ディスレクシアとは? 早期発見のためその特徴と二次障害を知っておこう!

ディスレクシアという言葉を聞いたことはありますか。発達障害にはいろいろな種類があり、特別支援学級の担任や特別支援について専門的な勉強をしてきた人でもない限り、全てを知る人は少ないと思います。「知的障害」「視覚障害」「聴覚障害」などよく知られているものから、近年になり、障害特性が分かってきたものもあります。今回紹介するのは学習障害(LD)の1つである「ディスレクシア」です。

見落とされやすい障害ですが、放置してしまうと二次障害を招く可能性もあります。今回は、「ディスレクシア」の特徴障害を持っている可能性がある場合の正しい対応についてお教えします。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

ディスレクシアは、『全体的な発達には遅れはないのに文字の読み書きに限定した困難があり、そのことによって学業不振が現れたり、二次的な学校不適応などが生じる疾患』と定義されています。脳機能の発達が未熟なことによって起こるものであり、日本人の7%がこの障害にあたっているとも言われています。しかし、実際に「ディスレクシア」と診断されるのは、7%の中の2%程度と言われており、周りや本人も気が付かずに生活していることのほうが多いのです。

参考文献:国立研究開発法人 國陸成育医療研究センター,https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/007.html,(参照2024-8-7)

 

「グレーゾーン」で見落とされがちなディスレクシア

前述したようにディスレクシアの診断は見落とされやすい傾向にあります。その理由は、「読み書き」に関わる障害なので乳幼児健診(1歳半検診)や3歳児検診では分からないためです。発達障害の多くは乳幼児健診(1歳半検診)で発見し、早期対応していくのが一般的ですが、ディスレクシアの場合、読み書きを学んで初めて分かるので、早くて幼稚園の後半、遅いと小学校2年生程度まで分からないまま過ごすことになります。

さらに、グレーゾーンと判断されることも見落とされる原因となっています。小学校入学前の就学時検診で発達障害であると判断されれば、特別支援学級や特別支援学級への入学・入級も可能ですが、知的な遅れはないため、「ちょっと言葉を話すのが難しいかも」「文字が上手く読めないぐらいかも」というゾーンにはまり、そのまま何の支援も受けられずに過ごしてしまうことがあります。そのため、特別な支援を受けることができない通常学級で数年間を過ごし、成長してから障害に気づきやすいのです。

小学校の低学年で顕著な差が出始める

ディスレクシアは、「読み書き」に関わる障害なので、顕著な差が出始めるのは、読み書きを習い始める「小学校1年生から2年生」になります。ディスレクシアには様々な症状がありますが、一例として次のようなことがあります。

【読字障害】

 〇単語または文節の変なところで区切って読んでしまう

 〇指で文字を押さえて一文字ずつしか読むことができない

 〇勝手読み(書いてあることを変える)をしてしまう

【書字障害】

 〇促音・撥音・二重母音を間違えてしまいやすい

 〇「こ」「い」や「ぬ」「め」といった似たような字を間違える

 〇逆さ文字、左右反転文字になる

このようなことを勉強するのは、小学校1年生から2年生にかけてになります。はじめのうちは、教員も子どもに知識がないため間違っていると思いやすく、保護者も「ちょっと理解が遅いだけ」と思って放置され、小2ぐらいになって周囲と大幅な差がついてから受診する傾向があります。したがって、発見が遅れやすく、後に記述する二次障害につながりやすくなります。

他にも次のような傾向がありますので、注意深く見守る必要があります。

【「読字障害」のその他の傾向】

 〇 行間の狭い文章や文節区切れのない文章(小1、小2の国語の教科書では文節で空欄がついていますが、一般の文章のように空欄のない文章)が上手く読めない

 〇 黙読で文字を追うことができない。(声に出すと読むことはできる)

 など

【「書字障害」のその他の傾向】

 〇 同音字「お」と「を」、「わ」と「は」の区別がなかなかできない

 〇 聞き取った言葉をそのまま文字にすることができない

小学校1~2年生のうちは、書くことが難しい児童も多いので気にならないかもしれませんが、中学年(小学校3,4年生)になっても、改善されていない場合には、ディスレクシアを疑い始めてもよい時期です。

 

ディスレクシアの可能性があると分かったらすべきこと

教員のあなたが「ディスレクシアかも」と気づいた際には、慎重な行動が必要です。「ディスレクシア」は診断名であり、専門家でなければ診断を下すことはできないため、安易に口にしないようにしましょう。保護者に診断名を言ったとしても分かってもらえない可能性もある上、発達障害を疑うことによって、保護者から反発を招く可能性もあります。

子どもに発達障害の疑いがあったとしても、ストレートに保護者に聞いてしまうのは、どんな障害であってもご法度ですが、そのまま放置してしまえば、後に紹介する二次障害を招く可能性もあるため、何らかの手を打たなければいけません。

まずは保護者から悩みを聞き出そう

はじめに、教員が保護者の悩みを聞き出すところからスタートしましょう。わざわざ電話をして聞くのではなく、懇談会で保護者が学校に来るとき、登下校の際などで保護者にお会いしたときなど何気ないときに「お子さんが困っていることはありませんか」「何か気になることはありませんか」といったような意図的な会話です。ここで保護者から、言葉に関すること、文字を書くことに不安感や困り感を持っているのであれば会話を広げるチャンスになります。教員が強制すると保護者はうろたえてしまいますので、寄り添う姿勢で子どもの日常を聞き出すと次の支援に「つなぎ」やすくなります。

小さいころからの適切な支援が大切 二次障害を防止しよう

ディスレクシアは学習障害の1つなので、適切な支援をしていけば改善することもできますし、他の人と何ら変わらない日常生活を送ることもできます。有名人で言えば、俳優のトム・クルーズや映画監督のスティーブン・スピルバーグもディスレクシアであることを公言しており、苦手な部分を周囲が補ってもらったり、自分の苦手なことを理解して、別の方法で情報を得ています。有名な例として、トム・クルーズは台本を読むことができないので、口頭で台詞を読んでもらい覚えることをしている。つまり耳から情報を得る能力を鍛え、文字を読む力を補っているそうです。

ディスレクシアが日常生活に影響を及ぼすのは周囲の支援などがなく、本人が孤立してしまうケースです。学力の不振で周りについていくことができず不登校になったり、できないことを周囲に指摘されて引きこもってしまったりするケースもあります。障害によって周りから疎外感や孤立感をもってしまう二次障害を防止するための取り組みを早い段階から始めていく必要があります。

おかしいなと思ったら学年や学校全体で意識をもって見守ろう

発達障害の疑いのある子どもの場合、幼稚園や保育園の段階でフィルターにかけられ、ある程度、発達特性が分かって小学校に入ってきます。一方で、ディスレクシアを含めた学習障害系のものは実際に学び始めてから発見されることのほうが多いです。

ちょっと発達に特性があるかも、学習が上手くいっていないかもと教員が感じたら「グレーゾーンなんだろうな」と放置するのではなく、その子のできないこと、できていることに目を向けることが大切です。そして、自分が見た情報だけでなく保護者や支援員など、その子に関わっているさまざまな大人の意見を聞きながら、支援策を考えることが大切です。多くの目で見守り、その子が成長していくのに必要な支援をできるだけ早く打てるようにしましょう。

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