【校長インタビュー#9】立正大学付属立正中学校・高等学校の校長 大場 一人 先生へインタビュー!

今回は、立正大学付属立正中学校・高等学校の校長 大場 一人先生に取材をさせていただきました。大場先生が教員になったきっかけや、どのような方に教員になってほしいか、新任・若手教員が学校教育にもたらしてくれていることなどお伺いしました。

大場先生が教員になったきっかけ

―大場先生は元々英語の先生で、英語英米文学科をご卒業されたとのことですが、元々英語がお好きだったのですか?

大場先生(以下敬称略):そうです。語学に興味関心がありました。

大学生の頃、長期休暇は沖縄の米軍キャンプのあたりでアルバイトをしながら過ごしていました。当初は、教員を目指すというより英語を使う仕事に就きたいな、海外でも働いてみたいなと思っていましたが、たまたまご縁があり、母校でもある本校に勤めることになりました。こちらに勤めて44年目になります。

ーすごいですね。今までどんな校務分掌や管理職をご経験されたのですか。

大場:進路指導をやって、教務もやって…それから教頭職は、13年ぐらいやっておりました。現在の校長職は、就いてから8年目になります。

ー先ほど、就職先は教員以外でも検討していたと仰っていたので、もしかしたら民間企業での就職活動もされていたのでしょうか。

大場:実は、民間企業から内定を頂いていました。そちらの企業で研修も受けていました。私が就職活動をしていた頃は、大学4年の10月1日が解禁日で、有難いことに内定を頂いておりました。

しかし、2月に入ってから本校から『専任教諭の空きがあるからやってみないか。』と声をかけられたんです。考えた結果、本校の教員になることを決意しました。内定を頂いた企業の人事の方にはお話をして、ご理解をいただき、晴れて教員となりました。

ー教員になって、就職した最初の1ヶ月目は率直にどう感じましたか?

大場:生活指導、進路指導、教科指導とか様々な面に関しては苦労したというよりも、勉強になったなと感じることが多かったです。当時は男子校でしたから、今よりも活発で個性的な生徒が多かったです(笑)

ー勤務していた中で嬉しいエピソードはありますか?

大場:担当していた卒業生のお子さんが本校に入学したと聞くと嬉しいですね。

学校運営について

―貴校の昨年の進路実績を拝見しました。生徒さん達、とても頑張っていますね。

大場:特進クラスに所属し、GMARCHクラスの大学に進むような生徒もいれば、立正大学を第一志望としている生徒もいます。志望する職業に直結した形での学部選びやキャリア指導を中1から、高校から入学する生徒は高1からやっています。

幸いにも進学実績も上がってきて、生徒達の希望の進路へ結びつけることができるようになりました。そのような取り組みが功を奏し、生徒募集に関しても、多くの学生さんに受験していただいています。できることなら受験生全員が本校に入学してほしいですが、ちょっと難しいというのが現状です。

ー結果が出てくれば、受験者数も増えますよね。ニーズがあるということだと思います。

大場:教職員にいつも言っていることは、学校や信頼や実績は、現役の生徒や保護者の口コミを通して分かります。ですので、各担任の先生方がホームルーム運営の中で信頼を得ていくことが地道な募集活動にもつながっていきますし、現役の生徒たちの信頼を得ることも重要です。

ー貴校に入学される生徒さんはどのような傾向がありますか。

大場:基本的に本校の場合、高校から入る生徒は、立正大学の近隣の地域に住んでいる子が多いです。そのため、立正大学を志望している子が多い印象です。中学から入る生徒は、立正大学以外の多種多様な進路を目指します。レベルの高い大学へ、というお子さんが多いですね。

立正大学付属立正中学校・高等学校の今昔

ー大場先生が新任の頃は男子校でしたよね。他校の校長先生やご年配の先生とお話する機会があるのですが、みなさん『昔の男子校は、様々な面での取り組みが大雑把だった』と仰っていました。

大場:きめ細かく指導を行っている方もいれば、そうではない方もいらっしゃったかもしれませんね。

しかし、共学化してからここ最近は、受験生の保護者の方々が本校の教育内容などをよく調べている方が多いので、『このお子さんに対して、このような指導ができますよ。』ということはきちんとお示しをします。本校の強みは、一人一人の生徒にきめ細やかな指導がきちんとできるということです。

ーなるほど。先ほど進路実績が上がっていると言うお話を伺いましたが、進路指導についてもきめ細やかな指導をされているのですね。

大場:私は、本校の説明会で『優秀な生徒さんだけに手を暖かくする学校ではありません。1位から300位までの生徒さんがいる中で、300位の生徒さんに対してもきめ細かい指導をしています。』と話しています。

難関の京都大学や一橋大学、早慶上理への入学を希望する生徒には、赤本の指導などの入試対策指導を行っています。そして、推薦入試を希望する生徒には、面接指導・論文指導・プレゼンの指導などをやっており、なるべく現役で希望する大学に行かせるよう尽力しています。

