デジタル教科書とは?2024年度に本格導入!

文部科学省のGIGAスクール構想に伴い、各自治体で「デジタル教科書」の導入が進められています。導入の狙いは、新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の視点から、「児童生徒の教育の充実を図ること」「特別な配慮が必要な児童生徒(障害がある、日本語指導が必要などのケース)の学習上の困難を軽減させること」などがあります。

これまでは紙の教科書の使用が法律で定められていましたが、学校教育法等の一部を改正する法律(平成30年法律第39号)により、2019年4月からはデジタル教科書との併用が可能となりました。文科省は2024年度に英語、25年度に算数・数学のデジタル教科書の本格導入を目指しており、教職志望の学生の皆さんが現場に出る頃には、デジタル教科書は授業に欠かせないものになっているでしょう。ぜひ、記事を読んで使い方を参考にしてみてください。

参照:“https://www.mext.go.jp/content/20210325-mxt_kyokasyo01-000013738_01.pdf”学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン(R3年3月).文部科学省

参照:“https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/seido/1407716.htm”学校教育法等の一部を改正する法律の公布について(通知).(H30年6月25日).文部科学省

デジタル教科書の特徴とメリット

デジタル教科書は、GIGAスクール構想で一人一台端末が整備されたことに伴い、各自治体が導入を進めている最中です。

この教科書は、紙の教科書の内容を端末上で閲覧できるほか、動画教材音声教材といった豊富な学習コンテンツを備えているのが特徴で、例えば英語科では、ネイティブの発音を端末上で何度も再生することができます。見えにくい文章や図を拡大表示したり、カードやパズルをスライドさせて移動したりすることもでき、学習内容を視覚的に理解しやすくなるため、障害を持っていたり日本語が不自由だったりして授業についていくのが困難な子どもの学習に大いに役立ちます。

従来の学習と大きく変わる点としてさらに挙げられるのが「学びの蓄積」という点です。

新学習指導要領では、「個別最適化された学び」が一つのポイントになっています。この学びでは、一人一人が、自分に合った学習をしていく(例えば、基礎力が足らなければ初歩的な問題に、基礎が身に付いたら発展的な問題に取り組む)ことを重視しています。

デジタル教科書では、練習問題の取り組み状況や、正解数・誤回答数といったデータが残るため、これを基に自分ができていない問題を重点的に復習できるようになりました。さらに、今後はこの学習データとAI(人工知能)が紐付くことによって、学習者に合った問題をAIが判断し、提供することもできます。一斉指導ではできなかった一人一人に合った学びを可能にするのがデジタル教科書なのです。

使用上の注意点

デジタル教科書は便利な一方で、使用するのに注意しなくてはならないこともあります。

一つ目は、「画面の見過ぎによる視力低下」です。長時間にわたり、手元の教科書を近距離で注視し続けることは視力低下を招く恐れがあるため、文部科学省は教員たちに対し、「画面から目を離して、目を休める時間をつくる」「目と画面の距離を30センチ程度空けて、正しい姿勢で授業を受けさせる」といった指導を求めています。

デジタル教科書に限らず、端末を使用する上で「セキュリティ対策」「破損・故障」にも気をつけなければなりません。端末が盗難やハッキングなどの被害に遭えば、氏名やID、パスワードなどの個人情報の流出に繋がります。被害に遭わずとも、紛失したり、破損・故障したりすれば、自分のデジタル教科書での学習が中断され、せっかく蓄積された学習データを生かすこともできません。

導入を阻むコストの問題

義務教育の小中学校の場合、「教科書は無償」というイメージがあるかもしれませんが、それは紙の教科書の場合の話であり、現状ではデジタル教科書は有償となっています。

デジタル教科書の価格は、高いものであれば2000円程度のものもあり、これを全ての教科、さらに全校分を自治体が準備するとなると、数千万円から数億円の費用が発生することになります。これだけの費用を一自治体が負担をするのは困難なため、思うように導入が進んでいないのが現状です。

導入促進に向けて文部科学省は2022年度、実証事業として、希望する学校の一部の学年に、デジタル教科書の無料配布を開始しました。小学校5・6年生、中学校全学年、 義務教育学校、中等教育学校(前期課程のみ)および特別支援学校(小学部・中学部)の相当する学年が対象で、全学年に共通して英語の教科書を、中学校3学年には英語のほか希望する一科目の教科書を配布しました。

参照:“https://www.mext.go.jp/content/20211223-mxt_kouhou02-000017672_1.pdf”令和4年度 予算のポイント.(R4年3月22日).文部科学省

今後の教育界の流れは

先述した通り、現在は小学5年生〜中学3年生を対象に、文部科学省から1教科または2教科のデジタル教科書の導入が進められていますが、自治体によっては独自の予算で導入教科を増やしているところもあります。学校で実施されるテストもCBT化(コンピューターを使用した試験)が進められており、2023年度から全国学力状況調査の質問紙や英語のテストの一部はタブレット端末を用いたものが導入されます。

一方で学校現場では、従来の紙の教科書と、ノートを使った授業がまだまだ主流であり、デジタル教科書を用いた授業のやり方については実験中という学校が多いです。今後は、デジタル教科書を整備することに加え、指導をする教員、授業を受ける児童生徒たちが、新しい形の授業に対応していかなければなりません。教員の皆さんは、この記事で紹介したメリットや注意点を踏まえ、心づもりをしておくとよいでしょう。

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