教育実習生必見!教材研究って何をすれば良いの?

実は、教員は事前に準備をせずに授業を行うことはありません。忙しい毎日の中でも、必ず「教材研究」をしてから授業をしています。

では、なぜ教材研究をする必要があるのでしょうか。今回は、教員志望者や若手教員のために教材研究の意義教材研究をする際に気をつけるポイントを教育実習の指導教諭経験のあるベテラン教員が解説します。教材研究の時短術も紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

教材研究のねらい

「教材研究を十分におこなってから授業に取り組む」とよく言われますが、なぜ教材研究する必要があるのでしょうか。たくさんの理由がありますが、大きく分けると下記の3点になります。

 ① 授業で付けさせる力(目標)を決めて、児童生徒に最も効果的な「手立て」を考える

 ② 安全に関わることを確認し、児童生徒に事故や怪我がないようにする

 ③ 指導と評価の一体化をする

教科による特性もあり、体育の実技や理科の実験等においては②の「安全に関わること」が重視されますが、大切なのは①の「目標と手立て」と③「評価の一体化」です。教材研究がしっかりとされていないと、子どもへの指示や発問も曖昧になり、最終的に子どもがどんな授業だったのか分からないものになってしまいます。

教材研究は何から始めるの?

これから初めての教育実習を控えている学生さんにとっては「教材研修って何をするのだろう」「何を参考にするべきなのだろう」などの先の見えない不安を感じているのではないでしょうか。これから紹介する教材研究のポイントを押さえれば効率的に良い教材研究できますよ。

手順① まずは教科書を見よう

教材研究をする1つ目のポイントがまず教科書をまっさらな気持ちで読むことです。教員も大学生もある程度の社会経験、知識があるため、先入観というものがあります。例えば「5×5=25というのは当たり前」こうした知識があると教えるときに邪魔になります。知識を付けさせるために授業をするので、知識がない状況でどう教えているのかを教科書から読み取る必要があります。

手順② ゴール(めあて)をイメージしよう

次に、教科書を見て「この授業で教えてたいことは何か(子どもにとってのゴールは何か)」をイメージします。ゴールが決まれば、それがその授業の「めあて」になります。

手順③ 単元全体を見る

次にやることは、指導する授業の前と後の内容を確認することです。先ほどの「5×5=25」の計算は小学校2年生の九九で学びますが、前の時間は「倍の意味とその見方、2倍や3倍、1倍」、次の時間は「 2の段の九九の構成」とつながっています。(啓林館の算数教科書の場合)授業は前時、次時とつながっているのです。そこで

 ①前時で何を学んでいるのか

 ②前時学びを本時でどう生かすのか

 ③本時の学びが次時にどうつながるか

最低でも前後1時間(余裕があれば単元全体)の流れを確認すると授業の内容がぐっとよくなります。教育実習生の指導をしていたときに、教材研究の最初に話したのはこのポイントです。

実習生は1時間しか授業をしないため、単発の授業と考えてしまいがちですが、子どもにとっては一連の流れの中の「一授業」になります。流れと反する教え方をしてしまうと後になって修正する(子ども自身が)のも難しくなることを理解しておきましょう。

手順④ その時間の「目標」と「評価」を確認する

続いて、授業の「目標」と「評価」を確認します。各学校で決めている「学習カリキュラムの一覧」や指導書などを見て確認をしましょう。

目標は、1時間のめあてと同じになるので2-1で自分が作成した「めあて」と同じになっていれば完璧です。異なっている場合には、今一度「2-1」で作成した「めあて」を見直しましょう。また、評価も大切なポイントです。評価はテストで行うだけでなく、1時間1時間の授業後にも行わなければいけません。教員が定めた目標に対して、「A」「B」「C」という子どもの達成基準を明確にしましょう。

ここまでが、初めて教材研究をする人が見落としがちなポイントになります。このポイントを押さえずにいきなり授業の展開を考えると、スタート後、ゴールが決まらずに授業展開を考えてしまうため、柱のない授業になりがちです。こうした授業を筋がない授業と言う教員もいます。柱がないと途中で子どもたちの思考が変な方向にぶれたときの修正が難しくなりますし、教員も授業中に何をしてよいのか分からない授業になります。

ある程度の人数を指導してきた教育実習の指導者であれば、上記のポイントとその意図を説明してくれますが、初めて実習生に指導する教員は忘れている可能性もあります。実習生もなぜ、指導案が直されるのか分からずに、指導者に対して不信感をもつことにもつながりかねないので、教材研究をする際には、4つのポイントがあることを押さえておきましょう。

参考文献:啓林館 小学校算数2年生 令和6年度版「わくわく 算数2下」年間指導計画案,https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/sho_r6/sansu/file/sansu_guidance_plan02.pdf(参照2024-8-10)

授業のメインである「指導展開」を考える

授業の柱がわかったら、次に指導展開を考えます。指導展開は「導入→展開→まとめ」を基本の流れとして、教科書に沿った流れを考えます。教育実習生の中にはいろいろなアイディアを入れ込みたいと思う人もいるかも知れませんが、それは基本的な流れができるようになってからおこないましょう。

例えば、独自のアイディアを「展開」部分に盛り込んでしまうと、子どもたちに発展性のない指導をしてしまう可能性も出てきます。このような指導をしないためにも前時と次時の内容を知っていることが大切なのです。

もしも、アイディアを盛り込むとしたら「導入」がおすすめです。子どもの興味関心、授業に取り組む気持ちを高める導入は、展開につながるものであればどんなやり方をしても良いところです。教員は「前時の復習」から入りがちですが、導入に子どもの興味関心を引き付けるようなものを取り入れると展開をやりやすくなります。

教材研究の時短術

教材研究にかける時間は、かければかけるほどよいものになります。しかしながら、教員経験のない実習生にとっては、知らないことや予想もつかないことが多くあるので、やり始めたらきりがなくなってしまうでしょう。さらに、実習生は教材研究以外にもしなければいけないことが山ほどあります。

教材研究にかかる時間を短縮するために期限を設けることが有効です。まずは、1つの目安として教材研究に当てる時間は1時間と決めてしまいましょう。研究授業になればもう少し時間をかける必要がありますが、普段の授業に入るのであれば1時間で良いでしょう。上に記したポイントを押さえて効率よく授業案を作れば1時間で作成することができます。

教育実習前にある程度作戦をたてることもおすすめです。教育実習の担当学年は、実習前に知ることができます。また、授業もどのあたりを行っているのか、指導教官に聞けば分かるはずです。教育実習を上手に行う実習生は、事前に必ず準備をしてきます。実習に入ってしまうとなかなか時間を取ることができなくなるため、実習前にある程度の教科書を読んだり、指導書を読んだりといった教材研究や授業計画をしておくと良いです。自ずと指導教官がどのようなことを大切にして授業をしているのか分かってきます。実習前に授業準備をすることができるように指導教官とコミュニケーションを取ることも教材研究の時短技です。

ポイントを押さえて効率的に教材研究をしよう!

教材研究をする際には、手順があります。特に、授業のスタート(目標)とゴール(評価)が分かりにくい授業は子どもが混乱してしまいます。しっかりと目標とゴールを子ども目線で定めるためにも、これまで自分が培ってきた「先入観」や「自分が学んできた当たり前」は捨てましょう。学生さんが学んできた頃とは教科書の中身も指導内容も変わっています。今一度、まっさらな気持ちで教材に向き合うとよい教材研究をすることができますよ。

 

最新情報をチェックしよう!