ーレベルの高い大学を目指した結果、浪人の道を選ぶ生徒さんもいらっしゃると思うのですが、貴校の場合どのような傾向がありますか。

大場:数十年前、『受験戦争』といわれていた頃は、本校でも浪人生が半分ほどいました。現在は、浪人する生徒はだいぶ減っています。多い年で10数名ぐらいですね、そのうち浪人する生徒の過半数は、合格した大学はあるけど、またさらにレベルの高い大学を志望するというパターンです。

立正大学付属立正中学校・高等学校の教員採用について

ー貴校の教員採用について、お伺いしたいです。

大場:本校の場合、初年度から専任として採用することはなく、まずは常勤として3年間くらい様子を見て専任へ、という形で教員採用を行っています。面接の時にきちんとそういうお話をします。

1年で辞めて、他所を受けていただいても勿論かまいません。色々な所にご縁はありますからね。ですが、常勤としての採用が終わっても他所に行かないで『引き続き非常勤や常勤として専任教諭の枠が空くまで待ちます。』と言ってくださる先生が多いです。現在も数名の先生が常勤として勤務して、非常勤でそのまま残られている先生もいらっしゃいます。

ー現在、何名くらいの方が貴校で教員をされているのですか。

大場:教員は約120人ほどいらっしゃいます。専任は70人、非常勤は50人ほどです。ちなみに、生徒数は、合計1500人くらいですね。

ー専任採用はないですが、常勤や非常勤の採用は毎年あるんですね。

大場:国数英などの主要教科に関しては、年配の先生が1人辞めれば、2人ぐらいは専任として入っていただいても全然問題ありません。これからも50代、60代の退職者が多くなっていきますので、その前に少し若い先生方に専任として入っていただき、育てていきたいなと思っています。

本校は、専任全体の平均年齢が40代前半なんです。一時は38、39歳くらいでした。

ー若いですね!

大場:中学校の担任軍団の平均年齢は、30代です。学年主任は保護者対応等もあるので、ベテラン層を担任につけています。

ー年齢ではなく経験値で決まることもありますよね。年齢構成のバランスは何十年単位で考えなきゃいけないと思いますが、そこで40代前半というのはかなり若いなと思います。

大場:そうですね。しかも、他の学校よりも定年は長いんです。まだ60歳で定年の学校が都内でも多いですが、本校は65歳で一旦定年で、希望すれば非常勤として70歳まで勤めることができます。

ー専任・常勤、非常勤ある程度年齢のばらつきがあるというのは仕方はないと思いますが、それにしてもかなりいいバランスですね。雰囲気も変わらずにのびのびやることができるから長く働ける方が多いのかもしれないですね。

大場:私は、先生方に『私学の強みは公立と違って異動がないことです。』と伝えています。ただ逆に言えば、異動はないということは、淀みになってしまったらもう身動きが取れないのです。場合によっては、悪循環になると思います。

例えば生徒数が減ってしまうと、教員は何かしらの不安感を抱くようになります。教員に不安感があれば、今度は生徒が『うちの学校は大丈夫なのかな』と不安感を抱くようになります。そうやって負のスパイラルに陥っていくことだけは避けたいと思っています。

本校も中学生の募集が苦しい時代が数年ほどありましたが、ここ数年は、中学生の募集はかなり盛り返して、先生方のモチベーションもおかげ様で上がっています。そういう中で今度は若い先生方の協力も借りて、学校の活性化を図っていければと思います。

新任・若手教員の方に向けて伝えたいこと3選!

若手教員がいてくれることで…

ー若い教員が入ると、やはり学校は活性化するのでしょうか?

大場:学年の中に20代、30代の教員が最低でも1人2人はいらっしゃった方が生徒たちにとって良いと思うんです。流石に若い先生方ばかりだと保護者も不安に感じる事があると思います。けれども、若い教員の存在は絶対に必要なんです

また、本校ではICT教育を進めているところですが、若い世代の方は発想力もありますし、ICTの分野が好きな先生方もいらっしゃるので、それを活かしてほしいです。50代や60代の先生方の中でも、ICTを学ぶ意欲のある方がたくさんいらっしゃいますので、それでいい意味で融合ができています。

ー実際ICT化はどうなりましたか。

大場:かなり進みましたね。ICT化で得たことを『アフターコロナの中でどう活かしていくのか』が今後の課題になってきます。例えば部活動など何かしらの都合で補習を受けられない生徒たちが、いつでも配信されたものを観て、補習を受けられるように環境を整えるなどしています。

本校では、数年前からスタディサプリを導入してるのですが、ゆくゆくは学校独自のものを、例えば『立正サプリ』みたいものを作りたいと思っています。子供たちがいつでもどんな授業でも、このオンデマンドとして見ることができて、それを予習復習に使えるようなものを今年度中に確立していく予定です。まずは英語、数学からですね。

