補助教材の使い方や選定方法とは?オンライン授業での使用上の注意点を解説!

補助教材とは児童生徒が使用する教科用図書以外のものを指します。具体的には

  • 副読本(資料集や地域教材を取り扱った本など)
  • 年鑑や雑誌
  • 児童生徒が使うPCソフトやアプリ

などが当てはまり、学校で授業をするにあたって教科書と同様に欠かせないものとなっています。

学校教育法でも第34条2項に『有益適切なものは、これを使用することができる』と補助教材に関して定められています。

参考文献:教科書検定に関する根拠規定等,文部科学省,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/003/gijiroku/08052214/001/001.htm(参照2023-9-6)

学校で利用する補助教材の選定と申請

補助教材として実際の教育現場では、どのようなものが使われているのでしょうか。選定の方法に関しては学年で決めることが多くなっており、ドリル教材や資料集など1年間を通して使う可能性の高いものは、年度の最初に学年会や教科部会などで決定します。

補助教材を学年で話し合う際には次のことに注意しましょう

〇児童制度の実態に合った教材であること(教材の量や使用時間)

〇授業で必ず利用するものであること

〇教材を利用する学年の前年度や前年度の同一学年が選択した教材の価格から大きく逸脱しないこと

上記のようなことを意識して補助教材を決めます。学年や教科部会で決まったら、校長の承認を得るための委員会にかけて承諾を得ます。最終的に補助教材の認定は教育委員会が実施するため、教育委員会に申請を出し、承認を得てから発注することができます。

参考文献:現行制度における教材の取り扱いについて,文部科学省,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/110/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/12/24/1365538_3.pdf(参照2023-9-7)

学年で決めることができるので事前の見積もりが大切

補助教材は学年や教科で決めることができますが、年度初めは時間がありません。学年が決まり、学校と教育委員会の承認を得ないと発注ができません。4月1日に学年が決まり、10日ごろから授業が始まることを考えると、補助教材を準備する期間は短いです。そこで学年主任や教科主任が中心となり、前年度の記録、本年度の年間予定などを考慮して、概ねどんな教材を選択するのか方向性を決めておく必要があります。

補助教材を利用するときの注意点

では、学年や教科で補助教材を選択するときにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。ポイントを紹介します。

はじめに考えておかなければいけないのは補助教材は有料である点です。教科書は無償措置法によって公立学校では無料で支給されていますが、補助教材は、児童生徒の保護者から徴収したお金によって購入をします。そのため、教材の取り扱いを間違えると大きな問題になります。

例えば、「未消化問題」があります。最近では学校でのテストに業者テストを導入する学校も増えていますが、全てを実施することが基本的に求められます。学習者用のドリルも未消化のまま学年が終わってはいけません。図工や美術などで購入する教材も、購入したのに使わずに子どもが持って帰るというのは、保護者からクレームが来る元になります。

お金にまつわる話で言えば、過去との比較も大切です。前年度の同じ学年の教材費が年間5千円だったのに、次の年になって1万円に上がるようなことがあれば、保護者は疑問を感じます。場合によっては、教員がお金の上がった理由について説明をする必要があります。補助教材は、保護者がお金を支払っています。値段が上がることに抵抗感がない保護者もいれば、神経質な保護者もいます。補助教材は、子ども(保護者)負担だという意識を大切にしましょう。

教育目的であっても著作者の利益を害することはだめ

補助教材を利用するときに、安易なコピーは厳禁です。著作権法には例外規定があり、「学校その他の教育機関における複製に関する例外(35条)」に定められています。ここには

①授業の教材として使う 

かつ

②営利を目的としない教育機関であること

③授業を担当する教員やその授業を受ける児童生徒がコピーすること

④本人(教員または、児童生徒)の授業で使用すること

⑤既に公表された著作物であること

⑥その著作物の種類や用途から判断して、著作権者の利益を不当に害しないこと

このようなことが定められています。一見すると、学校や教員が購入した補助教材をコピーして利用してもよいように感じてしまいますが実際には利用はできません

なぜなら「⑥その著作物の種類や用途から判断して、著作権者の利益を不当に害しないこと」を満たしていないからです。ドリルなどの教材は出版社または執筆者が保有しています。お金を払わずに1冊のみ購入したものをコピーして配付するのは、著作者の利益を害することになります。著作者や出版社が「コピー可能」と許可している著作物以外をコピーするのは著作権に関わるトラブルになるので注意が必要です。

参考文献:改正著作権法第35条運用指針,https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/92223601_11.pdf(参照2023-9-6)

オンラインでの利用の際の注意点とは?

コロナ禍に伴う休校や一人一台端末の導入で広がっている「オンライン授業」でも補助教材を利用する際には注意が必要です。

まず、オンライン授業をする際、教科書を利用した場合でも「授業目的公衆送信補償金制度」というルールに基づいて、自治体や学校が補償金を支払う必要があります。さらに補助教材に関しては、補助教材の出版社または販売元にオンライン授業で利用できるかどうかを個別に確認する必要があります。

このように厳しいルールになっているのは「インターネットで授業を行う」、「オンラインで動画配信をする」ということは不特定多数の人に見られる可能性があるためです。仮に配信を閲覧する人が「限定」、ドライブでのデータ共有であっても関係ありません。

オンライン授業ができることで補助教材でトラブルになった事例を紹介します。

【事例1】

 学校の宿題として配付していた算数のプリントをコピーして子どもに配布し、オンライン授業を実施した。

【問題点】

 配付した算数プリントの元は学校でまとめて購入したものであり、コピーが可能であると書いてあったもののオンラインでの利用は想定していなかった。

【事例2】

 音楽のリコーダー練習で、補助教材であるリコーダー練習帳を使い練習した。

【問題点】

 補助教材利用の許可を出版社から得ていなかった。児童の画面には教師のリコーダー練習帳が画面共有で表示されていた。

このようにオンライン授業で補助教材を利用するのは法律的にもグレーな部分が多く注意が必要です。

参考文献:授業目的公衆送信補償金制度とは,https://sartras.or.jp/seido/(参照2023-9-6)

テストに出題する際の注意点とは?

最後にテスト作成に関わる問題です。テスト問題を自作する人の中には、補助教材で解いた問題を出題する教員もいますが、問題や図表などをそのまま利用するのは著作権上問題になります。

経験の浅い先生の中には、テストの作成に時間がかかるので、問題集の問題をそのまま貼り付けたようなテストを作るケースもありますが、著作権上問題になるので注意しましょう。教科書に掲載されている図表と補助教材の図表は、意味が違うことを理解しておきましょう。

子どもの成長に最も良いものを選定しよう

補助教材を選定するときに大切なのは自分の学年の子どもに最も良いものを選ぶことです。過重になってもいけませんし、不足してもいけません。では、どうしたら良いものを選べるかというと

・前年のデータを確認する

・年間計画を立てる

この2つになります。教員の仕事は先読みをすることがとても大切ですが、補助教材の選択にも大きな影響を及ぼします。4月の子どもの顔も見ていない状況で補助教材選定計画を立てることができるか、できないかは教師力の見せ場とも言えます。

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