担任教員がいますぐできる時短術!

小学校の学級担任だと、1日の大半の時間をクラスの子どもたちと過ごします。教科担任制とは言え中学校でも、クラスの子どもたちのために割く時間は大きいです。時短と聞くと、手を抜いているように感じてしまう同僚や保護者もいるかもしれません。しかし、そうではないのです。教師が全てやってあげてしまう姿勢は、実は子どもの学びを阻害している可能性も。子どもたちに任せたり、一緒に取り組むことで、教員の負担を軽減する効果とともに、子どもたちの力を伸ばすチャンスにもなりうるのです。

生活場面編

まずは、子どもたちと過ごす生活場面から時短できるポイントはないかチェックしていきましょう。放課後になると、担任1人でやらなければならない業務も、子どもたちと手分けをしたり、協力したりすれば、あっという間に片付くということもあります。また、それが子どもたちの力を育てることにつながるということもあるのです。

子どもに任せる場面を増やす

子どもは、「任せてもらう」「大人と同様に扱ってもらう」ことで、自主性や意欲が高まります。例えば、学級活動でのレクを例にしてみましょう。教師が学級レクを企画したり、準備したりする。この場合、内容を考える・チーム分けをする・用具の準備をする。これら全てが教員の業務になってしまいます。加えて、子どもたちの視点に立つと、ある意味教師に押し付けられたレクをすることになるのです。そこで、このレクを子どもたちに任せてみましょう。まず、話し合いが必要になります。内容やチームの分け方を検討することで、話し合うスキルや協調性が高まります。しかも、内容はレクですからみんな真剣です。続いて、実行委員を決めます。用具の準備をする係・会の進行をする係・準備運動に審判、などさまざまな場面で子どもたちを活躍させることができます。そして、それらレクに必要な分担を吟味することや自分の役割を全うすることは、企画・運営の基礎・基本になります。自分たちで企画した内容のレクを、運営まで子どもたち自身が行うこと。教師主体にしてしまうと、その学びの場が失われてしまうのです。

宿題・提出物チェックのシステム化

放課後に宿題や提出物をいちいち名簿でチェックしている先生もいますよね。出していない子を確認する、あとでその子に伝える、と二度手間になってしまい、時間がかかってしまいます。指導のタイミングが遅れてしまうことも。朝、登校した順に宿題や提出物を出すシステムにしていると、チェックに時間がかかってしまいます。朝の会や先生の話の中で集めることにしておき、持っていない子をチェックしたのちに、出席番号ごと10人ずつ集めると、声かけや指導も即時対応ができます。出されたものも出席番号順になるので、内容の確認や処理作業の場面でも便利です。宿題などのプリント類の右上に、出席番号を書くよう習慣づけさせておくと、子どもたちが集める時やあとから提出した子の分を該当の番号に入れる時もスムーズです。

保護者との関係も実は重要

一見、時短と関係なさそうな保護者との信頼関係。保護者対応が入ると、時間も必要になる上に、精神的にも気を遣う場面が増えます。複数の子どもへの聞き取りなどが入った際には、さらにその対応時間も必要となります。気になったことやトラブルがあった際には、大きな問題に発展する前に保護者にこまめに連絡したり、連携して対応にあたったりして、日頃から信頼関係を築いておくことが大切です。保護者からのクレームの多くは「うちの子のことをちゃんと見てくれていない」「うちの子の気持ちをわかってくれていない」という不満が根本的な原因になっています。信頼を勝ち取るためには「先生は、ちゃんとうちの子を見ていてくれている」という安心感を持ってもらうことが大切です。日頃から子どもたち1人ひとりの生活や学習の様子をよく観察し、声をかけることで、困っている子・悩んでいる子に早期対応できるようにしましょう。これは、いかに時短したくても教員として手を抜いてはいけない姿勢の1つです。

授業編

教員の残業代に関する訴訟についてのニュースが話題になったことがありました。中でも、とりわけ現場の教員の波紋を呼んだのは​​、翌日の授業準備は1コマ5分相当とする司法の判断です。インターネット上では、この判決内容に対して現場の教員からの批判が多数寄せられました。それだけ実際は、授業準備に割かれる時間に苦しんでいるということです。今回は、負担が軽くなる時短術を紹介したいと思います。

参考文献:教員訴訟 東京高裁判決に疑問の声 「教師の仕事の核は授業」,中日新聞,2022-10-7,(参照2022-11-21)

授業パターンを分析

教材研究や授業準備は時間をかけようと思えばいくらでもかけることができます。時短を目指す場合は、まずは1時間の授業のねらいをどこに据えるかという点にポイントを絞って教材研究しましょう。ねらい・主発問・学習活動が定まれば、おのずと板書計画や導入なども決まってきます。授業の骨組みをつくるのです。ここまでは、指導書や教育書、教育雑誌なども参考にできます。

あとは味付けです。子どもたちはどのような授業なら意欲的に取り組むのか。発達段階やその学級の子どもたち次第で、その方法は様々。受け持った子どもたちが意欲的に取り組んだ、高い学習成果を挙げた授業、その傾向を分析してみましょう。教材やワークシート、導入や学習活動などの授業展開など、何かいつもとは違う点があるはずです。その分析した結果を、他の授業にも取り入れられないか考えます。これが、味付けの部分になります。味付けのバリエーションが増えれば、授業準備も時短していくことができます。授業は、準備に時間をかければかけるほど、よい授業になるというわけでもありません。上手にいった授業パターンを分析し、バリエーションを増やし、それらを活用していくことで時短を目指しましょう。

