教員のため資産運用!やらなきゃ損のiDeCoとは?

iDeCoをご存知ですか?

iDeCoは、個人型確定拠出年金(individual-type Defined Contribution pension plan)の愛称で「イデコ」と読みます。国民年金・厚生年金に上乗せして加入できる私的年金で、節税をしながら老後の資金づくりができる制度です。iDeCoは公的年金と違い、拠出額や運用方法はご自身で決めていきます。よくわからずに運用を始めてしまうとかえって損をしてしまう可能性もあるので、メリット・デメリットを理解してから始めましょう。

iDeCoの加入資格とは?

2017年1月から学校教職員などの共済組合加入者にもiDeCoに加入できるようになりました。教員は副業規定が厳しいですが、資産運用は認められているためiDeCoも活用できます。

加入資格

iDeCoの加入対象は20歳以上満65歳未満の全ての国民年金被保険者です。そのため、国民年金の保険料を免除・猶予されてる人や納めていない人は加入できません。毎月給与から社会保険料がひかれている人は問題ありませんが、共済に加入できない非常勤講師など、自身で国民年金を納付している人は払い忘れがないかを必ず確認してください。

また、学生の時に「国民年金を納めてなかったけど、加入できるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。国民年金を現在進行形で納めていればiDeCoを始められるため、過去の未納や免除・猶予期間については問われません。そのため、学生時代に「学生納付特例」による猶予、もしくは手続きをせず未納があった場合もiDeCoへの加入は可能です。ただし、国民年金を支払っていない期間があると将来の年金給付額は減ってしまいます。追納や60歳以降に国民年金の任意加入をすることで満額の給付を受け取ることができます。

参考文献:確定拠出年金法 第六十二条、年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和二年法律第四十号)、https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413AC0000000088_20220501_502AC0000000040(参照2023-03-31)

毎月の拠出額は?

次にiDeCoの最低拠出額上限額についてみていきます。最低拠出額については全ての加入者が同条件ですが、上限額については加入している国民年金の区分で分かれます。教員の場合は、公務員・私学共済に加入できるかどうかで変わってきますのでご注意ください。

最低拠出額は?

iDeCoは5000円から始めることができ、1000円単位で増やすことが可能です。最低金額については全ての加入者が同条件となります。課税口座の投資信託は100円から始められるので、その点ではiDeCoを始めるのは少し敷居が高いかもしれません。

上限額は国民年金の被保険者区分で異なる

共済加入者の場合(第2号被保険者)

厚生年金に加入している人は第2号被保険者に区分され、教職員の共済も2017年1月から同様に扱われるようになりました。公務員・私学共済に加入している場合、月額1万2000円(年額14万4000円)まで拠出できます。加入対象者の中では最も低い水準で、教員がiDeCoを運用する上での大きなデメリットですが、2024年12月からは上限額が2万円まで増額される予定です。

国民年金のみに加入している場合(第1号被保険者)

厚生年金に加入しておらず、配偶者の扶養にも入っていない場合は第1号被保険者に区分されます。共済に加入できない非常勤講師や会計年度任用職員が該当し、国民年金基金・付加保険料と合算して月額6万8000円(年額81万6000円)になるまで拠出することが可能です。

扶養内で働いている場合(第3号被保険者)

こちらは非常に珍しいケースになりますが、ごく短時間、もしくは、極めてコマ給が安い非常勤講師として勤務している場合に該当する人がいます。以下の条件を全て満たしている場合は、第3号被保険者に該当します。

  • 自身が公務員・私学共済に加入していない(第2号被保険者に該当しない)
  • 20歳以上60歳未満で、配偶者が第2号被保険者
  • 勤務校以外の所得を合計して年収が130万円未満

第3号被保険者は月額2万3000円(年額27万6000円)までが拠出上限になります。もともと、所得税や住民税のかからない範囲で働いてる場合にはiDeCoの所得控除による節税効果は得られません。

参考文献:確定拠出年金制度の概要、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/gaiyou.html、厚生労働省(参照2023-03-31)

iDeCoに加入するメリット

  • 拠出額が全額所得控除になる            
  • 運用益が全額非課税で再投資できる               
  • 給付時の税金が優遇される

拠出時・運用時・受取時の3つのタイミングで節税をうけられることがiDeCoの最大のメリットです。教員の給与は平均的な水準より高く、毎年昇給をすることが多いです。そして、年収が上がるほど、税金や社会保険料も高くなっていきます。教員ができる税金対策はかなり限られており、その中でも効果が大きいものの1つがiDeCoです。iDeCoを活用することでお得に老後の資産形成を進めることができます。

1月1日から12月31日までにiDeCoで拠出した全額がその年の控除になり、払い過ぎた所得税・住民税が年末調整や確定申告によって還付されます。iDeCoの節税の中でもこれが最も恩恵が大きい部分です。給与が不安定な職業の場合は控除額が余ってしまい、恩恵をあまりうけられないこともあります。対して、よほどのことがない限り毎年昇給する教員にとってiDeCoは馴染みやすい制度設計になっています。

