教員生活45年のうち、最後の22年間は大学の附属校に勤務しました。今回はそこで感じたこと、考えたことから、わが国のこれからの中等教育について話します。
みなさんもよくご存じのように、わが国は義務教育9年間ですが、初等教育6年、中等教育6年という捉え方もあります。中学校は前期中等教育、高等学校は後期中等教育です。諸外国ではさまざまな学校教育体制がとられていますが、わが国は戦後、一貫してこの体制です。そして、同時にいろいろな課題も抱えてきました。
2015年のOECDの報告では、中等教育機関における若者にとって、認知的スキルの習得はもちろんのこと、非認知スキルである社会情動的スキル(Social & Emotional Skills)の重要性が述べられています。
そして、わが国の中高生は、学力水準は高いけれども自己肯定感、リスクを恐れない挑戦力、自己表現力などが弱いと指摘されています。
これにはいくつかの要因が考えられますが、その一つとして大学入試制度が挙げられます。第6回では高校改革として専門学科高等学校や高専の重要性を述べましたが、普通科も含め、上級学校への進学においては大学入試制度の問題が重要です。現在、各大学では入試改革を進めており、かつての筆記試験のみの形態からどんどん変わっていますが、やはり高等学校の教育に大きな影響を与えていることは確かです。
すなわち、入試科目にない科目の勉強がおろそかになるということです。
高等学校における文理分けのカリキュラムは、そのような大学入試科目を視野にいれた学校の対応であり、多くの学校では高校2年生あたりで文系コース、理系コースに生徒を振り分け、理科・社会の選択だけでなく、数学の単位数にも軽重をつけています。極端にいえば、文系コースの生徒は3年生では数学を履修しないことになります。
最後に勤務した高等学校は大学の附属校であり、ほぼ100%の生徒がその大学へ進学する学校でした。つまり、大学入試を経ずに高等教育(大学)に進むことができる「高大一貫校」のシステムです。そこでは、大学入試にとらわれず、文理を意識しないカリキュラムを編成することができました。例えば、一部を除きほとんどの生徒が数学Ⅲまで履修しました。
これからの時代は、学問体系においても社会活動においても、文系・理系という分類はあまり意味を持たなくなっています。数学に関していうと、数学そのものや数学的思考力はすべての人にとって大切な能力です。さらには、個別教科だけでなく、教科を横断して学ぶ「探究学習」などの活動もますます重要になっています。すなわち「正解を出す教育」から「問いを立てる教育」への転換が求められているわけです。
中等教育の改革にはさまざまな課題があります。第6回で述べた専門学科高等学校の充実、そして今回取り上げた大学入試改革などです。教育をめぐるこれらの問題は、今後ますます重要になってくると感じています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。次回もまたお会いしましょう。