在外教育施設とは? 日本人学校での勤務経験のある教員が解説!

在外教育施設は、国内の小学校、中学校又は高等学校における教育と同等の教育を行うことを目的とする施設です。

在外教育施設は「日本人学校」・「補習授業校」・「私立在外教育施設」の3つに分類され、その数は合計すると300校以上になります。つまり、それだけ多くの日本人が海外で働いているということになります。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴3年

日本人学校ってどんな施設?

日本人学校は、文部科学大臣から日本国内の小・中学校または高等学校と同等の教育課程を有する旨の認定を受けた全日制の学校のことを指し、幼稚部を併設している学校もあります。

多くの日本人学校が現地の日本人会などが主体となって設立された教育施設のため、公立学校よりも私立学校に近い運営方針を取っています。昭和31年タイのバンコクに設置されて以来、現在は世界49か国と1地域に94校の日本人学校があります。

補習授業校ってどんな施設?

補習授業校は、現地の学校や国際学校(インターナショナルスクール)等に通学している日本人の子どもに対し、日本国内の小・中学校の教科の一部を日本語で補習するための学校です。主に週末や放課後などに授業が行われます。日本人学校を建設するほど日本人がいない場所に建設される傾向があります。

私立在外教育施設ってどんな施設?

私立在外教育施設は、国内の学校法人等が母体となり海外に設置した、全日制教育施設です。私立在外教育施設の中学部の卒業者は国内の高等学校の入学資格を、高等部卒業者は国内の大学の入学資格をそれぞれ取得することができます。

私立在外教育施設は、私立学校(日本国内の)が海外に設立した教育施設で、4か国に9施設存在しています。

アジアに集中している学校の分布

日本人学校は、日本人の海外赴任者が多いエリアに建設されます。そのため、通っている子どもの割合は、中国が圧倒的に多く、半数近くを東アジア地域が占めます。

次にタイやシンガポールなどの東南アジア地域で、ここまでで全体の70%以上になります。アメリカやヨーロッパ、南米などは学校数はあるものの子どもの数は少ないです。

2021年度のデータでは、在籍している児童生徒数が最大の日本人学校は上海日本人学校、ついでバンコク日本人学校の順になっています。

働いている教員は各県からの派遣教員とシニア派遣、現地採用職員

次に、日本人学校で働いている人について紹介します。日本人学校で働いている教職員は、日本の各都道府県から派遣されてくる「派遣教員」、現職を退き、または役職定年をした教員が派遣される「シニア派遣」、そして現地採用のスタッフです。

「派遣教員」とは、各都道府県から試験を受けて日本人学校勤務になる教員で、現役の教員が派遣されます。

「シニア派遣」とは、定年後または役職定年を迎えた人が、再任用のような形で文部科学省から派遣されてくる教員です。現地採用スタッフは、名前の通り、各日本人学校が現地で募集している職員で、教員免許を保有している人を教員として雇ったり、現地で働いている日本人や派遣国の人を事務職員などとして雇ったりするケースがあります。

日本人学校では、このような様々な雇用形態の人たちが協力をして勤務することになります。

日本にいるときと同じ教育を求められる教育施設

海外に在留する日本人の子どもたちは、在外教育施設か現地の学校やインターナショナルスクールに通います。

現地校やインターナショナルスクールに通うのと、在外教育施設に通うのでは大きく異なります。現地の学校は、現地の教育カリキュラムに基づいて学習が組まれているため、授業は現地の言葉または英語、学期の始まりも9月スタートになっています。

一方、在外教育施設の場合、4月始まりの3月終わり、夏休みや冬休みも日本の学校とほぼ同じ位置にあります。年間の授業時数は日本のカリキュラムで作成されるため、登校する日数は日本とほぼ同じ(約200日ぐらい)になり、休校日はその国の祝日に合わせて設定されていることが多くなっています。

学校で使われている教科書もその教科において日本で最も採択されている教科書を在外教育施設では利用します。これも在外教育施設で学んでいる児童生徒が日本の学校に戻ったときにスムーズに転入できるように配慮されています。

生徒の入れ替わりが激しい在外教育施設

在外教育施設に通ってくる児童生徒の多くが「駐在員の子ども」です。現地に永住する予定の子どもたちも通うことはありますが、その多くは現地の言葉や英語を学ぶことができる現地校やインターナショナルスクールを選択します。

駐在員という仕事の性質上、保護者に人事異動があればすぐに転勤になるため、子どもの入れ替わりも激しく、数か月滞在してすぐに帰国してしまったり、転勤予定だったのが伸びに伸びてそのまま滞在し続けてしまっているケースもあります。

教員としては「転入」「転出」に関する書類を書くことは日常的なことであり、体験入学なども含めると入れ替わりが非常に多いなと感じるはずです。これも在外教育施設特有の事情がもたらすことです。

仮卒業式・体験入学など独特なルール

在外教育施設では、海外特有のルールがあります。全ての学校に該当することではありませんが、一般的な特有ルールを2つ紹介します。

中学校3年生の場合、日本では3月上旬に卒業式を実施しますが、在外教育施設では12月に「仮卒業式」というものを行うケースが多いです。これは1月から本格的に始まる入試に備えて、日本に帰国する生徒が増えるために行われています。特に公立高校を受験する場合には「居住地の住所」が必要になるため、日本に帰国して住民登録をしないと受験することができないこともあります。そのため、仮卒業式をもって学校を離れ、日本の学校に転入する生徒が多くいます。

在外教育施設から離れて日本の学校に体験入学することを「体験入学」と言います。特に夏休みなどの日本の長期休暇に合わせて一時帰国した際に日本の学校に体験入学します。一時帰国の際には「住民票を入れる」ことをするケースは少なく、住民票を入れない限り転入はできません。また、日本の滞在期間も短いので、一時的に日本の学校に受け入れてもらうことがあります。

働きたい人は各都道府県の応募から

教員をしながら海外赴任を経験してみたいという人も多いのではないでしょうか。難しいこともありますが、楽しいことも多く非常に貴重な体験となるでしょう。

興味のある方は、新年度すぐに管理職から「在外教育施設職員応募」の告知がされますので、まずは試験を受けて都道府県を突破し、最後は文部科学省の試験を受けて合格すると派遣教員として登録をする必要があります。登録から実際の派遣までは、その年の年度末に派遣されるケースもあれば、翌年の年度末に派遣されるケースもあります。

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