3月の声が聞こえてくると、「1年の終わりが近づいてきた」と感じる先生も多いのではないでしょうか。1年間の子どもたちの成長を感じながら、次の学年または次の学校へ異動の準備を進めている人も多いと思います。
この時期に教員が大切にすべきことの一つが「引き継ぎ」です。これを疎かにしてトラブルに発展するケースも少なくありません。
引き継ぎの三本柱
学年末の引き継ぎには、大きく3つの柱があります。
- 子どもの意識の引継ぎ(次学年への意識づけ)
- 教員間の引継ぎ
- 自分自身の引継ぎ
この3点です。
子どもの意識の引き継ぎ(次学年への意識づけ)
3学期のことを「次学年の0学期」と表現する教員が多いように、学年末は次学年に向けて子どもたちを意識付ける大事な時期です。子どもたちは、次の学年が始まると新しいクラスで新しい学習が始まります。卒業を迎える学年は、新しい世界に旅立っていくことになります。期待が膨らむ一方、不安を抱える生徒も多いはずです。このため、教員の皆さんにして頂きたいのは、不安を取り除けるよう、次の学年へ意識づけてあげることです。
例えば小学1年生の担任の場合、具体的な内容としては
① 新1年生が入学し、「お兄さん、お姉さん」になる
② 1年生の時よりも少し難しい勉強をすることになる
③ クラスが変わり、新しいお友達や先生と過ごすことになる
といった内容を3学期のうちに伝え、次学年に向けて意識を引き継ぐことが大切です。
子どもの中には不安なことがあるとパニックを起こしたり、行動ができなくなったりする子もいます。次学年への見通しをもたせること、意識付けをすることは、子どもにとってスムーズな学年移行を促すため、しっかりと行いましょう。
教員間の引き継ぎ
教員間の引き継ぎは、校務の上で欠かせません。学年が持ち上がらない・異動になる、といった可能性が高い先生は特に、しっかりとした引き継ぎが必要です。
注意点は、引き継ぎの内容を文書に残すこと。引き継ぎに関するトラブルで多いのが、「保護者から『引き継ぎがされてなかった』というクレームが入るケース」です。
引き継いでもらう側はしっかりと文書にまとめる。引き継ぐ側は、どんなに些細な内容であっても、口頭で伝えられた場合はメモしておくことが大切です。
次に、教員間で共有しておくべき、5つの引き継ぎ事項について説明します。
①子どもの健康に関する情報
持病やアレルギーなど健康に関する情報は、子どもの命にもかかわってきます。新担任が決まって保護者から新担任に連絡があるケースもありますが、事前に新担任が知っておいたほうがよい情報もたくさんあります。保健関係の書類にまとめられていることが多いですが、新しい情報を追記し、引継ぎできるようにしておきましょう。
②いじめや不登校に関する情報
児童生徒のいじめや不登校に関する情報も引継ぎをしましょう。いじめや不登校はいったん解決したとしてもまた次の学年で起こる可能性があります。その子の記録として確実に残し引継ぎをします。
③特別支援に関する記録
児童生徒によっては「個別の支援計画」または「個別の指導計画」を作成している場合もあります。これは、その児童生徒がどのように過ごしてきたかを記録するものであり、次学年または進学先に送付する必要があります。本年度の記録を残して、次年度に引継ぎをしましょう。
④保護者に関する情報
モンスターペアレンツとまで言えないにせよ、学校の指導方針に否定的であったり、過去に何かしらのトラブルがあったりした保護者に関しては、教員間で情報を共有しておくと安心です。
⑤児童生徒の人間関係に関する情報
子どもたちの中には「同じクラスにする」「クラスを分ける」といった、人間関係に配慮をしなければいけないケースがあります。新年度の前に学級編成をすることになると思いますが、学級編成において出てきた情報も引継ぎができるように記録しておきましょう。特に保護者からの要望に関しては、確実に引き継がないと、次学年の先生に迷惑をかけることになるので注意が必要です。
自分自身の引き継ぎ
教員自身が1年を振り返り、新学期に生かす。これが3本目の柱である「自分自身の引継ぎ」になります。
今一度、4月の学級開きの時に立てた「学級経営方針」を見直し、達成できたかどうかを確認しましょう。目標を達成できていないのであれば、目標設定が厳しかったのか、手立てがよくなかったのか分析します。より客観的な評価を得るために、管理職の先生らに評価してもらうのもよい方法です。若い教師や経験の浅い教師は、外部からの指摘を受けて自分を振り返り、次の年度に生かすことで成長していくことができます。
引き継ぎをしっかり終え、気持ちよく新年度を迎えよう!
新年度は、大人にとっても子どもにとっても環境が変わる時期であるため、分からないことや不安なことを抱えたまま迎えてしまうと、後々のトラブルに繋がりかねません。年度を締めくくる最後の仕事だと捉え、子どもに向けて、後任の教員に向けて、そして自分に向けて、しっかりと引き継ぎを終えましょう。