学校給食における食物アレルギーについて教員が知っておくべきこととは?

食物アレルギーに伴う「アナフィラキシーショック」での死亡例など給食対応を巡るさまざまなトラブルや責任問題が教育現場で実際におきています。

食物アレルギーを持つ子どもや児童も含めたすべての生徒が安心して学生生活を送るためにも、教員のアレルギー対応への取り組みが必要です。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

給食か給食以外かにより対応は大きく異なる

まず、学校における食物アレルギー対応は「給食」と「給食以外」とでルールが大きく変わります。給食以外とは、持参するお弁当や校外学習、宿泊学習に伴う食事のことを指します。

給食の場合、何かあった際の責任は製造元である自治体が負うことになり、給食以外の場合は保護者や提供元が責任を負うことになります。

参考文献:学校給食における食物アレルギー対応について,文部科学省,https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1355536.htm(参照2024-07-10)

アレルギーレベルによって対応を変える自治体

学校給食においては、文部科学省から『学校給食における食物アレルギー対応について』というガイドラインが平成27年3月に出されています。

ガイドラインによれば、学校給食におけるアレルギー対応は「完全除去」が大原則になります。例えば、卵アレルギーの場合、卵焼きや卵スープといった卵をメインに使っている料理だけでなく、卵の成分を含んでいる食品(例 カスタードクリームやふりかけなど)も全て除去するということをガイドラインで示します。

文部科学省のガイドラインでは、「完全除去」が原則であるものの実態としては、自治体や学校と保護者の話し合いによって食べることができるもの、食べることができないものと対応しているケースもあります。

ガイドラインの中にも「教育委員会等は食物アレルギー対応について一定の方針を示すとともに、各学校の取組を支援する。」というように、多少の自由度があることを意味した表現が付いています。そのため、自治体や学校によって対応に差が生まれるという事態が生じている状況です。

完全除去を徹底している自治体

まず「完全除去」を徹底している自治体です。国の方針を受けて、県やそれぞれの市町村が給食アレルギーに対するガイドラインを作成しています。その中で国の方針を守っているのが「完全除去タイプ」です。

完全除去の場合は、給食においてアレルギー対応をしません。分かりやすく言うと、アレルギー成分が含まれている給食が提供される日は、お弁当を持って登校する必要があるということです。

自治体としては安全性を重要視していますが、裏の事情として給食を作る過程において、設備や人員の対応ができないのでアレルギー対応食が準備できないというケースもあります。学校側の対応もメニューの確認をして、アレルギー成分のあるものは提供しなければよいので、比較的楽な対応とになります。

学校で一人一人に合わせた対応をする自治体

2つ目は、保護者や医師との相談によって除去する、除去しないという対応を分ける方法です。保護者が病院などで子どものアレルギー検査をして、どの程度の症状が出るのかレベルを測定してもらいます。有名なものに「MAST36」があり、36品目のアレルギー検査をして、「0~6段階」のクラスに分けます。そして、学校側が就学時健康診断や保護者会等で、学校におけるアレルギー対応及び学校給食における食物アレルギー対応の内容を説明したのち、アレルギー対応を希望する保護者に「学校生活管理指導表」を提出してもらう方法です。

学校側は提出された「学校生活管理指導表」に基づいて、担任や養護教諭、管理職などが給食時にチェックして誤食を防ぐ仕組みになっています。ただ、一方で教員や養護教諭は食のスペシャリストではないため知識も経験も少ないです。「少量摂取は可」というようなケースでは非常に困るため、家庭の判断に基づいて実施しているのが現状です。

参考文献:免疫学的検査,BML,https://uwb01.bml.co.jp/kensa/search/detail/3104098 (参照2024-07-10)

給食によるアレルギーのトラブルを減らす工夫

学校では、子どもの命を守るために給食アレルギーのトラブルを減らす工夫があちこちに見られます。学校と保護者の間では、アレルギーに関する情報交換を行い、給食の献立表を学校と保護者が一緒に確認することで食べることができる、できないの判別をしています。また、学校においても栄養教諭または栄養士が常駐している学校であれば「学校給食委員会」のような組織があり、管理職、担任、養護教諭などと連携をした対応をしてアレルギー対応を考えなければいけません。

特にこれまで「死亡事故」につながってしまったような重大なアレルギートラブルの場合、アナフィラキシーショックによるケースが多いです。つまり、誤食をしてしまった後の対応が遅れたり、エピペンなどの投与のタイミングが遅れることが、死亡事故につながっているのです。そこで学校や教育委員会でもエピペンの使い方研修やアレルギー反応が出た際にどのように対応するのかという研修を行い、対策をしています。

教員は給食アレルギーとどのように向き合うべきか

給食アレルギーの対応は担任一人でできるものではありません。担任ができること「誤食をしないように給食の配膳を見守ること」「保護者と連携してアレルギーに関わる物質を調べ、他の職員に情報提供すること」の2つが大きな仕事になります。

さらに養護教諭や栄養教諭、管理職を含めて本当に除去されているのか、何重にも確認することが求められます。少しでも給食の内容に違和感があれば、声をあげて確認し、安全であることを複数の眼で判断することも大切です。給食センターや行政(学校給食課)は給食を作るときにアレルゲンのある物質が絶対に含まれないように調理しなければいけませんし、情報提供を保護者や学校に対して必ず行わなければいけません。給食製造に関わる材料が変更された、いつもと違う業者のものを利用したときにトラブルになったこともあります。(2023年9月上越市公立小学校の事例など)

教員としてアレルギーと向き合う場合には、決して一人で対応しないこと複数の眼で確認すること情報の収集と共有をしっかりとすること事故を防ぐ手段になります。

アレルギー対応は非常に難しい問題 学校だけでは限界との声もある

学校の給食におけるアレルギー対応は、子どもの命を守るという点から見ても非常に大切です。文部科学省のガイドラインは「完全除去を原則」としているものの、実際には学校毎に保護者と相談して、食べることができるもの、食べることができないものに分けて対応している学校も多いのではないでしょうか。完全除去になると、お弁当を持参しなければいけなかったり、給食を食べる際には、食べて良いものが少なくなってしまうことに配慮した結果です。

ただ、教員は、食べることができる、できないに分けて対応することはアレルギー発症の危険も大きいという意識を常に持っておくことを忘れてはいけません。もし、クラスでこのような対応をしているのであれば、給食に対する関心を常に持ち、最後の砦になるつもりで、子どもを守る心構えを持っておきましょう。

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