【男性教員の育休】男性教員の育休取得の現状や育児・介護休業法の改正ポイントについて解説

ここ数年、企業や社会風土の変化によって大きく取得率を増やしているものの1つに「男性の育児休業取得率」があります。

公務員の世界でも男性の育児休業取得に向けた取り組みは推奨されており、男性教員の育児休業取得者も増えています。今回は、育児休業のルールや育児にかかわる働き方について解説していきます。

育休取得のメリットや、取得の際の注意点は、『【男性教員は育休できるのか】メリットや気になるお金事情について解説』をご覧ください

育児短時間勤務制度については『「育児短時間勤務」とは?仕事と育児を両立しよう!』をご覧ください

ライター

emikyon

・元公立学校教員

・教育委員会にて勤務

・eduloライター歴2年

厚生労働省の2022年度(令和4年度)の調査によると全職種対象の調査において男性の育児休業取得率は17.1%女性の育児休業取得率は80.2%となっています。男女で差があるように感じますが、男性の育児休業取得率は、10年前の2012年が1.9%と比べると大幅に上昇していることが分かります。男性教員だけを見ると育児休業取得率は9.3%(令和3年の調査)と、全職種の男性の育児休業取得率よりも低い結果とはなっていますが、様々な取り組みにより年々増加傾向にあります。

参考文献:「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値),厚生労働省,https://www.mhlw.go.jp/content/001128241.pdf(参照2024-06-24)参考文献:令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査について,文部科学省,https://www.mext.go.jp/content/20221222-mxt-syoto01-000026693_62.pdf(参照2024-06-24)

育児・介護休業法の改正
 

育児休業に関する法律は年々改訂されています。「育児介護休業法」は直近では2023年4月に改訂が行われました。改訂されたポイントは、

従業員1000人を超える企業
男性従業員の育児休業取得率
または
育児休業、休暇の取得率
どちらかを年に1回公表しなければいけなくなり、会社として育児休業の取得率を上げることに努力しなければいけない状況になりました。

2024年は改正施行はありませんが、2025年に子育てや介護中の従業員へのテレワーク、時短勤務など柔軟な働き方支援や育休取得状況の公表義務の対象企業拡大、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の改正が予定されています。

参考文献:育児・介護休業法について,厚生労働省,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html(参照2024-06-24)

参考文献:育児・介護休業法について,厚生労働省,https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf(参照2024-07-20)

教員の育児休業

育児休業の期間は男性と女性で少し異なります。
【女性】
出産後約2か月間「産後休業」、産後休業の終了翌日から最大3年間の「育児休業期間」が取得できます。


【男性】
配偶者の出産予定日から最大3年間「育児休業期間」が取得できます。

概ね民間企業は育児休業期間が1年から2年程度であることを考えれば、教員を含めた公務員は育休を3年間取得することができるので恵まれています。

気になる育児休業中のお金事情について


育児休業を取りたくてもどうしても気になってしまうのがお金の問題ではないでしょうか。特に男性も育児休業を取得するとなれば、男性も女性も働かない状態になるのでお金の面の不安も出てくると思います。

まず、育児休業期間は「育児休業手当」が支給されます。民間企業であれば「育児休業給付金」という名前ですが、公立学校教員の場合、公立学校共済組合から学校を休み始めた日から「子が1歳に達するまでの期間」収入を補償してもらうことができます。給付期間は配偶者も育児休暇を取っている場合、配偶者と期間を合わせるため子が1歳2か月になるまで給付されます。


気になる給付金額
・出産から180日目までは67%
・181日目以降は50%
となります。

休業期間は、通常時と異なり所得が少なくなってしまうので注意が必要です。また、給付を受けることができるのは最大でも1年2か月までと決まっています。それ以降は、無給になってしまうため、男性が育児休業を取得する場合「1年間」に限定して取得する人が多いのが現実です。

男性育児休業取得が進まない理由は「人手不足」


しかし、実際は男性教員の育児休業取得率は一般企業よりも低い傾向にあります。なぜこのようになってしまっているのでしょうか。その要因が近年話題になっている教員の人手不足です。

基本的に「産休」「育児休業」に入った教員の不足分は正規教員ではなく「代用教員」である講師で補います。講師と言っても正規教員の穴を埋めるので勤務時間は正規教員と同じで担任を持つこともあります。この講師が不足をしており、どの自治体でも代用教員を探している状態です。

出産をする女性の代用教員を何とか確保するのもやっとの状態なのに、男性が育児休業を取るのは非常に厳しいのではないかという「空気」さえもある状態です。教員不足が続いている限り、権利として育児休業を取得することができるとしてもなかなか取ることができないのが現実です。

参考文献:育児休業手当金,公立学校共済組合,https://www.kouritu.or.jp/kumiai/tanki/kyugyo/ikuji/index.html (参照2024-06-24)

育児休業以外にも活用できる制度


育児休業以外にも教員には個人の子どもの子育てのために取ることができる制度が複数あります。こちらも男性の取得率が上がっているので紹介します。

育児短時間勤務


小学校に上がる前の子どもがいる場合に使える働き方の1つ目が「育児短時間勤務」です。下のような4つの勤務パターンから選択することができます(勤務パターンは一例であり自治体によって異なるので確認してください。)
〇週24時間35分勤務(4時間55分×5日間)
〇週23時間15分勤務(7時間45分×3日間)
〇週19時間35分勤務(3時間55分×5日間)
〇週19時間25分勤務(7時間45分×2日間、3時間55分1日)

育時短の場合、勤務時間が短いので担任を持つことは少なく、教科担任として指導するケースが多いです。また、勤務時間数に応じて給与が決まってきます。(期末・勤勉手当の支給もあり)

部分休業


2つ目が部分休業です。こちらは以下のルールになっています。
『始業または終業の時刻に連続して、1日2時間の範囲内で30分の単位で勤務しないことができる。』
つまり、自分の生活スタイルに合わせて最大2時間時短勤務をすることができます。朝と夕方に1時間ずつ、朝30分と夕方30分というように自由に組み合わせて仕事をすることができます。時間短縮した分だけ給与が減額されますが、ライフワークバランスに合わせて働くことができる便利なシステムです。

どちらの制度も男性教員が取得することは可能で、知人の教員夫婦は「旦那さんが朝1時間時短、奥さんが夕方1時間時短」と二人で取得できるメリットを最大限生かして、子育てと仕事を両立しています。

意外と大きい研修や出張の免除


育児短時間勤務や部分休業をする意外と大きな負担軽減に「研修」「出張」の免除があります。育時短や部分休を取得していると法定研修(中堅者研修や職務研修など)を受けることが難しいので次年度以降に先送りすることができます。他にも宿泊を伴う引率(キャンプや修学旅行など)も基本的には参加できません。各学校の代表者で組織する教科の委員会の参加や生徒指導主任など、突発的な事態に対応しなければいけない各校の要職に校務分掌が割り振られることも少ないので、日々の業務負担も軽減されるメリットがあります。

仕事も大切だけど子育てをすることも大切な経験になる


教員をやっていると忙しさから人の子どもばかり見ていて自分の子どもを全く見れていない教員も見かけます。かつては「部活未亡人」というように教員の奥さんを揶揄するような言葉もありました。しかし、今はしっかりと制度設計が整えられて、自治体でも男性の育児休業を後押しするような空気になっています。子育ても今後の教員生活にとって大きな経験になると思って取得するのもよいでしょう。

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