新任教員向け!学級運営で失敗しないためのたった1つの考え方

新任教員が担任を任されるのが当たり前になりつつある昨今、学級運営に不安を抱く方は少なくないはずです。「1年目から担任なんてうまくできるだろうか」「学級崩壊にならないか心配」と思っている方もいるでしょう。群馬県教育委員会が2011年に行った調査では、1〜5年目の教員が学級崩壊に至るケースは、5.2%となっています。

引用:須藤康介「学級崩壊の社会学」2015

筆者も1年目は子どもとの信頼を構築するスキルがなく、集団をマネジメントできなかったために、学級崩壊の直前まで至った経験があります。正しい学級運営を行わない場合、わずか1年でも学級が大きく崩れてしまうのです。そこで本記事では、学級運営で失敗しないための考え方と、正しい集団のマネジメント方法を紹介します。

子ども全員から好かれようとする担任は失敗しやすい

結論、学級運営でもっとも大切な考え方は「子ども全員から好かれようとしないこと」であり、言い換えれば「子どもに嫌われる勇気」をもつことです。

その理由を3つに分けて解説します。

理由1:そもそも全員に好かれるのは不可能

ひとクラスには35人程度の子どもがおり、35種類の家庭環境とそれぞれの価値観が存在するため、その全員に指導を納得してもらうことは不可能に近いと言えるでしょう。

価値観に「相性」の良し悪しはあっても「正解」はないため、教員側の価値観を子どもに押しつけることは許されません。反対に教員側が子どもに合わせようと価値観を変えた場合、また別の子どもに受け入れられなくなります。このような多様な価値観のずれを受け入れ、あなたなりの信念をもつようにしなければ、指導もずれたものになってしまうでしょう。

理由2:指導の基準となる軸がぶれてしまう

筆者の1年目は、子どもに嫌われたくないという思いから、子どもの価値観に寄り添った指導を行っていました。しかしそれは後々振り返ると「寄り添い」ではなく「迎合」に過ぎませんでした。結果として指導の軸がぶれてしまい、場面によって指導レベルが変わっていたのです。

例えば服装や頭髪検査において、子どもによって良し悪しの基準が曖昧になったとき、子どもから不満の声が出ました。このような指導の軸のぶれにより、担任としての信頼が損なわれるのですが、当時の筆者は気づきませんでした。一つひとつは小さな不満であっても、その不満は忘れられることがなく少しずつ蓄積されるため、年度末に近づくにつれて指導がしにくくなり、学級運営も難しくなるのです。

理由3:声をあげない子どもに無関心になるから

担任の指示に従わない子どもが出てきた場合、ついその子どもにばかり関心が向いてしまい、真面目に学校生活を送っている子どもを見逃しやすくなります。もっとも危険なのは、声の大きな子どもに嫌われたくないために教員が迎合してしまい、声をあげない子どもたちの信頼を失ってしまう状態です。

真面目な彼らは不満を声に出しませんが、担任の行動をしっかり見定めており、静かに担任を見放していきます。しかも声をあげない子どもが学級の多数を占めるため、彼らが味方でなくなった場合、教室の過半数が担任を信頼しない状態になるのです。子どもの過半数が担任を信頼していない場合、学級運営はかなりの困難を極めます。そのような状態に陥らないためにも「子ども全員に好かれたい」という考えはもたないようにし、迎合することは避けなければいけません。

子どもとの距離感を正しくつかむ

子ども全員に好かれようとせず、正しい距離感で子どもと向き合えば、大きく学級運営が崩れることは少なくなります。そのためには、次の2つに気をつけましょう。

  • 距離が近すぎる:友達先生になってしまい、指導を真剣に受けとってもらえない
  • 距離が遠すぎる:自分たちを見てくれていない教員だと感じるため、信頼されない

上記のどちらにもならないよう、バランスをとり続ける必要があります。

新任教員はこのバランス感覚を自分で把握しにくいため、周りの先輩教員に尋ねてみることをおすすめします。「子どもとの距離感がうまくいっているか心配なんです」と、隣のクラスの担任に相談してみましょう。「うまくいっていると思いますか?」とコメントを求めると答えづらくなりますが、相談ならば、あなたの子どもとの距離感を客観的に評価してくれるにちがいありません。

子どもを大人と同等に扱う

筆者が10年以上勤務したなかで彼らを子ども扱いしたことは一度もなく、それは大人と同等に扱うことで、叱るべきときは厳しく指導できるからです。子ども扱いは一時的には優しくてよい先生になれるかもしれませんが、客観的に見るとただの甘い教師になるため、避けていました。

