中央教育審議会の諮問や答申の教員採用試験対策!これだけ見れば大丈夫!

教員採用試験が前倒しになり、既に一次試験が終了してしまった人、一次試験の直前という方も多いのではないでしょうか。一次試験、二次試験を控えている方に今こそ確認してほしい資料が今回紹介する「中央教育審議会の諮問と答申」です。

今回は、諮問と答申について解説していきます。内容を丸覚えをする必要はありませんが、これからの教育の方向性が示されているものなので、未来の教育を担う受験生は知っておくべき内容です。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

中央教育審議会ってどんな組織なの?

そもそも中央教育審議会がどのような組織か知らない人も多いと思いますので、簡単に説明します。中央教育審議会は、文部科学省に設置されている審議会で、別名「中教審」とも呼ばれています。文部科学省は行政の組織であり、教育に関しての専門家がそろっているわけではありません。そこで、文部科学大臣の問いかけに対して中教審の専門家が話し合い、意見を述べることがメインの仕事になります。

「諮問」と「答申」の意味とは?


文部科学省が行政機関で、それに対して専門的な意見を述べるのが中教審の役割です。文部科学省の大臣名で中央教育審議会に質問をすることを「諮問」といいます。そして専門家の間で議論し、答えとして出すものが「答申」となります。中央教育審議会は、30名ほどの大学教授やPTA全国会の会長、企業のトップなどから組織されています。

よく勘違いしやすいのが「答申」がそのまま「制度」に変わると思っている人がいることです。答申はあくまで中央教育審議会から出された意見になるので、意見を受けて文部科学省が制度化するのかどうかはそのあと決まります。

例えば、令和6年5月13日に公表され、報道もされた『残業代を支払わない代わりに一律支給する「教職調整額」については、現行の給料月額の4%から10%以上とする』についても、中央教育審議会の特別部会がとりまとめただけであり、制度化はされていません。予算などの確保が付いてから正式に制度化され、給与に反映されることになるので実はまだまだ時間がかかります。

参考文献:中央教育審議会 諮問・答申等一覧,文部科学省,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/index.html(参照2024-6-14)

中央教育審議会の「答申」が教員採用試験に出題される理由


なぜ、中央教育審議会の答申が教員採用試験でよく問われるのでしょうか。理由は、中央教育審議会の答申が、今後数年後の現場で活かされることが多いためです。
例えば、平成28年12月に出された『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号)』は、平成29年から31年に行われた学習指導要領の改訂に大きくかかわりました。つまり、未来の教育を担う指針が出されているのが答申であり、答申に対して「受験生が意識をもっているのか」「自分だったらどうするという考えがあるのか」ということを採用試験の面接官は聞きたいのです。

参考文献:幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号),文部科学省,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm(参照2024-6-14)

中央教育審議会の答申を受け文部科学省や自治体の施策が生まれる


中央教育審議会の答申が重要な理由の2つ目は、文部科学省や各自治体の教育施策は、答申を受けて作られていることが多いという点です。

一例として令和3年1月に公表された『令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号) 』において「小学校高学年からの教科担任制度の導入」ということが盛り込まれました。これを受けて各自治体や教育委員会では、高学年で教科担任制度を導入するための予算確保、人材確保に動き始め、早いところでは令和4年度から教科担任制度の導入がはじまりました。

また、同じ答申で「個別最適な学び」「協働的な学び」が強く示され、今、指導をしている学校でも実践をしている教員が増えているのではないでしょうか。

参考文献:令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号),https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm
(参照2024-6-14)

今年の採用試験前に見ておきたい資料は次の2つ

ここからは、令和6年度実施の採用試験を受ける際に必ず見ておきたい答申を紹介します。

受験校種を問わず見ておきたいのが令和3年1月に出された『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号)』です。

これからの学校教育全般に関することの手法や方針が示されており、校種や内容ごとに分けて記載されています。概要が端的にまとめられているのでぜひ読んでおきましょう。

この答申の重要なところは、3年前に出されているものなので、答申を受けて各自治体の教育ビジョンや各学校の現職教育目標などが設定されていることです。教員採用試験を受けるときには、受験する自治体から出されている「教育計画」や「教育方針」などから出題されることも多いです。答申を受けて、都道府県の方針、各市町村の教育方針と順に策定されます。大元にはどんなことが書かれているかを知っておくと、自分の受ける自治体の教育ビジョンも分かりやすくなりますよ。


2つ目は令和5年3月に出された「次期教育振興基本計画について(答申)(中教審第241号)」です。こちらはまだ出されたばかりで各自治体の教育方針などに反映されていないと思います。しかし、今後5年間の教育政策の目標と基本施策が示されています。

次の学習指導要領改訂や教科書改訂には、今回出された教育振興基本計画を反映した形になります。目標は全部で16が示されていますが、どれも大切な内容で基本施策に関しては各自治体や学校が重点的に取り組んでいくものが示されています。

答申は、学校関係だけでなく生涯学習や地域連携、スポーツ振興といった学校教育とは少し離れた内容も入っています。受験する人は、自分が受験する校種に当てはまる内容を見つけ、ポイントを覚えておくことが大切です。今の教育現場で行われている内容と異なるので、イメージが付きにくいかもしれませんが、将来の学校像であることを意識しましょう。

参考文献:令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)(中教審第228号) 【概要】
,https://www.mext.go.jp/content/20210126-mxt_syoto02-000012321_1-4.pdf(参照2024-6-14)

自分なら何ができるのかを述べよう

中央教育審議会の答申は、今後数年以内に学校現場に導入されてくることが示されていることが多いです。GIGAスクール構想もカリキュラムマネジメントも今の学校現場でよく使われている言葉は、かつて答申で出されたものです。答申を見ておくことは採用試験にも役立ちますが、日本の教育が将来どんな方向を向いているのかを知る手掛かりにもなります。

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