汎用性の高いワークシート類の作成

国語や算数のノート、理科の観察用紙などさまざまな種類のワークシートを用意し、その都度印刷するのは大変なものです。いちいち白紙のワードから図形やテキストボックスを挿入して、大きさを整えたり、レイアウトを考えたりすると時間がかかってしまいます。また、授業の時になってノートを忘れた子がいたり、2枚目を使う子がいたりと、意外と必要なペーパー類。5mmの方眼用紙が汎用性も高く便利です。一度A4サイズでフォーマットを作成します。ワークシートを作成する場合は、上から課題などの文言を貼り付けるだけで、子どもたちは空いているマスの箇所に考えを記入することができます。マスのみのまま、多めに刷っておけば、縦書き・横書きいずれも対応でき、表や図も書き込みやすいので、ノートとしても活用できます。ノートを集めたはいいものの忙しくてチェックが追いつかない、でも授業があるから返さなきゃ、という時もありますよね。そんな時にも、どの教科でも使えるノートの代わりとして配布できて便利です。低学年なら、もう少し大きいマスにした方が書きやすいかもしれません。

こまめに成績処理

成績処理の時期はどうしても残業時間が長くなりがちです。1単元・1行事終えるごとに、毎度子どもの姿や学習成果物を記録していくと、その蓄積で成績処理がぐっと楽になります。テストの結果はExcelに入力しておく、理科のスケッチは出席番号順にPDF化しておく。子どもがテストを受けている時間などのちょっとした隙間時間に目を通して、評価ごとに色分けして丸シールなどを貼っておくと、あとで見返した際にわかりやすく便利です。学級や運動会での係や分担名、がんばったことや、総合の時間に学んでいたことなどを記録しておくとそのまま所見や指導要録の文言に生かすことができます。

PC使い方編

毎日使うPCの使い方を変えることで、作業にかかる時間をぐっと減らすことができます。毎日のことだからこそ、より快適に、より便利に使えるよう、自分オリジナルにカスタマイズしていきましょう。時間だけではなく、作業ストレスを減らす効果もあります。

お名前登録・掲示物のフォーマット作成

PCの単語登録機能を使えば、一度の変換で児童の名前を漢字表記にすることができます。これを1年のはじめに行っておくと大変便利です。例えば、ひらがなで「やまだ たろう」と打つと、「山田 太郎」と変換できるようになります。特に近年では、名前に使われる漢字も多様になっていて、PCで変換できない場合も多いです。席替え・校外学習のバスの座席表作り、学級通信など正しい漢字の名前表記が必要となる場面は意外と多いもの。いちいち学級名簿からコピーして貼り付けていると、いくつもシートを開いて行き来する必要があり、時間も手間もかかります。

また、掲示物のフォーマットは1度作成し、上書きして使い回すのと時短になります。「チューリップの観察」など、子どもの学習成果物とともに貼る題字なども、色味や添えるイラストを変えることで使い回しが効きます。また掃除当番表、係活動表なども、最初は「手作りの方が楽かも」とめんどうに感じても、一度PC上でフォーマット化してしまえば、来年度も使うことができます。専用のフォーマット化されたデータがインターネット上でもダウンロードできるので、それらを活用するのも有効です。

TODOリストでスケジュール管理

日々忙しい教員生活では、スケジュール管理も必須です。特に、全校に関わる提出物の締め切りや学校行事に関する書類などは締め切りを落とせません。ホワイトボードや指導案簿などももちろん有効ですが、意識的に開かないとつい忘れてしまったり、書いたものを消したり、追加したりと意外と手間がかかります。PCのデスクトップの付箋機能を利用するとスケジュール管理がぐっと楽に。毎日必ず出勤時、休み時間、放課後等に開くので、仕事漏れを防ぎます。仕事のしめきりごとに並び替えたり、ジャンルごとに色分けしたりすることで、優先順も把握できます。タスク完了したら消したり、新しく追加したりと編集も簡単です。

フォルダ分けで過去のデータを活用

PC内を整理することで資料を探したり、教材を作成したりする時間の短縮に。指定のフォルダに入れる、というちょっとした手間を惜しまないだけで、今日の自分の実践が今後の財産となります。「学年」→「教科」→「単元」と階層ごとにフォルダ名をつけておくと、次にその学年を受け持った時やデータを編集して使いまわしたい時に、見返す場所がわかりやすく便利です。また、ファイル名も「(教材名)ワークシート」「(教材名)資料」「(教材名)指導案」とつけておくと、フォルダ内で検索をかけやすくなります。その他、賞状や音読カードなどの学習カード類、所見の言い回しなどの全学年共通で使えるシートなども、専用のフォルダを作っておくと、その都度学年を遡ってフォルダ内を探す手間削減に。指導案や週案など使う頻度の高いものや学校ごとに指定の書式があるものは、フォーマットをデスクトップに用意しておきましょう。

ゆとりのある教員生活を

今回は、学級担任の働き方についてご紹介しました。近年では教員の離職率も話題になっています。その忙しさや残業時間の長さから、ブラック企業扱いされることもしばしばあります。しかし、教員は、未来を担う子どもを育てる、素敵な職業です。持続可能な働き方を目指して、活用できるものはどんどん積極的に取り入れ、効率アップを目指しましょう。教員の雰囲気は、その学級の雰囲気へと伝染します。時間にも、精神的にもゆとりがある学級担任でいることは、学級経営にとっても実は重要なことなのです。

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