また指導の場面だけでなく、承認する場面でも大人扱いは有効だと筆者は考えています。例えば仕事を積極的に引き受けてくれたとき、感謝だけでなく仕事に対する評価もあわせて伝えるのです。仕事をしてくれたことを無条件に承認するのではなく、質に対する評価を一言伝えるだけでも一段階上の承認につながるため、子どもの信頼につながるでしょう。

新任教員でもすぐ実践できる学級運営のポイント

1.指導するラインを決める

あなたは、次のような場面に遭遇した場合、どのレベルで指導をしますか。

  • 子どもが「教科書を忘れました」と3回連続で申告してきた
  • 男子が下級生の男子を叩いているのを目撃した

上記のような場面は、中学校でも経験したことがあります。このとき大切なのは、あなたの中で指導のラインが明確であることです。指導のラインが明確でない場合、別の場面では対応が変わってしまうため「あいつの時はそこまで叱られなかったのに」といった不満につながります。

このような指導のぶれを防ぐためにも、指導するラインを言語化しておくとよいでしょう。例えば筆者は「相手に傷を負わせる危険がある場面では、問答無用に大きい声で叱る」や「忘れ物を自己申告してきた点は評価する」など、文章化して生徒指導用のノートに書いていました。時折見返して、自分の指導のラインを確認しながら指導にあたるとぶれがなくなります。

2.決めた指導ラインを少なくとも1年間は守る

一度決めた指導ラインは、少なくともその年度は変えてはいけません。子どもは、先生の指導のぶれを「特定の子どもに対するひいき」と考えることもあり、ひいきと感じた場合はその教員を信頼しなくなるでしょう。彼らは指導の変化には非常に敏感であり、子どもだからわからないだろうという考え方は危険です。

指導のラインを決める時は、子どもに「なぜダメなんですか?」と聞かれても納得した答えが返せるかどうかを基準にします。あなたが納得できる答えを言えなければ、指導された子どもにも不満が残るはずです。また、指導のラインを子どもにあらかじめ示すこともよい方法でしょう。例えば筆者は「人を傷つける行為をした場合は、どのような理由であれ厳しく指導します」と4月にクラスで宣言しています。宣言することで自分の指導のラインがぶれません。

学級経営で大切な集団のマネジメント

学級という「子どもの集団」をマネジメントする方法について解説します。

1.2:6:2の法則を知る

集団は大きく3つの集団にわかれます。

  • A:指導しなくても正しい行動がとれる集団
  • B:指導されたら正しい行動がとれる集団
  • C:指導されても正しい行動がとれない集団

この割合は多くの場合、A:B:C=2:6:2の割合になると言われます。

 2.最大多数派の信頼を得る

学級運営が失敗しやすいのは、C(指導されても正しい行動がとれない集団)にばかり目をかけてしまい、他の正しい行動がとれる集団を放置してしまうパターンです。

むしろ6割を占めるB(指導されたら正しい行動がとれる集団)をしっかり指導し、学級の中で正しい行動をとれる子どもが多数派になるようにします。学級の8割が正しい行動をしている場合、少数派となってしまったC集団は次第に影響力をなくしていくでしょう。

3.声をかけて約束を守る

信頼される教師になるためには、普段から何気ない声かけをしてコミュニケーションをとり、子どもにとって気にかけてくれている存在になることが大切です。

また、朝礼や終礼の終わる時間を守ることや一度宣言した指導のラインを崩さないことも、子どもたちからの信頼の獲得につながるでしょう。細かい約束を守るようにすれば、教員の言葉と行動が一致するため、指導が入りやすくなります。

新採・初任者が学級運営で失敗しないためには距離感が大切

学級運営を失敗しないためには、子ども全員に好かれようとせず、適切な距離感で子どもと関わりましょう。この距離感のバランス感覚は一朝一夕で身につくわけではありませんが、意識すれば少しずつ感覚がつかめるのではないでしょうか。もし「うまく距離感がとれていない」と感じたら、先輩教員に相談してみて、客観的なアドバイスをもらうことも検討してみませんか。

また担任としての指導ラインをしっかりと決め、そのラインを必ず崩さないようにすれば、大きなトラブルを回避してスムーズな学級運営が期待できます。

今回お伝えした上記のようなポイントをうまく取り入れていただくことで、みなさんの教員1年目が充実したものになるよう願っています。

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