学校へのクレーム 正しい対処法は? 真摯な対応で信頼を得るチャンス

教員の皆さんは、クレームを受けたことはありますか?その内容は、学校や教員へのちょっとしたお願いや、厳しい叱責、はたまた無理難題な要求など、程度はさまざまだと思います。教員側としては「クレームの相手とうまく関係を築きたい」「多忙なため、クレームに極力時間を割きたくない」といった思いがあるでしょう。今回は、クレームを防ぐ方法や、クレームが入った際の円満な解決方法を紹介していきます。

保護者からのクレーム

学校にクレームを入れる相手の多くは保護者です。大切な我が子が日中、どのように学校生活を送っているのか全くわからない分、帰宅後にいつもと少し様子が違うだけでヒートアップしてしまうことがあるからです。クレーム内容のケースごとに対処法を見ていきましょう。

指導への不満

ルールを守らない、他人を傷つけるといった問題行動を起こした児童生徒は、教員から指導を受けることになります。しかし、指導を受けた児童生徒が帰宅後、保護者に今日あった出来事を伝える際に、教員や学校の意に沿わない伝え方をし、勘違いした保護者からクレームが入ってしまう場合があります。

なぜそのようなことが起きるのかというと、児童生徒が、指導内容に納得していない状態で帰宅してしまうからです。保護者に「こんなことで怒られた」「自分は悪くないのに」と不満を漏らし、保護者側も「確かにその指導はおかしいから学校側に言おう!」とクレームを入れるのです。

また、子どもたちが指導に納得できない理由としては、二つのケースが考えられます。

1つ目は、児童生徒が指導内容を曲解しているケース。この場合は、子どもたちが家庭でどんな話をしていたのかを保護者に聞いた上で、学校側が行った実際の指導を伝えると良いでしょう。教員が筋道を立てて分かりやすく説明すれば、大半の保護者は学校側の対応に納得してくれます。「家庭でも話してみます」と、味方に回ってもらえることが多いです。

2つ目は、教員が児童生徒に手を上げたり、暴言を吐いたりするなど、学校側の指導が不適切なケース。どんな理由があろうと、児童生徒を傷つける行為は許されません。速やかに事実を認めて謝罪をすべきですが、このケースは謝罪だけでは済まされない大問題です。当該教員はもちろん、管理職も教育委員会から処分を受けることになります。指導をする際、教員は感情的にならず、毅然とした態度で向き合うことを心がける必要があります。

成績に納得いかない

学期末、通知表配布後に「なぜこのような成績なのか」と、クレームが入るケースも多いです。児童生徒が「頑張ったのに、納得いく成績じゃなかった」と家庭で話し、保護者が我が子を思うあまりに「確認してあげたい」とクレームに走ってしまうことがあります。

成績に関する問い合わせがあった場合は、包み隠さず評価内容を伝えましょう。提出物の出来や、普段の授業態度など、具体的な評価を丁寧に伝えてください。また、児童生徒への労いを忘れず、「Aさんはいつもよく頑張っています。ですが、○○の観点から、このような成績になりました。次回は、××を頑張ると良いでしょう」といった言葉を伝えましょう。そうすれば保護者は「この先生は子供のことをよく見てくれているんだな」と納得してくれる場合が多いです。

しかし、上記の対応に納得してくれない保護者も稀にいます。このような場合、成績は絶対に覆してはいけません。なぜなら、その瞬間に評価の公平性が崩れてしまうからです。「文句を言ったら成績を上げてもらえた」という事実が残れば当該教師だけでなく、学校全体の信用をなくすことになります。そうならないためにも、普段の授業から評価材料を集め、成績評価について自信を持って説明できるようにしておきましょう。

連絡不足

児童生徒が学校で怪我をしたり、体調不良になったり、何らかのアクシデントが起こったとします。教員は実際の現場を目撃したり、本人または状況を知る他の子どもたちから話を聞いたりして、ほぼリアルタイムに情報を得ることができます。しかし、当然のことながら、保護者は学校でどんなことが起こっているのか、何が原因でそうなったのかを知ることができません。

教員側が「これくらい大丈夫でしょう」と勝手に判断し、保護者への連絡を疎かにすると、保護者側は当然、いつもと違う様子で帰宅してきた我が子を見て驚きます。状況を何も知らない保護者は、教員が思っている以上に事態を大きく捉えてしまいます。こうして、学校へのクレームに繋がってしまうのです。

連絡不足によるクレームは、教員の「この程度なら、まあいいか」「後から説明すればいい」といった怠慢が原因です。日々の学校生活の全てを報告する必要はありませんが、何かしらのアクシデントが起こった際には、保護者に真っ先に連絡するよう心がけましょう。

地域住民からのクレーム

子どもたちを優しく、時に厳しく見守ってくれているのが地域住民の方々です。子どもたちの安全や健やかな成長を思い、クレームを入れてくることもしばしばあり、学校側は真摯に対応しなければなりません。

登下校マナー

地域住民からのクレームで多いのは、登下校時のマナーについてです。登下校も学校の活動の一部であるため、学校側できちんと指導しなければなりません。

クレームの内容は、「子どもたちが横に並び、道をふさいで歩いていて危険だ」「すれ違い様に睨まれた」など。このようなクレームが入った場合、教員側は速やかに謝罪し、後日学校で指導する旨を伝えましょう。

その後、クレームの情報を頼りに児童生徒を特定し、本人たちに直接話します。直接謝罪に行かせるケースは稀であるため、きちんと指導し、同じ間違いを繰り返させないことで誠意を表しましょう。

また、該当する児童生徒を特定できなかった場合は「このような注意の連絡をいただいたので、気をつけてください」と、クラス全体に向けて伝えましょう。特定できた場合であっても、全員に隈なく伝えることで新たなクレームの防止に繋がります。

また、保護者・地域住民問わず、クレームを受けたら学年主任や管理職に必ず報告しましょう。ベテランの意見は助けになりますし、クレームの内容が学校や学年全体で向き合うべき問題である場合もあるからです。

「説明」と「謝罪」を忘れずに!

まだまだ成長途中の子どもたちの日常生活は、アクシデントがつきものです。したがって、クレームを全く無くすことは不可能と言えるでしょう。

クレームが来てしまった場合に、何よりも大切なことは「説明」することです。「なぜそのような結果になったのか」「どのような指導をしたのか・今後どのように指導していくのか」「教員側としてはどのように考えているのか」。一つ一つ噛み砕くことで、相手の理解が得やすくなります。

そして、学校・教員側に非があるのなら素直に「謝罪」しましょう。保護者が聞きたいのは「教師の言い訳」ではなく「謝罪の言葉」です。教員側が深く捉えていない問題であったとしても、保護者や児童、地域住民の方たちに不満を抱かせてしまったことについては謝罪の必要があります。しかし、成績に関することなど、教員として絶対に意見を曲げられない点に関しては、しっかりと説明し、理解を得られるよう努力する必要があります。

クレームというとネガティブな印象を持ってしまいがちですが、真摯な対応をすることで教師としての信頼を高めることができるのです。ピンチをチャンスに変えるため、冷静かつ誠実に対応することを心掛けましょう。

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