ニーズ高まる通級指導教室 ポイントをおさらい!

障害を持つ子どもが教育を受ける際の選択肢として、特別支援学校や特別支援学級(支援級)を思い浮かべる人は多いでしょう。

これらに加え、近年ますますニーズが高まっているのが「通級指導教室(通級)」。通常学級に在籍しているが、学習面やコミュニケーション面などで一部発達に遅れが見られる子どもたちのために、障害に応じた指導を行う教室です。今回は通級の特徴や、教員側が気を付けるべきポイントを紹介していきます。

通級指導教室とは?

通級は支援級と同様に一般の学校内に設置されています。支援級とは異なり、子どもたちは通常級に在籍しながら一部の授業を通級で受けます。指導を受けることができる時間は年間35時間(週1回の通級)から年間280時間程度(週8時間程度)まで選択することができます。通級による指導を受けている子どもの人数は年々増加しており、令和2年度には過去最多の164,697人となりました。

参照:令和2年度 通級による指導実施状況調査.文部科学省. R4年7月

しかし、通級を設置していない学校もあり、その場合は他校で通級指導を受けること(他校通級)ができます。自校の授業を休んで通うことになりますが、通級指導を受けた分は自校での出席扱いとなります。

通級に通うには?

通級の対象となる障害は「情緒障害」「言語障害」「自閉症」「LD」「ADHD」「弱視」「難聴」「肢体不自由」「病弱及び身体虚弱」の9つで、知的障害は含みません。入級するにあたり発達障害の診断を必要としない自治体は多いですが、行政上の手続きは欠かせず、各教育委員会が行う就学相談にも参加しなければなりません。

また、教員側が最も気を付けるべきことは、通級をむやみに勧めないこと。通級は、特別なサポートを求めている子どもとその保護者に手を差し伸べるためにあります。相談を受けて通級を提案するのは問題ありませんが、決して教員による差別や偏見で通級を勧めてはいけません

メリットとデメリット

通級のメリットとしては以下のような点が挙げられます。

  • 少人数または個別指導で、ケアが行き届きやすい

通常級の担任はクラスの子ども全員に平等に接さなければならず、支援を必要としている子のケアに手が行き届かないことがあります。一方、通級は少人数または個別で指導するため、一人一人の障害に寄り添うことができます。

  • 子どもの自己肯定感を上げられる

通常級は集団行動が基本です。しかし、障害を持っている子は他人と足並みを揃えることが難しく、教員から繰り返し注意を受けてしまいがちです。通級は、その子の障害やペースに配慮した指導を行うため、一つずつ苦手を克服し、「やればできる」という成功体験を増やしていけます。

  • 障害に適した専門的な指導を受けられる

通級を担当する教員に特別な資格は必要ありませんが、実際に受け持つ教員の多くは特別支援や障害に関する専門知識を持っています。また、通級専用の特別な教材を使用するため、子どもの苦手な部分を補った指導ができます。

  • 多くの子どもたちと変わらない学校生活を送れる

通常級に在籍しているため、普段から大勢のクラスメートと交流でき、集団行動での振る舞いを身に着けることができます。また、通常級と通級を行き来するため、通常級内での人間関係を維持したまま指導を受けられます。

一方、デメリットは以下の通りです。

  • 通級がない学校がある

先述した通り、通級は全ての学校にある訳ではありません。近年、通級を設置している学校は増えつつあるものの、子どもたちの需要に追いついていない現状にあります。他校通級するには保護者の送迎が必要で、移動時間もかかります。また障害種によっては、一つの自治体内で対応できる教室が極端に少ない場合もあります。

  • 周囲の目が気になる

通級に通う子どもは、学校生活のほとんどの時間を通常級で過ごします。一部の授業の時だけ通常級を抜けて通級に通うため、クラスメートから疑問を持たれてしまう場合があります。通級と通常級を気持ちよく行き来するためには、クラスメートたちからの理解が必要となります。

教員側が注意すべきポイント

教員は子どもたちの障害の有無に関わらず、一人一人の得意不得意をきちんと把握することが大切です。その時々で判断して厳しく叱責したり、あるいは自信につながるように気遣ってあげましょう。特に配慮が必要だと感じる子がいて保護者も不安を抱えているようであれば、寄り添って相談に乗りましょう。

また通級と通常級とで、教員同士の「連携」も欠かせません。普段過ごしている時間は担任の方が長く、その子の性格や個性については担当教員よりも詳しいと思います。一方、通級で行われている授業内容や、日々の成長具合については担当教員がしっかりと記録しています。綿密に情報を共有し、無理なく学級を行き来できるようにしてあげましょう。

そして何よりも最優先すべきは、子どもの気持ちです。障害によって「思い通りにいかない」「イライラしてしまう」など、子どもたちは漠然としたストレスや不安を抱いています。その子自身や、保護者はどうしたらよいか分からず、心細く感じています。教員側は、子どもたちが安心できる環境を提供し、落ち着いて能力を伸ばせるように支えていきましょう。

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