学生・初心者向け!教育論文の書き方

初めて教員論文を書く方の中には、正しい書き方が分からず、悩んでしまう方もいるのではないでしょうか。

論文といえば、学生時代の課題や卒業論文をイメージする方も多いと思いますが、実は、教員として働き始めてからも教育論文という形で何度も論文をする機会があります。

教育公務員特例法においても「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」と示されている通り、教員として指導をしながら、その中で得ることができた成果を論文にまとめることが求められています。

法定研修である「初任者研修」や「中堅教諭等資質向上研修」の一環として論文課題を課されることもあるので、教員論文の書き方の基礎を知っておきましょう。

今回は教員論文初心者でも取り組みやすい書き方のポイントを詳しくご紹介します。

参考文献:地方公務員特例法,文部科学省,https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kenshu/012.htm(参照2024-07-18)

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

教育論文の書き方のポイント

①実態の把握

論文執筆のは実態の把握から始まります。学校であれば、どのような子どもたちがいるのか、成績はどれくらいなのか等です。ここでしっかりと実態を把握できていないと、後の検証のときに苦労することになります。

「他のクラスに比べて落ち着きがない」「言葉遣いが悪い」のような主観的な判断に基づく把握ではなく、「全国の平均点から〇点低い」「Q-U検査による不満足軍の割合が」といったように数値データに基づく実態把握をしましょう。

何度も書いているうちに主観的な実態でも客観的に評価できるようになりますが、論文の執筆経験が少ないうちは数値データで把握することがおすすめです。

②問題点(課題)

次に、実際調査に基づき、課題となる問題点をはっきりとさせます。問題点は「何とかしたい」「もっと伸ばしたい」と自分が思っている部分です。このとき、広く問題点をとらえると調べる範囲も広くなってしまうため注意が必要です。

例えば「国語力がないので伸ばしたい」という問題点では、広く、曖昧です。国語の中でも「読解力」「語彙力」「話す力」などいろいろとあります。問題点を広くすると検証方法の数も広がり、最終的に説得力がなくなってしまいますので、実態に即して狭めることがポイントです。

③仮説・手立て・実践の一貫性

3つ目のポイントが論文のメインになる仮説・手立て・実践の一貫性です。②の問題点を解決するため「仮説」を立てて、検証するための「手立て」を立てて「実践」します。ここで分かりやすくするために、必ず一貫性があるように記述することが大切です。

一般的に仮説を検証するために複数の手立てを打つことがあります。そして、それぞれについて結果を書くのですが、書くときにばらばらになってしまい、どの手立ての実践なのか分からなくなると非常に読みにくい論文が出来上がります。中には、実践の中に実践結果を含めてしまう人もおり、これも読みにくい論文になります。

読み手としては仮説に対応する「手立て①と実践①」「手立て②と実践②」が並んでいるほうが分かりやすく、論文を書くときにも書き順を意識するとよいです。できれば、「研究構想図」のような研究を図式化したものがあるとより分かりやすい論文になります。

参考資料2:研究構想図,石川県教員総合研修センター,https://cms1.ishikawa-c.ed.jp/fukuoe/wysiwyg/file/download/1/768(参照2024-07-18)

④読み手を納得させるための検証結果

論文と報告書の一番の違いは「客観的な指標」に基づく検証です。論文は、読んでいる人を納得させるための「結果」が必要になります。どんなに素晴らしい手立てをうっても検証がしっかりしていなければ、読み手は納得しません。

ここで気を付けたいのが、自分がイメージした「結果」とならなかった場合に、それをぼやかしたような数字にしないということです。

例えば、『国語の漢字テストで全員90点以上取らせるために、毎朝、漢字プリントを1か月5問ずつ実施する』そんな仮説と手段をして得られた結果が『40人中38人が90点以上であった』

このような検証結果になると目的を達成できなかったので「多くの人の点数が上がった」というような、ぼやかした結果にしてしまう人がいます。これでは読み手から見ると手立てが、有効だったか分かりません。

例えば上記の場合には、

・前回の漢字テストの平均点と比べた数値

・前回の漢字テストの90点以上を獲得した子どもの数との比較

・前回の漢字テストの80点以上を獲得した子どもの数との比較

・特定の児童(抽出児童)の点数の変移

このようなデータを出してみましょう。90点以上の子どもの数に縛られると、他の検証をすることができず、結果が曖昧になります。

研究をスタートするときには、理想の結果が出ることを想定してスタートするかもしれませんが、理想的な数値が出ないときにどこまで検証するのか想定して、検証方法を準備しておくことも大切です。後から検証結果を取り直すことは難しくなるので、少し余分にデータを取っておく心づもりをしておくとよいでしょう。

⑤研究主題

5つ目のポイントが研究主題です。いわゆる論文のタイトルになるものでもあり論文の一番短い要旨になります。自分の研究意図を端的に伝えるので次の3つを取り入れて書きましょう。

まず、「めざすゴール(姿)」です。この研究で最終的にどんなものを目指すのかを入れます。次に「対象領域(分野)」です。何の分野の研究なのか、理科の授業や幼児教育などそれぞれの分野になる言葉を入れます。最後に、「手立て(方策)」です。研究をするのにどんな手法を取っているのか、何を使って研究するのかという点です。この3つが含まれた研究主題になると読み手の分かりやすい主題が出来上がります。

自分の考えをしっかりと述べ、読み手が納得できる論文にしよう

「良い論文」と「悪い論文」の決定的な違いは、読み手が納得できるのかどうかです。手立てが多すぎると問題の解決に本当に役立っているか分かりにくく、検証の結果が数値的な根拠に基づいているものでないと疑いを持たれるになります。教育論文では「子どもの感想や意見」といったものを掲載して根拠にし、筆者の考えを述べているものが多くありますが、意見や感想を読み取る部分には主観的が多く含まれており、客観的なデータに比べると弱くなります。論文を書くときには「客観的なデータや数値をもとにして、主観的な考えを述べる」これを意識するだけでも良い論文になります。

論文を書くことは自分の成長に繋がる

学生の中には卒業論文のようなものは、社会に出てから必要あるの?と疑問に思っている人もいると思います。実は、論文は論書く過程が一番重要です。

仕事をする、教育をする、どちらにしても、何らかの目的に向かって準備し、実行することは多くあります。そして、終わったら終了ではなく、より良いものを作るためのフィードバックが重要なことはどの業種でも言われることです。この流れは論文を書いていく過程とほぼ同じであり、一本の筋を通して目標立てから最後のフィードバックまでたどり着かないと途中で迷走することになります。筋の通った論文を書くこと、各プロセスを学ぶことは将来の自分に大きくプラスになると思って取り組みましょう。

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