ICT化の落とし穴に注意! 教員も身につけたい「情報モラル」

国の「GIGAスクール構想」に伴い、近年、学習環境のICT化が急速に進んでいます。パソコンやタブレットをインターネットに接続させて行う授業が増えており、児童生徒だけでなく、指導する側の教員にも「情報モラル」が求められます。今回は、教員が気を付けるべきポイントを紹介していきます。

公私の情報を使い分ける

1つ目に気を付けたいのが、「公的な情報」と「私的な情報」の使い分けです。

公的な情報を私的な場所に持ち込んで起こるトラブルとしては、仕事のために児童生徒の個人的な情報を学校外に持ち出し、途中で盗まれたり紛失したりするケースが挙げられます。

最近は、クラウドでデータを管理する自治体も増えています。クラウドは、どこからでもアクセスできるのが利点ですが、アクセスするのに必要なIDやパスワードを他人に知られないように気をつけましょう。また、ログイン状態のままにしておくと、同じ端末を利用した第三者の目に公的な情報が触れてしまう可能性があります。公的な情報には、私的な情報以上のセキュリティー対策が必要です。

反対に、学校の端末や周辺機器、クラウド等を私的に利用するのも厳禁です。

教材研究などで必要に応じて利用する分には構いませんが、関係のないサイトへのアクセスや、不要なメッセージのやり取り、私的データの格納等の行為は許されません。このような行為が公になれば教員としての信用を無くしかねませんし、勤務時間中の私的利用であれば職務専念義務違反にもなります。児童生徒や、他の教員たちと共有しているツールを私的利用しているのであれば、プライベートを皆に晒してしまうリスクが高まるため、自分自身のためにも避けるべきでしょう。

情報が瞬時に拡散 内容確認を忘れずに

次に、インターネットの特性の一つである「即時性」についても紹介します。クリック一つで大勢の人に一斉に情報を発信することができ、メリットともデメリットとも取れます。緊急時の連絡に便利である一方、間違った情報を誤送信した場合も瞬く間に広まってしまいます。

誤情報を流してしまわないためには、「複数の教員によるチェック」が欠かせません。重要な情報を扱う場合は特に意識しましょう。

情報発信を担当する教員が自分一人だけだとしても、「文面や宛先を書く」→「別の教員に内容を確認してもらう」→「管理職から承認を受ける」というトリプルチェックを行いましょう。それぞれの教員が膨大な仕事を抱える中で、他の教員に確認を求めるのは気が引けるかもしれませんが、一人で業務を抱え込んで大きなミスを招く方が職場の迷惑になります。

ICT授業は「著作権」にも注意

一人一台端末を用いたインターネット学習や、新型コロナ下でのオンライン授業などが行われる中で、改めて気をつけたいのが「著作権」に関わる問題です。著作権の基準は、教育目的であれば一般的なものよりも緩く設定されていますが、「著作権者からの許諾」や「著作権者への補償金の支払い」の有無は、場合によって異なります。

「改正著作権法第35条運用指針」から、許諾や補償金の有無に関わるケースの一部を見ていきましょう。

参照:改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版).著作物の教育利用に関する関係者フォーラム.R2年12月.pp21-23

【著作権者の許諾や補償金の支払いを必要としないケース】

  • 単行本に掲載されているエッセイの小部分を授業で教員が板書する。
  • 新聞に掲載されている写真と記事をコピーした授業用のプレゼンテーション資料を作成する。
  • テレビの報道番組を録画し、その一部を授業で視聴する。

上記のケースは、ICT導入前の従来の授業でも行われており、イメージできる人は多いでしょう。一方、下記のようなICT授業を行う際も、許諾や補償金は不要です。

  • 板書したエッセイの小部分を、インターネットを介して2校の遠隔合同授業で同時中継し、大型画面に表示する。
  • 対面授業の様子を、インターネットを使って生徒の自宅に同時送信する。

【許諾不要だが、補償金の支払いが必要なケース】

ICT教育での著作権利用の円滑化を図るため、「授業目的公衆送信補償制度」が2018年5月に改正され、授業で必要と認められる範囲内であれば、教員が著作者の許諾無しに著作物を児童生徒の端末に送信したり、サーバにアップロードしたりできるようになりました。ただし、利用にあたり、教育機関の設置者(自治体等)が著作権者に補償金を支払うことが必要です。

  • 教科書に掲載されている寸劇を、教員が肉声で録音し、児童生徒のみがアクセス可能なクラウド・サーバにアップロードする。
  • 教科書等の出版物から図版や文章を抜き出してプレゼンテーションソフトにまとめ、対面での授業中にクラウド・サーバを通じて児童生徒のタブレット端末に送信する。
  • 授業で利用する教科書や新聞記事などの著作物を用いた教材を、児童生徒が学習できるようにクラウド・サーバにアップロードする。

【著作権者の許諾が必要なケース】(必要と認められる限度を超える、著作権者の利益を不当に害するケース)

  • 教員がドリルを児童に購入させず、学校や教員が持っているドリルを紙にコピーして児童に配布する。または、スキャンしてメールで送信する。
  • 授業で生徒に配布するため、小説の多くの部分をコピーする。または、小説の一部を授業の都度コピーし、学期末には多くの部分をコピーしてしまっている。
  • 教員が、紙の教科書の全ページまたは大部分をスキャンし、PDF版デジタル教科書を作成して児童生徒に配信する。
  • 学校のホームページ等に、パスワードをかけずに教科書などを解説する授業映像をアップロードし、児童生徒以外の誰でも見られる状態にしておく。

ICT化が進んだことによって、教員が気をつけるべき著作権の問題が増えています。デジタル化によって、情報量に富んだ授業を円滑に行えるようになりましたが、その反面、誰が作ったのかということを意識しないとトラブルに巻き込まれてしまう恐れがあるため、注意しましょう。

ICTを「正しく知って、正しく使う」

ICTの導入によって、授業や業務の形態が大きく変わり、若手・ベテラン問わず、思いがけないミスをしてしまいがちです。ちょっとした不注意や確認不足によって大小のミスを招くほか、操作やルールを知らなかったために、無自覚に大問題を引き起こしてしまうこともあります。子どもたちに「情報モラル」について教える前に、教員側がまず、利便性を「正しく知って、正しく使う」ことを実践しましょう。

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edulo編集部

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