新任・若手教員に向けてメッセージ

大場:まず与えられた授業やホームルーム運営ができるようにならなければいけません。それができないと言葉は悪いですが、一人前の教員とはいえないと思います。

そして授業に関しても、あくまでも正規の授業が主であって、そこに、サプリメントとして補習を行っていく必要があると思います。各教科ごとに勉強して、受験指導のテクニック等もつけていただくために、先生方には教員用の講座を10年ぐらい前から受けていただいています。スキルが付くと、生徒の信頼度がアップしますし、教科間の中で研鑽して基本力をアップしていく必要があると思います。

生徒に『あの先生の授業を聞いても別に役に立たないよ。』とか『参考書を見てればいいや』と言われてしまえば、学校としての意味がないのです。

ー仰る通りです。その中で教員を志望する方に求める部分を教えていただきたいです。

大場:授業のテクニックとかはこれから勉強すればいいと思っています。教員になりたいと思ったきっかけが各々違うと思いますが、まずは『コミュニケーションをきちんと取ることが好きだ。』ということが大事です。『人と話すのが苦手、あるいは、コミュニケーションをとることが苦手』という方は、教員になると本当に困る部分が多いと思うんですよね。かなり厳しいと思います。

また、生徒達だけではなく、老若男女様々な方とコミュニケーションをとる必要があります。実際に保護者の方とも関わっていく必要があるので。色々な方がいらっしゃいますから、まず、『人間が好きである事』が大事です。

もう1つは、『生徒たちのためにどういうことをしてあげられるか』を常に考えられる方かどうかということも大切です。もし、勉強やスポーツなどが苦手な生徒がいたら『できないから』という理由で馬鹿にしたり、その生徒が悪いという考え方を持つような方は、先生として伸びないなと思っています。『どうすればその子が伸びていけるか』を考えていかなければなりません。

どのような人にきてほしいですか?

ー新任・若手の先生はその『どうすればその子が伸びていけるか』について悩んでいる方が多いと思います。

大場:当然、そういうことを日常考え続けていると悩むことが多いかもしれませんが、若い時だからこそできる部分でもあると思います。『どうすればその子が伸びていけるか』を熱心に考え、それを実践するために努力をしている人がいたら、是非採用したいですね。

勿論、それ以外にも専門の教科の知識もあるのが理想です。専門の教科の知識が普通のレベルであっても、教員になって5年や10年勉強したときに、自分の専門知識のレベルが中高生を教えるにあたって、かなりの力を持った上で指導ができるかが大事です。その方自身は高校から大学まで計7年間、その教科を勉強してきていますよね。教員になってからも、どのように生徒に教えるかという面を踏まえて勉強ができるか、吸収できるか、という部分が特に大切だと思います。

僕は、教員は基本的に“教科”で雇われていると思っています。“教科”で採用されたことを常に考えてほしいと思っています。もちろん、部活指導に一生懸命な先生もいらっしゃることは大変有難いことですが、私自身は、“英語の教員”として本校に雇われています。その“教科”で雇われたということは、特に意識してほしいです。

ーなるほど。教員採用にあたって、どのような人が注目されるとお考えですか?

大場:学校ごとに『どういう先生が欲しいか』というのは、変わってきますよね。学校ごとの差はありますが、どの学校も欲しい人材は『教科力もあって、生徒指導にも長けていてバランスよく仕事ができる人』です。最初からそんな力のある人材は多くないですけどね。教科力も指導力もある方は、生徒に好かれ、親御さんに対してもハキハキと対応ができるようになるので、ベストだと思います。

ー最初から色々できます!みたいな人はあまりいませんよね。

大場:そうですね。ただある程度話して見ると、その人の性格なども分かってくるじゃないですか。この人、神経質そうだな、ちょっと硬いな、自尊心が強いな、とか。

あとは、教員団の中で『この先生を専任にしてください!』という声が高まることもあります。そうなれば、たとえそこに専任教諭の空きがなくてもこちらで空きを作ろうと思います。また、本当だったら英語の教員を採用しなきゃいけないんだけれども、でも、違う教科を取るという場合も出てきます。人数の枠がそんなに多いわけではないので、そこは評価を見て、という形になります。

ーもう少しだけ貴校が求める人材を教えていただくことはできますか?

大場:そうですね。バイタリティのある思慮深い方だといいですね。あと、学校説明会や生徒にお話していることなのですが、『自分に得意なものがあって、それに自信を持ちながら自己研鑽できる人』は魅力的ですね。スポーツでも、勉強でもいいです。

私自身は、教壇に立っていた時は英語力をつけるという意味で、『スピーキングやリスニング』を行っていました。それらに対して得意じゃないという思いがあったので、技能を磨くためにも力を入れていました。

管理職になってからは、人を動かしていかなければいけませんので、『より人の話を聞き、相手を理解する』ことを心がけています。先ほども言いましたように、管理職を20数年やっています。40代くらいで管理職になった当初は、職員のなかでちょうど真ん中くらいの年齢でしたので、私より年上の先生方のお話も聞きながら勤めていました。しかし、今は校長で、年齢も一番上の方ですので、皆さんに聞かないとわからない部分があります。そのため、毎年20名くらいの先生方との面談の機会を設けて、いろんな先生方のお話を聞くようにしています。

ー本日はありがとうございました。

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