前回お話したように、2001年4月に赴任した高等学校は神奈川県央に位置し、近隣には愛川町がありました。この町は戦後、内陸工業団地が造成されて多くの企業が進出し、外国の方々が多く住居を構えるようになりました。
当初は韓国・朝鮮や中国にルーツを持つ方々が多かったようですが、1980年代以降、神奈川県がインドシナ難民を積極的に受け入れたことにより、カンボジアやベトナムなど東南アジア諸国からの人々が増えてきました。
さらに、入国管理法の改正などにより、特に南米系日系人労働者の受け入れが進み、ブラジルやペルーの人々の割合も増えていったようです。このような状況のなかでは、外国にルーツをもつ子どもたちへの教育が不可欠となります。
私がこの学校で担任したクラスにも、韓国、ペルー、ブラジルにつながりを持つ生徒がいました。彼ら彼女らは、小・中学校では日本語指導を含めて様々な手厚い指導を受けてきたようでしたが、高校進学についてはかなり不安だったと聞きました。学力の問題だけでなく、進学情報の収集など様々な面で心配を抱えていたようです。
高校生になる頃には言語の問題はかなり解消していましたが、当時のこの高等学校では取り出し授業などの手厚い対応は十分とは言えず、生徒たちは卒業後の進路などにも不安を抱えていました。日本語が不自由な保護者もおり、三者面談などでは苦労した記憶があります。現在では、この地区も含めて県内のいくつかの高等学校で、外国にルーツをもつ生徒に対する先進的な取り組みが行われていると聞いています。
神奈川県は、この問題に対して全国に先駆けて取り組んできました。愛川町だけでなく大和市における、ベトナム戦争をきっかけとしたインドシナ難民受け入れに伴う「大和定住促進センター」の開設など、先進的な取り組みは有名です。日本語教育だけでなく、社会適応訓練や就職斡旋事業などに、行政だけでなくさまざまなボランティア団体も支援に参加したと聞いています。そして、外国にルーツをもつ子どもたちが就学するようになると、県教育委員会もこの問題に積極的に取り組んだ実績があります。私がかつて勤務した県立教育センターにおいても、国際教育プロジェクトを重要な取り組みと位置づけ、外国にルーツをもつ子どもへの支援教材などを開発しました。
現在、世界各国で移民や外国人に関する議論が政治的に大きなテーマになっています。わが国でも、移民や外国人労働者に関する課題が全国的に広がり、重要な問題となっています。欧米に比べて移民が少なかったわが国において、これから増えていく外国の方々との「共生社会実現」に向けて、外国にルーツをもつ子どもたちへの教育の取り組みはますます重要になってくると感じています。
これまで振り返ってきたように、外国にルーツをもつ子どもたちの不安に寄り添い、適切な教育環境を整えることは、日本が目指すべき「共生社会」を築くための大切な第一歩です。神奈川県での実践や、教育現場での試行錯誤から得た教訓を活かし、多様な背景を持つすべての子どもたちが安心して学び、未来へ羽ばたける社会をこれからも皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
また次回もお会いしましょう。