年収や家族構成、その他控除の活用状況などによっても変わってきますが、おおよそ拠出額の15~30%ほどが還付されます。毎月1万2000円拠出していた場合、年間で2~5万円ほどの節税が可能です。仮に毎年3万円の節税が40年間続けば、なんと120万円もお得になります。早く始めるほど節税できる期間が増えるので、資金に余裕があれば若いうちから始めたいところです。

運用益が全額非課税で再投資できる

運用中に生じた利息と売却益がすべて非課税になります。長期間に渡る積立投資では、最初に目標としていた資産配分の比率が徐々に崩れていきます。値上がりして比率の増えた資産を売却し、値下がりして比率の減った資産を購入することで最適な資産バランスを保っていくことが重要です。一般的な課税口座では売却時に税金がかかってしまいますが、iDeCoであれば資産を目減りさせることなく資産の買い換え(スイッチング)ができます。商品選びに失敗しても、非課税で別の商品に買い換えることができるので、iDeCoは投資初心者にピッタリです。

給付時の税金が優遇される

iDeCoの受け取り方は退職時に一括で受け取る一時金方式と一定期間に分割で受け取る年金形式一時金と年金受け取りの併用の3種類から選ぶことが可能です。一時金方式の場合は「退職所得控除」、年金受け取りの場合は「公的年金等控除」の対象となります。通常、投資の利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoの場合は控除額を超えた部分にのみ課税されます。

ただし、これらの控除はiDeCo独自の制度ではないので、その他の退職金や公的年金の給付と合わせるとあまり控除の枠が残らないこともあります。教員の定年退職金も決してやすくはありません。しっかりと計算して出口戦略を立てましょう。

iDeCoのデメリットと対策方法

特段、教員だからといってiDeCoでの運用に大きなリスクが生じることはありません。しかし、iDeCoあくまでも資産運用になるので、一般的な投資のリスクは伴います。しっかりと把握して対策をあらかじめ立てましょう。

原則60歳まで引き出せない

公的年金と同様に最短で60歳になるまでは引き出すことができません。手元資金が不足しないよう、ライフプランを立てて人生でいつ大きなお金を使うのか把握しておくのが効果的です。特に正規雇用の教員は安定した給与体系で計画が立てやすい職業なので、ライフプランも非常に立てやすいです。

結婚やこどもの教育費・住宅購入など現役の間に使う資金の運用は、引き出しが自由な「つみたてNISA」などの活用を考えてみましょう。

また、無理やり上限額まで拠出して、日々の家計が苦しくなってしまっても本末転倒です。余裕のある範囲で拠出額を決めましょう。仮に途中で拠出が難しくなった場合は、拠出額を減らしたり、一時中断することも可能です。

手数料がかかる

加入手数料(初回のみ2,829円)・毎月の口座管理手数料(金融機関によって異なる)・受取時の給付手数料(1回ごと440円)の3種類の手数料がかかります。

毎月の口座管理手数料は金融機関により171円~611円の範囲で、最大440円の差が生じます。仮に30年間積み立てた場合、15万8400円もの違いが出るので金融機関選びが重要になってきます。

加えて、運用する金融商品に投資信託を選んだ場合は運用管理費用(信託報酬)が毎月発生します。同じインデックスに連動する商品であっても信託報酬に違いが生じるので、目論見書をチェックしましょう。

教員の労働時間は長く、リサーチする時間を取るのは難しいかもしれません。しかし、小さな手数料であっても長年積み重ねることによって大きな差が生じます。運用を始めるまで短い期間だけなので、頑張って調べましょう。

元本割れのリスクがある

iDeCoで運用できる金融商品は定期預金や保険商品などの「元本確保型」と投資信託などの「価格変動型」があります。「価格変動型」は元本を増やせる可能性がありますが、逆に受取額が拠出額を下回る可能性もあります。長期・積立・分散の3つの原則を守ることで、元本割れのリスクを極力減らすことはできます。給与体系が安定している教員は長期・積立iDeCo投資対象の地域・資産の分散を意識しましょう。

iDeCoは教員にオススメの資産形成

今回はiDeCoの加入資格とメリット・デメリットについて解説しました。毎年上昇していく正規雇用の教員の給与体系は計画が立てやすく、iDeCoのような毎月定額の積立投資と相性が非常に良いです。また、数少ない節税の手段にもなります。非正規雇用の教員は共済に加入できないので老後にもらえる年金が少なくなりやすいです。自分で老後資金を準備するために活用しましょう。

iDeCoは一度仕組みを作ってしまえば、ひたすら積み立てていくだけなので長時間働く学校教員でも続けやすい資産運用になります。株式のデイトレードやスイングトレードなど手間とストレスのかかる投資は多忙な教員の労働環境ではなかなか続けにくいのが実情です。

積み立て投資は長く続けるほどリスクが小さくなっていくので、まずは最低額の5000円からまずは始めて、勉強しながら資産形成を進めてみるのも良いのではないでしょうか。早く始めるほど節税ができる期間が長くなるので、まだ資産形成をはじめていない人は、まずはiDeCoから始めるのがおすすめです。

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