教員採用試験必出!知っておくべき話題の教育用語6選

教員採用試験に向けて特に知っておきたい最新の教育用語をご紹介します。今回紹介する6つの教育用語は、ここ1〜2年で教育現場でもよく耳にする話題の用語です。試験にも出題される可能性も高いので、しっかりと意味を理解しておきましょう。

教員採用試験に向けて知っておきたい今話題の教育用語

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

①カリキュラム・デザイン
カリキュラム・デザインは、学習指導要領を基にして学校の教育目標や子どもの実態に合わせて学習カリキュラムを作り変えていくことを意味します。

多くの学校では、「教育課程」に基づいて日々の授業時数や進度を決めています。教育課程は、学習指導要領や教科書の単元計画に従って自治体がベースを作っていることが多いのですが、本来は「学校が教育課程を独自に作り学校独自性を打ち出せるもの」です。(カリキュラムの決定権は学校長の裁量)

そこで従来の1年間を縦に見通した「教育課程」に、教科横断的な横の視点や地域性を考慮した指導内容を取り入れ、学校独自に教育課程を作り上げていくことを「カリキュラム・デザイン」といいます。

②デジタル・シティズンシップ教育
GIGAスクール構想が推進され、子どもたちが一人一台端末を利用して学びをする機会が増えました。その中で生まれてきた教育が「デジタル・シティズンシップ教育」です。

この教育は、デジタル社会の中で子ども自身が積極的に、さらに責任を持って行動することを教える教育のことを指しています。

従来の「情報モラル教育」と似ていますが、情報モラル教育では、デジタルのリスクを学び自分がどう行動するかという「抑制」に近い教育でした。デジタル・シティズンシップ教育では、デジタル社会の中をどうしたら「よりよく生きていくことができるか」を考え、必要な知識や能力を身に付けていく教育をします。そうすることでデジタル社会を自立的に生きていく姿を目指しています。

③アントレプレナーシップ教育
「アントレプレナーシップ教育」に関しては、あまり聞きなれない方も多いのでないでしょうか。「Youtuber」という言葉が生まれて、注目されるようになった言葉です。そのまま翻訳すると「起業教育」に近い意味合いになります。文部科学省では「急激な社会変化を受容し、新たな価値を生み出していく精神の教育」を指しています。

例えば、時代の変化に合わせて新しい商品を生み出す、新しい枠組みを作る。動画配信で収入を得るYoutuberやインフルエンサーなどは、まさに自分自身に価値を生み出してきた人たちになります。

これからは、時代の変化に伴って生まれてきた問題に目を付け、自分がどうすれば問題を解決することができるのかを考える力が求められており、創造力や協働力などの資質を身に付けていくことが大切になります。

④ウェルビーイング教育

多くの自治体の教育目標や指針の中で、最近よく使われている言葉が「ウェルビーインング」です。「ウェルビーイング」の意味は非常に広いのですが、令和5年に策定された「教育振興基本計画」の中で、『身体的・精神的・社会的に良い状態にあることをいい、短期的な幸福のみならず、生きがいや人生の意義など将来にわたる持続的な幸福を含むものである。また、個人のみならず、個人を取り巻く場や地域、社会が持続的に良い状態であることを含む包括的な概念である。』と定められました。元々はOECD(経済教育開発機構)の「Learning Compass2030(学びの羅針盤2030)」にて、「世界が目指す目的地」とされ、いろいろな国で教育計画の中に盛り込まれ始めた言葉が「ウェルビーイング」です。

難しい言葉のように感じますが、簡単に説明すると、自己肯定感や自己有用感を子どもたち一人一人だけでなく、教育に関わる人々全体がもつことによって社会の持続的な幸福を実現していく教育のことです。そのために、子どもたちが自尊感情や自己効力感を高めることができる指導を目指していくだけでなく、指導する教員自身も心身ともに健康で働くことができる環境の整備が求められていきます。

参考文献:第4期教育振興基本計画リーフレット,文部科学省,https://www.mext.go.jp/content/20230928-mxt_soseisk02-100000597_07.pdf(参照2024-6-9)

参考文献:OECD ラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030,OECD,https://www.oecd.org/education/2030-project/teaching-and-learning/learning/learning-compass-2030/OECD_LEARNING_COMPASS_2030_Concept_note_Japanese.pdf(参照2024-6-9)

⑤パフォーマンス評価
子どもを評価する方法として近年、取り入れられることが多くなってきたのが「パフォーマンス評価」です。全ての教科においてできる評価ですが、芸術系教科(音楽や美術など)で取り入れられやすい傾向があります。
一般的な評価はペーパーテストなどを利用して、「学習範囲の知識が定着しているかどうか」を評価します。一方でパフォーマンス評価では「何ができるようになったのか」を評価します。したがって、評価をするための課題もパフォーマンス課題と呼ばれます。
例えばサッカーの授業ならば「トラップできるようになる」という学習目標の場合、「トラップの精度を評価」するのが従来の評価に対し、トラップしてパスができる、すぐにドリブルができるという「学習目標をどう生かしたか評価」するのがパフォーマンス評価になります。

そのため評価をする際にも1つの基準だけで評価をするのは難しく、ルーブリック評価という「何を身に付けるかという指標」と「どの程度身に付けるかという指標」をマトリクスにしたものが使われることが多いです。

⑥自己調整学習
近年、教育大学の付属学校などで取り入れられている学習方法の1つに「自己調整学習」があります。この学習方法は今までの学習形態と大きく変わるもので、子ども自身が主体的に学びに関わり調整しながら目標を目指すという手法です。大学生が行う卒業論文のような学び方ですが、これを小中学校段階から実現していく学習方法です。

自己調整学習という言葉ができたのはOECDが2015年に立ち上げた「Education2023」に由来しています。この中で前述の「ラーニングコンパス」という言葉が提唱されました。そして、学習者が主体的に学ぶにあたり「動機付け・学習方略・メタ認知」という3つの要素が必要であると示されました。
自己調整学習の展開方法は、まず、勉強する動機付けがあります。外発的なものと、内発的な動機付けの2種類があり、どちらも子ども自身が褒められたり、興味関心をもつような気づきをしたりすることで生まれます。動機付けができたら次は、学習方略を考えます。学習方略は、学習方法と同じで、通常と異なるのは知識を身に付ける方法とどのような気持ちで向かうのかを考えていきます。人から指示されて考えていくのではなく、子ども自身が自分で課題解決ができるよう前向きな気持ちにさせていくのがポイントです。最後に、出来上がった学習に対してメタ認知をします。課題を追究してきた過程や結果を客観的に振り返ることで、次の課題の発見につなげます。

参考文献:OECD Education 2030 プロジェクトについて,OECD,https://www.oecd.org/education/2030-project/about/documents/OECD-Education-2030-Position-Paper_Japanese.pdf(参照2024-4-13)

採用試験ではトレンドの言葉を知っておくことが大切


今回紹介した用語は、今の教育というよりも未来の教育に関する言葉が多いです。ただし、日本の教育指針の特徴として、海外でメジャーになってきた話題や取組を文部科学省が取り入れ、振興計画や通知として反映されます。そして、国の指針を受けて各自治体の教育プランが作成されます。

つまり、今、新しく登場してきた言葉は数年後には日本の計画のメジャーになっている用語の可能性もあります。これから教育の世界に関わっていく若い人にはぜひ知っておいてほしい言葉なので、採用試験で聞かれた際にも「詳しくは知らないが何となく知っている」「トレンドになっている」という知識は持っておきましょう。

最新情報をチェックしよう!