学期末の3月頃には、引継ぎがおこなわれます。次年度の学級編成に向けた準備や会議が1月頃から始まり、小学校から中学校への校種をまたぐ引継ぎは2月頃、校内での引継ぎは異動が判明し、おおよそのクラス担任が分かる3月中旬から末にかけて行われるのが一般的ではないでしょうか。
次年度への引継ぎは重要な作業です。十分に引継ぎがされていないと保護者ともトラブルになるケースもあります。今回は、「子どもの情報」の引継ぎの中でも絶対に落としてはいけない5つのポイントについて紹介します。
ライター

emikyon
・元公立学校教員
・教育委員会にて勤務
・eduloライター歴2年
必ずチェックしておくべき5つの情報とは?
引継ぎの準備と言っても「何をすればよいのか分からない」という教員も多いのではないでしょうか。そこで今回は、「引継ぎミス」に起因するトラブル事例から特に重要な5つのポイント紹介します。
子どもの命に関わるアレルギー情報
引継ぎで一番大切なことは、子どもの命に関わる情報です。特に「アレルギーに関する情報」はしっかりと引継ぎをする必要があります。
管理職や養護教諭だけが知っていればよい情報ではなく、学級担任、学年担当の教員も知っておくべき情報です。
アレルギーの中には運動をすることによって、アナフィラキシーショックを引き起こすものもあります。担任として運動誘発をする可能性があり、午後に体育の授業を入れないようにしていた、昼休みの活動は控えるように指導をしている場合には、必ず引継ぎ項目に入れておきましょう。
過去のアレルギー情報も忘れず引継ぐ
経口免疫療法などによってアレルギーを克服する子も高学年や中学校に行くにつれて増えてきます。克服をした段階で引継ぎされないこともありますが、克服後のトラブルも起きているため注意が必要です。
例えば、
・過去にアレルギーがあったが克服したと思ったのに再発してショック症状になった
・運動誘発によって昔のアレルギーが出てきた
このようなケースはよくあります。「克服=解消」だから引継ぎをしないというのではなく、数年間は情報として引継ぎができるようにしておきましょう。保護者の中には「小学校1年生のときに話をした=中学校まで引き継がれる」と解釈している人も多くいます。
参考文献:食物依存性運動誘発アナフィラキシー,食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版,https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_13.html(参照 2025-2-14)
発達障害や身体の障害にかかわる情報
2つ目が「発達障害」や「身体の障害」に関わる情報です。発達障害に関しては、診断名が付いていれば「個別の指導計画」「個別の支援計画」の作成が義務付けられているので、作成された書類の引継ぎにあわせて行われると思います。
ここで気をつけてほしいのは、発達障害ではないものの「グレーゾーン」と言われている位置にいる子どもたちの情報です。
「ちょっと落ち着きがない」「立ち歩いてしまう」など、普段の学校生活の中で「ちょっと気になる子ども」に関する情報は、引継ぎをするのか迷うレベルになります。そんなときには、以下の優先順位で必要な部分を決めて引継ぎしましょう。
・保護者から「気になる」として情報を得ている
・周囲の教職員から「気になる」として挙がっている
・自分(担任)として「気になる」リストに入っている
保護者から担任言われた話は、保護者側から見ると「学校全体に伝えてある」と解釈してきます。そのため、引継ぎ事項の順位としてはかなり高くなります。同様に第三者(他の教職員)からの情報も客観的な意見で、他の子どもと比較しての違いを示していることも多いので重要な情報として引継ぎをしましょう。
参考文献:第5章 小・中学校における個別の指導計画,国立特別支援教育総合研究所,https://www.nise.go.jp/josa/kankobutsu/pub_c/c-57/c-57_05.pdf,(参照 2025-2-14)
「いじめ」「人間関係」の情報
3つ目が「いじめ」を含めた「人間関係」に関する情報です。学校では、人間関係に配慮してクラス編成のときに「配慮をした編成」をすることがあります。翌年のクラス編成は、その年にもった教員がクラス編成をするため、人間関係を熟知して編成しますが、このときに抜けやすいのが「過去の情報」です。
人間関係の情報はずっと蓄積されてきますが、小学校1年生に配慮していたことを6年生まで配慮し続けるのは非常に難しいです。ただ、いじめや不登校につながるような重要な人間関係に関する配慮事項は継続をしなければいけません。そこで、可能であれば学年の引継をする前に「人間関係に関する情報」を整理しておく必要があります。
特に、過去に保護者からの訴えで配慮をしていた項目に関しては、「ずっと配慮し続けてくれる」と思っている保護者もいますし、「次年度だけ」と思っている人もいます。
過去の情報を蓄積し続けていくと高学年や中学校にあがったときに
・重要な情報はどれなのか
・最新の情報は何なのか
・誰からの情報なのか(保護者や教員等)
といったことが曖昧になりがちです。
人間関係に関する情報に関しては、年度の変わり目の際に整理しておき、継ぎミスをなくすようにしましょう。
外部機関とのつながりのある子どもの情報
次の引継ぎポイントは「外部とのつながりのある子ども」の情報です。
子どもの中には
・発達障害に関する受診で医療機関に通っている
・身体の健康に関する問題で医療機関に通っている
・他校の通級教室に通っている
・児童館や児童クラブ、放課後デイサービスなどに通っている
など
学校外でさまざまな外部機関に通っていることがあります。中には授業を休んで通わなければいけなかったり、学校後に通ったりするなど、学校との連携が必要になってくるものもあるので、外部機関とつながりのある児童生徒情報は引継ぎをしましょう。
年度替わりの時期は、外部機関との連携が切り替わる時期でもあるので、事前に保護者に「次の年度はどうなるのか」情報を得ておくと引き継がれた教員が安心します。
貧困やモンスターペアレンツなど家庭にかかわる情報
最後に、保護者や家庭に関わる情報です。「準要保護家庭」や「要保護家庭」、集金が出ない家庭などの情報、学校に対して過剰な要求をしてくる保護者に関する情報も引継ぎをしておきます。
引継ぎをしたから何かが変わるというわけではありませんが、担任一人の負担になることがないよう学年全体でサポートをするために、情報共有が必要です。
ただ、保護者に関しては担任やクラスが変わったりすると対応が変わる場合もあります。先入観を与えすぎないように、あなたの主観ばかりの情報にならないように気をつけましょう。
情報は前担任に必ず確認 必要があれば新学期早々に保護者と情報共有準備をしよう!
新年度が始まったらすぐにクラスの子どもたちの情報を確認します。前担任から引継ぎをする時間を確保している学校もあれば、していない学校もあります。また、前担任が転勤や退職をしてしまうと新年度の引継ぎができないこともあります。こういった場合に備えて事前に引継ぎがスムーズにできるよう準備しておきましょう。
アレルギーや発達障害に関することなどで不明なことや保護者と確認するようなことがあれば、新担任の発表後にすぐ動き出すことができるように心づもりをしておくことも大切です。