を兼務したり、他の担任の先生が授業や行事を分担して受け持ったりと、つぎはぎだらけの状態で運営しているのが現状です。教科制の中学校では、専門教科以外の先生が授業をすることもあると耳にします。子どもたちにとって、学級担任が代わることへの不安・心配のみならず、授業の質にも影響が出てくるのです。

教員不足、その要因は?

教員は子どもたちの学びを支え、成長をサポートできる魅力的な職業です。小学校、中学校、高校と幅広い発達段階、指導内容で子どもたちと関わることができ、それぞれ違ったやりがいを感じられるのも魅力でしょう。その点に関しては、今も昔も大きくは変わらないはずです。それなのに、今、なぜこんなに現場が困窮するほど、事態は深刻化してしまったのでしょうか。考えられる要因を見ていきましょう。

志望者数の減少

Twitterのハッシュタグ「#教師のバトン」を知っていますか?現場で働く教員で、働き方改革や教育実践、日常などの仕事の魅力を発信し、学校の未来に向けてバトンをつなごうと、文部科学省が始めたプロジェクトの1つです。

しかし、これが思わぬ逆効果になりました。現職の教員たちがこぞって「#教師のバトン」をつけ、教員の過酷な労働環境や苦労などの悲痛な叫びを発信するようになったのです。これらのツイートを目にし、教員志望を辞める若者もいるようです。教員の労働状況が明るみになり、業務量の膨大さやブラックな働き方であることが世間に露呈してしまいました。教員を志す人が減ったのにも納得せざるを得ないでしょう。事実、各自治体での教員採用試験の倍率は軒並み低下しています。2000年には13.3倍もの狭き門であったのにも関わらず、2021年度には3.7倍と過去最低ラインになりました。校種別では、小学校が2.5倍と過去最低を更新。さらに自治体別に見ると、1.4倍と低い倍率の自治体もあります。

休職率の高さ

予想だにしなかった休職によって、代替の教員が見つからず人手不足となっている学校が多いことも明らかになりました。特に多いのが、精神疾患によって休職する教員です。精神疾患による休職教員は、1990年代後半には2000人に満たない程度でした。しかし、その後増加が止まらず、2008年以降は、5000人前後の高い数値を保っています。20年近くの年月で急増してしまったのです。

対処困難な児童生徒への対応や保護者対応が増えたこと、また同僚や管理職との人間関係が精神的なストレスやプレッシャーになって引き起こされています。また、産休・育休による休職により、教員不足になるケースもあります。任期に期限があること、次の職の保証がないことなどもあり、代替が見つからない場合が多いようです。休職教員が出た際に、講師登録や人材バンクなどの採用システムを通じて登録者に連絡をとっても、すでに他の学校で教員として勤めていたり、他職種に就いていたりと、年度途中での採用は難しさを感じます。

非正規教員への依存

教員には、臨時的任用教員などの非正規教員が存在します。任期に期限はあるものの常勤で、働き方としては、正規の教員と変わらないことが多いです。この非正規教員の枠は年々増加しています。正規雇用の枠を減らし、非正規雇用の枠を拡充しているのです。その一方で、非正規雇用の供給は減っています。教員採用試験の倍率が低下したため、教員志望者は採用試験で正規雇用になる割合が増え、非正規雇用でも教員として働きたい人材が見つからなくなったのです。

解決策は?

教員不足である現状を現場にいる人材のみでやりくりするのには、限界をむかえています。教員1人ひとりにのしかかる負担、現場の不満・悲鳴、職員室は疲弊しきっています。こんな状態では、子どもたちによりよい教育が提供できるはずがありません。そればかりか、このままでは学校運営すら危うくなるのが目に見えています。未来を担う子どもたちが、安心・安全によりよい教育を受けるためにも、教員不足の解消は国全体を上げて取り組むべき課題なのです。

文部科学省が提案する教員不足の解決策

文部科学省は教員不足の実態を受け、以下のような方策を示しています。
①公立学校教員採用選考試験における取組の収集・発信
②「学校・子供応援サポーター人材バンク」等を通じた講師のなり手確保に向けた取組
③学校における働き方改革の推進など勤務環境の改善を含めた教職の魅力向上
④オンラインで利用のできる学習コンテンツの開発
また、各教育委員会では、複数年を見越した計画的な採用を進めたり、大学等との連携を深めたりと、独自の対策を導入している自治体もあります。

本当に教員のなり手が増えるのか?

文部科学省の方策のみで、本当に教員のなり手が増えるのでしょうか。もちろん手立ての1つであることは否定できませんが、教員の労働環境の抜本的な改革の必要性を感じます。教員は長時間労働が強いられることの多い職業です。朝は早くから登校してくる子どもたちのために就業開始時間よりも前に出勤し、昼は休憩時間もなく給食の準備や対応、夕方は部活指導に山積した業務で定時を大きくまわってもなかなか帰れません。そればかりではなく、終わらなかった業務については、夜間や休日に取り組むこともしばしばあります。この働き方に魅力を感じないのはたしかでしょう。教員の業務内容を見直し、不要な業務を削減したり、民間に委託したり、ICT機器やデジタル化することで簡略化したりと、教育界も変わらなければならない時期にあると考えています。教員1人ひとりが自分でできる時短方法を考えるなどの努力も必要ですが、全体の慣習が変わらないことには、教職を志そうという人材は増えません。また、年度途中での欠員が出た際に余裕のある人員配置を組むなどの対応も進んでいくとよいと思います。国や各自治体をあげての全体改革が必要になってくるのです。

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