教員が知っておくべき特別支援教育

特別支援教育とは

特別支援教育とは、「障害のある子供とない子供が可能な限り共に教育を受けられるように条件整備を行うとともに、障害のある子供の自立と社会参加を見据え、一人一人の教育的ニーズを最も的確に応える指導を提供する」ことを目的としています。(参考:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/001.htm

近年、障害の概念の変化や多様化により、様々な教育的ニーズを必要としている子供達がたくさんいます。特別支援教育は、教育基本法で定められているところの、「全て国民は、ひとしくその能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず」というところに準じています。(参考:https://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/mext_00003.html

難しい言葉が並びましたが、特別支援教育とはつまり、その子に合った教育をすること、です。

特別支援教育の変遷

特別支援教育の歴史はまだ浅く、平成19年から本格的に実施され始め、近年になって発展が進んでいる分野です。

教育採用試験においても、筆記や面接、討論の題材としても特別支援教育についての知識を聞かれたり、特別支援学級への希望を聞かれたりするようになってきています。

また、障害を持った子供の進路も、変化してきました。少し前までは、数少ない選択肢しかありませんでしたが、現在は社会福祉施設の中でも、就労移行支援事業所や、就労継続支援A型、B型などから選択できるようになっています。また、一般企業への就職や、専門学校に進学したり、通信を利用したりすることもできるようになりました。療育施設や身近な保健所、保健センターでも、発達相談をすることができます。

教員としては、通常学級の進路だけではなく、障害のある子供の進路や相談先も把握しておくと良いと思います。知識があるとないでは、子供と保護者の未来の選択に大きく関わってきます。

学びの場の種類

ここでは、障害のある子供の学びの場の種類を紹介します。

特別支援学校

特別支援学校の教育は、幼稚園から高等学校までの教育に準じて行われます。その目的は、学習上または生活上の困難を克服し自立が図られること、としています。対象の障害は、知的障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由又は病弱者(身体虚弱者を含む)です。つまり、近年増加傾向にある、知的障害を伴わない自閉症や情緒障害、LD、ADHDなどは、入学の条件に該当しないということです。

特別支援学校の授業は、国語、社会、英語、などの主要教科に加え、自立活動という時間が、障害の特性に応じて行われています。また、教科書や教材は、障害の特性に合わせたものを使用しています。さらに、通学が困難な子供に対して、学校に併設している寄宿舎があったり、スクールバスが運行していたり、ヘルパーさんと一緒の登校を許可していたりと、工夫の仕方は様々です。

また、学校毎に地域に密着した行事を行っている場合があります。例えば、小学生が「中学校から特別支援学校に入学しようかな」、などと考えている際、判断材料が豊富になるように、外部に対して開かれています。

特別支援学級

通常の小学校又は中学校に設置されています。特別支援学校との相違点は、弱視、難聴、言語障害、自閉症、情緒障害に対しても教育を行っているという点です。以前は、特殊学級や障害児学級と呼ばれていましたが、現在は特別支援学級で一貫しています。

特別支援学級の授業の種類は、基本的に通常学級と同じです。学校行事や学年行事には、通常学級と同じように参加します。しかし、特別支援学校と同様に自立活動や生活単元といった、障害の特性に応じた授業が行われたり、定期テストが行われなかったり、通知表の記載方法が異なっていたりすることもありあます。どの程度のレベルで学習を行うのかは、教員が決めるのでは無く、子供の障害の特性や保護者の意向と相談して決定されます。

通級による指導

在籍は通常学級で、ほとんどの学習において通常学級の授業に参加できる場合に行われる指導です。一部特別な指導が必要な場合に、障害の特性に応じて授業が行われます。例えば、算数(数学)の時間だけは少人数であったり、特別支援学級に移動して授業を受けたりする、という配慮が行われます。

また、逆の通級として、特別支援学級に在籍している子供が、ある特定の授業や行事だけ通常学級に移動する、という工夫もあります。通級による指導の場合、特別支援学級の担任と、通常級の担任の密な連携が必要となります。

通常の学級

障害が認められるが、在籍も、授業も通常学級、という場合もあります。集団の中で、他の子供たちと同じように生活を送る中で、障害の特性に配慮しつつ指導を行います。複数人の教員で授業を行ったり、座席に配慮をしたりと、様々な工夫がなされます。

このように、学びの場の種類はたくさんあります。保護者や自治体の就学支援の専門家と相談をして、その子供にあった場所を選ぶことが大切です。障害があらわれる年齢やあらわれ方は、一人一人違うので、絶対にこれ!という正解はありません。むしろ、発達の段階において、常に悩みながら決定していくことの方が大切です。一番忘れてはいけないことは、子供が、楽しく、ストレス無く通えることです。どの学びの場が一番のびのびと成長できるのか、考える必要があります。

発達障害の紹介

近年、障害の概念の変化や多様化、重複化が進んでいます。ここでは、①よく聞く発達障害、②その特性、③学校教育上の工夫、の3つを紹介します。しかし、これらの障害特性は、障害名の必要十分条件ではありません。年齢や性別、周りの環境によって、一人一人様々な特性が現れます。あくまでも、こういった傾向がある、という理解が必要です。

障害名特性工夫
自閉症スペクトラム・相手の表情、言葉の真意を読み取りにくい。
・先の予定が分からないと不安になる。 ・こだわりがある。
・短い言葉、文で話す。書いて教える。
・一日の予定を先に示したり、終わりの時間を知らせたりしておく。時計やタイマーで時間を知らせる。
・好きなことを自由にやってもいい時間を作る。
LD (学習障害)・読んだり、書いたり、計算したりするうちの特定のどれかが、著しく苦手。
・努力不足と誤解されがち。
・大きなマス目、読みやすい書体の選択など、プリントを工夫する。
・苦手な教科はタブレットを使用する。
ADHD (注意欠陥多動性障害)・次々に周りのものに興味がいってしまう。
・落ち着きが無く、ミスが多い。
・感情をうまくコントロールできない。
・視界をごちゃごちゃさせない。やることのリストを示してあげる。
・長時間ではなく、短時間の課題を与える。
・成功体験を積んで、たくさん褒めてあげる。

その他

もし、あなたの学級に、障害を持った子供がいたらどうしますか?使命感の強い人ならば、「この子を、周りのみんなと同じようなレベルまで学力を伸ばさなきゃ」「集中が切れないように見張っていなくちゃ」「どうしてこんなことができないのだろう?」と思うかもしれません。しかし、どんなに頑張っても、努力しても、できないことがある子供もいるということを覚えていてください。そんな時は、一人で悩まずに、学年職員や管理職に相談をしましょう。そして、保護者の方と話し合い、この子にとって何が必要なのか、そのために、どのようなサポートが必要かを考えましょう。子供は皆、平等に教育を受ける権利を持っています。

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