新聞やテレビなどで頻繁に報道される教員の不祥事、1度不祥事を起してしまうと本人だけでなく学校や子どもたち、もちろん自分自身の家族まで巻き込むことになります。そして教員の不祥事の多くが、教員だから問題になるのではなく「社会人」としても問題になるものばかりです。一般企業に勤務していても問題になることですが、教員だからということでセンセーショナルに報じられることもあります。まずは、教員である前に「社会人」としての自覚をもって行動することが大切です。
教員に対する処分とは?
教員が刑事事件を起こしてしまうと事態の重大さによって処分が下ります。
- 「戒告」 文章または口頭で自分の将来に向けた注意をする
- 「減給」 給料の支給額が減額される
- 「停職」 一定期間職務にあたらせないようにする
- 「免職」 公務員としての資格を失う
上記の中で一番重たいのが免職(懲戒免職)であり、どの処分が下るかは、採用している自治体の教育委員会が判断します。
参考文献:教育職員免許法 (昭和二十四年五月三十一日法律第百四十七号),https://www.mext.go.jp/content/1388544_9_1.pdf(参照2023-9-5)
「飲酒運転」「わいせつ事案」は一発で免職の可能性あり
刑事事件といっても種類が非常に多く、交通事故や交通違反、痴漢や盗撮、薬物など様々なものがあります。刑事事件の中でも、教職員の不祥事としてメディア等で頻繁に取り上げられてしまうのが「わいせつ事案」です。これは職業柄非常に厳しい処罰が下されます。わいせつ事案の場合、刑事罰自体は、罰金刑になることが多く、罪の重さ・軽さでいえば軽い方になります。しかし「教員」という仕事柄、事実が認められれば懲戒免職になるのはほぼ確実です。逮捕されると教育委員会とは関係なく、警察から報道をされることになるので大きな問題になるのは間違いありません。
「わいせつ事案」と同様に職業柄、免職になる可能性が高いのが「飲酒運転」です。飲酒する日は運転しないのは当たり前ですが、翌日残っていたお酒で検挙されるということもあります。また、飲酒運転することを知っていながらお酒を進める「ほう助」に関しても処罰されます。教員の犯罪は世間から厳しい目で見られます。まずは、公務員であるという自覚を持ちましょう。
免職と免許の失効・取上げの違いとは?
教員の場合、不祥事を起こすと2つの処罰を受けることになります。1つ目が「公務員の身分に対する」懲戒処分、2つ目が、保有している教員免許に対する処罰です。2つの処分は別物ということを知っておきましょう。
教員免許法第10条には次のように記載されています
免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その免許状はその効力を失う。
・公立学校の教員であって懲戒免職の処分を受けたとき。
・公立学校の教員であって(ただし条件附採用期間中の職員と臨時的任用職員を除く)、勤務実績がよくない場合やその職に必要な適格性を欠くとして分限免職の処分を受けたとき。
参考文献:教育職員免許法(失効・取上げ関係条文),https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1342613.htm(参照2023-9-5)
したがって懲戒免職の処分になると教員免許は失効します。今、問題になっているのは「教員免許状が失効しても、禁錮以上の刑に処せられた場合は刑の執行後 10 年、懲戒免職処分の場合は失効後3年後に、再授与を受けることが可能」となっている点です。この理由は、教員免許の欠格事項が「禁固以上の刑に処された者」という刑法の規定に従っているためです。刑法では、刑の執行後10年を経過すると消滅することになっており、教員免許の再取得は理論上可能です。ただし、わいせつ案件で懲戒処分を受けたものが免許を再取得して再犯を犯したことが問題となり、再授与に関しては今後ルールが変わる可能性があります。
不祥事に該当するようなことでもまずは報告しよう
不祥事といっても大きなものから軽微なものまであります。軽微なものだからと言って報告をしないと後々大きな問題となる可能性もあるためすぐに報告するように心がけましょう。
ここでは教員が犯しやすい不祥事、そして不祥事を起こした場合にはどうするのか解説します。
交通事故を起こしてしまった際の報告とは?
大都市を除いて教員自身が運転して出勤する場所は多く、残念ながら交通事故は多くある案件です。交通事故を起こしてしまった場合の対応は、けがをした人の救助、警察への報告と同時に学校の管理職へも報告をします。特に勤務時間中の出張は、管理職へ報告をした後に教育委員会への報告も必要なケースもあります。土日などのプライベートな時間においても交通事故をした場合には、管理職へ報告をしておきましょう。
交通違反などの違反行為に関する報告とは?
2つ目に多い事案は交通違反です。「一旦停止無視」や「速度超過」など、多くの先生が一度はやってしまった違反ではないでしょうか。交通違反については、青切符(交通反則告知書)の違反であれば報告するまでの必要はありません。しかし、罰金刑、いわゆる赤切符(交通切符)を切られた違反に関しては管理職への報告が必要です。
罰金刑は一種の刑罰であり、裁判所で行政処分が下ります。このような重大な違反は、管理職を通して教育委員会への報告が必要です。刑罰を受けた時間は、勤務時間中であっても、プライベートの時間であっても関係ありません。
通常は教育委員会に報告が上がった後、何らかの処分が下されます。さすがに交通違反で「懲戒免職」というケースは、飲酒運転などの重大なケースに限られます。しかし、「戒告」や「減給」といった処分が出る可能性はあります。
「体罰」「わいせつ」と疑われる行為はやめよう!
3つ目は、子どもに対する体罰やわいせつ行為です。特に体罰に関しては非常に厳しくなっており、毎年、教員と保護者、学校の間でもめることも多くあります。教員として心がけなければいけないのは「体罰と疑われるようなこと」「わいせつを受け取られるようなこと」をしないことです。保護者から訴えが出ると必ず調べなければいけません。被害者と被疑者の認識が違えば、周囲の人を巻き込んで事実確認をしていくことになります。周囲の人が「体罰」「わいせつ」という表現をすると、管理職も教育委員会もしっかりとした証拠がない限り、教師を守るすべがなくなってしまいます。自分自身の身を守るためにも「疑われるようなことはない」という意識をもちましょう。
不祥事が発生してからの流れを知っておこう!
不祥事をしてしまった場合、まずは管理職へ報告をしましょう。報告を受けた管理職は所属している自治体の教育委員会に「非違行為」として報告をします。警察が介入している場合には、警察側からも情報の提供があり、調査が行われます。
不祥事がどのようなものであったのか調査が終了した段階で、教育委員会からの処分が下されることになります。交通違反の罰金刑であっても、捕まったらすぐに処分が出るというわけではなく、刑が確定(裁判所で行政処分が出た後)したのちに、教育委員会の処分が出ることになります。そのため、不祥事がいったん発生すると、処分まで終わるのに長い時間がかかります。周囲に多大な迷惑をかけることは知っておきましょう。
教員であることは一つのステイタス!周囲に多大な迷惑をかける意識を持とう
教員の身分は、公務員の法律で守られています。一方で、大きなステイタスであり、一度、不祥事を起こしてしまうと世間から厳しい目を向けられることになります。法律を犯すような犯罪行為だけでなく、普段の行動も教育公務員としてふさわしい行動をしましょう。不祥事を起こすと、自分自身の家族、受け持っている子どもたち、同じ職場の仲間など、多くの人に迷惑をかけることを肝に銘じておきましょう。