【教員採用試験対策】2024年の採用試験出題される教育時事

これから教職を目指す学生にとって、夏に行われる「教員採用試験」は乗り越えなければいけない山です。すでに試験に向けて勉強を始めている人も多いと思いますが、近年の教員採用試験はテストの成績よりも人物評価を重視する傾向があります。

採用試験で問われる力も単に知識を問う問題ではなく、教育に対する考え方、マネジメント能力などが問われる内容となり、試験方法にも面接や小論文、グループディスカッションなどが取り入れられています。したがって受験生は、自分の考え方を持つことができるようにするため、2023年から2024年にかけての教育の話題、特に変化のあった話題をつかんでおきましょう。

12年ぶりに改訂された「生徒指導提要」

ここ1年の教育界で大きく改訂されたものが「生徒指導提要」です。学校における生徒指導の原則になる文書で、12年ぶりに改訂されました。いじめや不登校の増加など今の教育事情を受けて変わった部分が大きいので、特に3つのポイントを押さえておきましょう。

①積極的な生徒指導の充実

1つ目が積極的な生徒指導の充実です。これまでの生徒指導は目前の問題に対応することが中心でしたが、新しい生徒指導提要では『成長を促す指導等(発達支持的生徒指導、課題未然防止教育)の積極的な生徒指導』の部分が盛り込まれました。つまり、学校や子どもが落ち着いている時から声掛け、児童生徒観察、教育相談体制を行い、問題行動をする前の段階で未然に自ら気づき問題を解決する子どもの育成という部分が重視されています。

②個別の重要課題を取り巻く社会環境の変化の反映

2つ目が社会環境の変化の反映です。特に「性的マイノリティ」への対応や多様な背景(発達障害・支援を要する家庭状況など)をもつ児童生徒への理解といったものが新しく追加されています。自分担当するクラスにこうした児童生徒がいた場合にどう対応するのかをあらかじめ考えておくのが良いでしょう。

③学習指導要領やチーム学校等の考え方の反映

3つ目が生徒指導と学習指導要領との関係性、また関係機関と協力した生徒指導への対応も加わりました。スクールロイヤーやスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーといった学校外の人材を活用し、問題に対応していくのかが新しく付け加えられています。

・参考文献:生徒指導提要(改訂版),https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm,文部科学省(初等中等教育局児童生徒課),(参照2023-05-12)

依然として増え続ける不登校・いじめ案件

今日的な課題として挙がり続けているのが「いじめ」「不登校」対策です。どちらも年々増加傾向にあります。ここで間違えていけないのは「増えているから問題がある」ということではありません。教員が積極的に認知をしているから増えているのも事実です。文部科学省は積極的な認知を促しており、認知が多いほど子どもの様子をよく見ていると評価する部分もあります。

また、教員として考えなければいけないのは「未然防止」です。いじめや不登校を生まないきめ細かな学習指導、学級運営が求められます。まずは、いじめを生まない学級作りをするにはどうすればよいのか、道徳教育の充実、ピアサポート活動などいろいろな手法があることを知っておきましょう。そして、事案が発生した場合には、速やかに校内で連携体制を作り、チームとして対応することを覚えておきましょう。

・参考文献:いじめの状況及び 文部科学省の取組について,https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_ijime_boushi_kaigi/dai1/siryou2-1.pdf, 2023年11月24日,文部科学省 初等中等教育局(参照2023-05-12)

教員免許更新制度の廃止

3つ目の大きな話題が教員免許更新制度の廃止です。令和4年7月にこれまで必須となっていた教員免許更新制度がなくなりました。これだけでも大きなニュースですが、文部科学省は発展的な解消として教師自身が力量を向上していくことを求めています。教育公務員特例法にも『第21条 教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。』と示しています。つまり、教員として採用された後、自分自身がどんな能力を伸ばしていきたいのか、活かせる強みは何なのかを受験者自身が理解しておく必要があります。そして、自身の力量を向上させるためにどんな方法があるのか考えておくことが大切です。

参考文献:教育公務員特例法,https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kenshu/012.htm,総合教育政策局教育人材政策課教職員研修係,(参照2023-05-12)

特別支援教育に対する理解と合理的配慮

次にポイントになるのは特別支援教育に関する理解です。特別支援教育というと特別支援に関する採用を受ける人だけに関わると思うかもしれませんが、それは違います。最近は「発達障害」や「グレーゾーン」という言葉が注目され、通常学級にも発達障害をもつ子どもがいる可能性は高いです。この点は生徒指導提要でも明記されているため、教員は、特別支援教育に対する理解と知識をもっていることが求められます。

また、合理的配慮やユニバーサルデザインというのも特別支援教育に絡んでトレンドワードになっています。特別な支援を要する子どもたちにどのように接していくのか、注意点や環境面で配慮していかなければいけない点などを理解しておきましょう。

・参考文献:特別支援教育について 新着情報等最近の動き,https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm,文部科学省初等中等教育局特別支援教育課(参照2023-05-12)

ICT機器の活用を伴う「主体的対話的で深い学び」

5つ目のポイントはICT機器に関する話題です。GIGAスクール構想が推進され、多くの学校で「一人一台端末」が実現しました。現場では、ICT端末を使う段階から活用する段階に入っています。そこで採用試験においても「パソコンやタブレットを使う」という技能がアピール材料になるのではなく、どのように教科の中で活用できるのかというのがポイントになります。

専門教科をもっているのであれば、教科の授業のどこでICTを利用すると効果があるのか予め考えておきましょう。その際には

・授業の目的(めあて)にあった利用になるのか

・ICTを利用した場合としない場合でどのような違いがあるのか

・ICTを使う際にどんなアプリを利用するのか

こうした視点で考えておくとよいです。実験や実習をICTで代用するのは、時間短縮や効率が良いと思っているかもしれませんが「実際に体験する」ということが重視されている目標の場合、目標達成ができません。

学校では「主体的・対話的で深い学び」が重視されています。ICTを利用することで児童生徒が主体的に学ぶことができる場面を作り出すことができるよう授業プランを作っておきましょう。それがアピール材料になります。

・参考文献:主体的・対話的で深い学びの実現に向けた ICT活用の在り方と質的評価,https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/11/1400884_3_1.pdf,文部科学省,(参照2023-05-12)

採用試験では人物評価重視 最新の教育ニュースは押さえよう

近年、教員の不人気もあって採用試験の倍率が下がっています。そんな中、各自治体ではよりよい人材の確保を目指してさまざまな採用方法を行っています。面接や集団討論で、最近の教育に関連する話題は昔から多くありますが、傾向は決まっています。あとは、出題されたときに教育に関するニュースを「知っている・知らない」だけでなく、自分ならどうするのか、何ができるのかという意識をもっていることは面接官が人物評価をする上で大切になります。普段から学生同士、教員仲間同士で多角的な議論をしていると試験の際に役立ちます。

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