「導入」で子どもたちの心を惹きつけよう! すぐ真似できるベテラン教員テクニック

あなたが「教えるのが上手!」と感じた教員の授業はどのような授業でしたか。

その授業は、説明が分かりやすいだけでなく、子どもたちが自然と発言する気が付くと子どもが引き込まれていく、そのような授業だったのではないでしょうか。

このような授業を実現するためにはストーリーが大切です。今回はストーリーの中でも授業づくりに大切な導入について解説していきます。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

学びたくなる「導入」で子どもを惹きつける

良い授業をする教員の共通点は展開のストーリー作りが上手なことです。例えば、本を読むときに最初の段階で引き込まれ、途中も見逃したくないような展開が続いていく、そのような話であれば興味をもって見続けてしまうのではないでしょうか。あなたの授業にもこの惹きつける要素を取り入れていきましょう。

授業は「導入→展開→まとめ」と大きく3つに分けて構成するのが基本パターンとなっており、特に「導入」が重要な役割を持っています。授業をスムーズに進められるかどうかは、いかに導入で子どもたちの関心を惹きつけられるかにかかっていると言っても過言ではありません。

導入のよくある悪い例と良い例① 疑問から入る

では、どのような導入であれば子どもたちをわくわくさせることができるのでしょうか。導入の入り方はいくつかあり、教科や学年によっても変わります。初めに紹介するのは、社会や理科などでよくみられる「映像」や「資料」を見て、子どもに疑問を持たせる方法です。

【悪い発問例】

『教科書の最初に掲載されている写真を見てどんなことに気づきますか?』

ついついこのような発問をする教員もいるのではないでしょうか。実はこの発問、あまりよくありません。こんな発問をすると子どもは資料のどこを見てよいか分からなくなり、いろいろな答えが出てきます。授業のスタートの段階で視点が拡散してしまい、収拾することが大変になります。導入はその時間勉強することに焦点化していくものがよく、拡散するような発問をすると収拾がつかなくなり、時間を要してしまいます。

【良い発問例】

『学校の外の景色と写真の景色で違うところはどこだろう』

疑問点を見つけさせたい場合には、比較対象になるものを準備しておくと子どもは見つけやすくなります。

導入のよくある悪い例と良い例② ズレから入る

疑問と少し似ていますが、段階的に学ぶことがレベルアップしていく算数や英語などで使える導入です。例えば、前時の学習が「三百四十五を数字で書く」といった内容の場合、次の時間は「三百一を数字で書く」という内容になります。(小学校2年生の算数 啓林館の場合)

ここで『前回の勉強とはどこが違うかな』と問いかけます。すると前回勉強しているので多くの子が解こうとすると思うのですが、なかなか正解を書くことができないことも多くいます。つまり、解けそうで解けない、ここに「思考のズレ」が生じているのです。そしてズレ(今回で言えば十の位に数字がない)ということを全員で確認する。これだけで子どもは興味をもって取り組むようになります。

導入のよくある悪い例と良い例③ 前回(単元)の復習から入る

授業の上手な教員は「前回の復習」から導入を作っていくことが多いです。復習をしながら子どもの理解度を確認し、今回の授業の「めあて」を提示します。ただし、教員がいきなり「めあて」を提示するのではなく、子どもの既習知識(復習内容)を活かしながら「めあて」を作るところがポイントです。

もちろん、子どもに質問するときには前回の今回の違い(ズレ)や疑問点に気づかせるような発問をします。こうすることで、教員から示された「能動的なめあて」ではなく、子どもたちが作り上げた「主体的なめあて」に沿って学習を始めることができます。

授業の展開では「問い」を連続させる

かつて授業研修で講師に言われたことが「問いの鮮度は15分」という言葉です。子どもの集中力は長く続きません。45分の授業をするのであれば、最低でも3回は問いを入れて展開を作っていくのがよいです。だからこそ、授業展開中に2回の発問(これをよく「主発問」と「補助発問」と呼びます)どちらを先にもってくるかは授業の内容によって変わりますが、先ほど紹介した小学校2年生の算数の例で言えば

【補助発問】見えない位の数字はどうかくとよいのかな

【主発問】数字を漢字に直し、漢字を数字にしてみよう

このように発問して展開をする方法があります。

補助発問を入れることによって見えない位の数字は「0」を入れるという知識を全員で確認します。そして「獲得した知識」を実践で使えるように「漢字読みを数字に直す」練習をすることと、逆もできなければいけないので「数字を漢字に直す」練習もします。このように1つの授業の中に「問い」を入れ続けることによって子どもは常に考えることをしなければいけません。経験の浅い先生は授業案を作っていくときに

・問いが3つ以上含まれているか

・問いの内容が授業の中でストーリーになっているのか

この2点を意識するだけでも子どもの姿勢は大きく変わります。

流れ作りには導入が大切

「子どもが授業に集中することができない」、「すぐに別のことをやり始めてしまう」、経験の浅い教員にとって一度は授業中に感じたことがある悩みではないでしょうか。そんな教員は一度、授業の導入段階から見直してみましょう。

導入をするときに

・教員主導で復習をしているだけではないか

・子どもが興味・関心を持つ揺さぶりをしているか

この2つを意識するだけで、授業のつかみはOKになります。

ただし、どんなによい導入をしても、その後でただ音読をしているだけ、ただ問題演習をしているだけでは子どもは飽きてしまい他のことをはじめます。だから導入を始めて15分以内に子どもを揺さぶり、考えさせるような2つ目の質問を用意しなければいけません。1回の授業を通して、3回は子どもが考え、揺さぶられるような場面を作りましょう。

新しい学びは子ども一人一人が主体的になる

文部科学省は、「個別最適な学び」「協働的な学び」を前面に打ち出し、個別最適な学びでは「学びの調整」ということも示されています。学びの調整とは、子ども自身がその時間で学ぶことの目標(めあて)を決めて、主体的に取り組み、最後の到達できたかどうか振り返る学び方です。従来の教員が一律に「めあて」を決めて取り組むわけではないので、一人一人ゴール目標が変わってきます。

個人で目標を立てるので子どもが主体的に取り組みやすくはなりますが、教員は学びのサポート(支援)をすることが求められます。授業の導入も、一人一人が目標を立てるのに房を強い導入をしなければいけなくなるので、これまでよりも教材研究が大切になります。

日常とリンクする導入を取り入れて子どもがわくわくする授業をしよう

全国学力テストの質問紙の結果やPISA2022の結果を見ると、日本の子どもたちの学習傾向の特徴として「日常生活に学校の学びを活かしているか」という点で関心の低い傾向があります。

小学校段階では、日常的に使う時計やお金の計算、漢字などを習得するため、日常生活と関連付けて考えられていることに対して、中学校、高等学校では学校で学んでいることと日常生活で関連づけて学ぶことができていない人の割合が増えてしまっています。

学習の導入は、学びが日常でどのように使われているのか、日常生活の中で役立っている部分から興味を引き付けるのにとてもよいところです。授業案を考える際には、「どう導入するか」ということを意識してプランを組み立てると授業の質がぐっと良くなるのでぜひ実践しててください。

最新情報をチェックしよう!