中学校卒業後の進路は、高等学校・高等専門学校・通信制高校など様々な選択肢がありますが、進路の1つである専修学校について知っていましたか。
今回は、教員なら知っておきたい高等専修学校の基本情報や進路指導の際の注意点をわかりやすく解説していきます。
ライター
emikyon
・元公立学校教員
・教育委員会にて勤務
・eduloライター歴2年
専修学校とはどんな学校?
はじめに、「専修学校」は大きく2つに分けることができます。
専門課程を置く専修学校「専門学校」
学校名に「専門学校」と入っている学校は、専門課程を持っている学校です。専門課程は、高等学校卒業者を対象としており、卒業後は「専門士」の称号を得ることができます。
高等課程を置く専修学校「高等専修学校」
「高等専修学校」と入っていれば高等課程を持っています。高等課程とは、中学校卒業者を対象にしている「高等専修学校(専修学校高等課程)」のことを言います。
専門学校と高等専修学校の違い
2つの学校の大きな違いは、就学年限と卒業資格です。専門学校は、就学年限が1年以上ですが、仮に中学校を卒業して入学しても高校卒業の資格を得ることができません。学歴としては「中卒扱い」になりますし、大学入試を受けようと思うと別途「高校卒業認定」が必要になります。
高等専修学校は、就学年限が3年以上となりますが、高校の卒業要件を満たすことができるカリキュラムになっているので、条件を満たすことができれば、高校卒業扱いとなり、大学進学も可能です。
大学進学の割合
文部科学省の「未来をひらく高等専修学校」の資料からも、高等専修学校を卒業した生徒のうち4割以上が「大学や専門学校への進学」と示されています。
この結果からも、専修学校に進学すると卒業後すぐに就職という道だけでなく、さらに専門性を高めるために進学することができることを教員ならば知っておきましょう。
実は歴史が浅い専修学校
専修学校は、比較的歴史が新しく、昭和50年代になって生まれました。職人の育成を主眼とした学校で、中学校や高等学校を卒業後、資格や技能を取得して早く仕事に就きたいという人の希望を叶えるための学校でもあります。
そのため、専門課程は「調理」「美容」「医療」「工業」といった課程が多く、最近では「プログラミング」や「デザイン」といった、時代の流れに応じて新しい課程を持つ学校が誕生しています。
学校の設置認可も文部科学省が行うのではなく、都道府県知事が行うため、地域の実態や文化にあわせた専門課程を持つ学校が設置されています。
将来にいかす資格を取得できる
専修学校へ進学するメリットの1つが、資格取得に最短ルートで行くことができるカリキュラムが組まれている点です。
大学や高校では、一般教養と呼ばれている課程があり、そこに多くの時間が割かれます。しかし、専修学校は、目指す業種の即戦力を育てることが大きな目的のため、技能や資格取得に向けた知識に特化して学ぶことができます。
「調理師」「介護福祉士」「危険物取扱」といった専門資格、国家資格の取得ができるため、卒業後すぐに働くことも可能です。さらに、卒業後の就職サポートを学校にしてもらうこともできます。
進路指導をする上での留意点
専修学校への進学希望を持っている生徒を進路指導する場合には、いくつか気をつけなければいけないことがあります。
高卒の資格の取得について
これまで説明した通り、中学校卒業後に専門学校に行くと高卒資格の取得が難しいですが、高等専修学校であれば、高卒資格を得ることができます。受験者や保護者にそれぞれのメリット、デメリットを説明する必要があります。
進路変更の難しさについて
専修学校への進学後は、在学中の進路変更は難しくなります。
専修学校は特定の技能や知識に特化した指導が行われます。そのため、進学してから他のことをやりたいと思っても、学校内で変更することができず、転校をして学び直しをしなければいけなくなります。受験生が「絶対にやりたい」という強い意思があればよいですが、途中で進路変更しにくいという点も進路指導をする際には話しておくべきことです。
幅広い情報集めが必要
専修学校のカリキュラムは学校毎に独自性があります。
通学スタイルだけとっても
・一般的な高校と同じように週5回通う学校
・週1回の登校で残りはオンラインで授業を受けることができる学校
・定時制高校と同じように夕方から授業を開始する学校
など様々です。
学びたい人のライフスタイルに合わせて勉強することができ、オンラインスクールであれば、自宅から通うことができない遠方の学校でも入学することができますし、家庭の事情で親元から離れなければいけない子どもたちは「全寮制」の学校を選択することも可能です。
そのため、進路指導をする際には、近隣の学校だけでなく幅広く情報を集めておく必要があります。
学校探しをしている生徒や保護者は学校の良い面ばかりに気を取られがちです。専修学校への進学は、メリットとデメリットがあることをしっかりと周知して、その上で本人も、保護者も納得した上での進路指導をしましょう。
将来のスペシャリストを育成する選択肢として知っておこう
専修学校は、将来のスペシャリストを育成するための学校です。進路指導をする際には、通うことができる範囲内の専修学校については知っておきたいですね。そして、将来、その道のスペシャリストになりたいという生徒が現れたら、範囲を広げ、正しい情報を提供してサポートしてあげてください。
参考文献:専修学校とは,文部科学省
,https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/senshuu/1280727.htm,(参照 2024-12-3)
参考文献:『未来をひらく高等専修学校』,文部科学省,https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/senshuu/1413725.htm,(参照 2024-12-3)
参考文献:『未来をひらく高等専修学校(資料)』,文部科学省,https://www.mext.go.jp/content/20240507-mxt_syogai01-100003305_1.pdf,(参照 2024-12-3)