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【ICT教育】GIGAスクール構想と現状について

GIGAスクール構想とは

GIGAスクール構想とは、2019年に開始された、全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組みです。

文部科学大臣は、『子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて、令和時代のスタンダードとして1人1台端末環境整備が必要である』とのメッセージを表しました。
このGIGAスクール構想の発表により、全国の地方自治体では、全学校で1人1台端末の実現に向けて、使用端末の選定やセキュリティ体制の整備、導入アプリケーションの厳選、さらには教職員に向けた研修体制の整備、児童・生徒の端末使用に関わる指導の計画など、多岐にわたる対応が進められることとなります。また、このGIGAスクール構想の実現には、大規模な予算が必要となります。
文部科学省は当初、数年間をかけて段階的に実施していく予定で計画していましたが、2020年1月からの新型コロナウイルス感染拡大に伴い、全国の小中高等学校の授業のリモート化が求められたり、分散登校、臨時休校に対応したりするためには、1人1台端末の普及が急務であるとして、一気に計画が実行されていく運びとなりました。
(2020年から現在まで、学校現場では急激な変化が求められているというのが現状にあります。)

今回の記事では、現在、公立中学校の教員として勤務している方が経験し、感じている、GIGAスクール構想の進展が公立中学校にどのような変化をもたらしているのか、また今後もどのような変化が予想されるのか等についてお話していきたいと思います!※以下のお話は、中学校でのお話となります。

学校生活の変化について

GIGAスクール構想による、1人1台の端末整備によって、学校生活は大きく変化しています。
この章では、変化の具体的な例として、①授業の変化について、②学校行事の変化についての2点についてお話していきます。

①授業の変化について

中学校において、生徒たちが1日のうちで最も長い時間を過ごすのが授業でしょう。
それと同時に、1人1台端末の整備によって学校生活の中で最も大きく変化した場面も授業です。

現在、自治体では「iPad」を採用し、生徒一人ひとりに配布されています。そして授業でのツールとして、自治体をあげて推奨しているアプリケーションが「ロイロノートスクール」です。この「ロイロノートスクール」とは、生徒の主体的な学びを促すタブレット用授業支援アプリで、自分の思考をまとめて発表したり、生徒から提出されたカードを先生が添削して返却したり、それぞれの回答を比較し合ったりできるだけでなく、教師側が教材をデータで配布したり、教師の提示したい画面を配信したり、生徒の学習状況を把握したりできる、授業のさまざまな場面での活用が期待されているものです。

多くの小中学校では、まずこの「ロイロノートスクール」の活用が進められています。その理由としては、比較的操作方法が簡単であり、なおかつ授業で取り入れやすい機能が備わっていたからであるからです。この「ロイロノートスクール」の活用によって、授業は大きく変化したことでしょう。これまで配布していた紙ベースのプリントがデータへと変わり、学校現場でのペーパーレス化が進展しています。また、授業での児童・生徒の発言も、従来の「手を挙げて発言する」のではなく、クラス全員が自分の意見をロイロノートに書き込むことができるようになりました。これによって、以前までは、良い意見をもっていても発言することのできなかった児童・生徒の意見がクラスメイトにも見えるようになり、授業への参加意識が高まったと感じている。また、クラスメイトの意見を思考ツールなどにまとめる機能も備わっており、これによってさまざまな意見を分類分けしたり、順位づけしたりして、より深く考えることができるようになりました。

以上のように、授業については、GIGAスクールの進展により、「ロイロノートスクール」のようなアプリケーションが導入されたことで、以前よりも児童・生徒の授業への参加意識が高まり、意欲的に授業に取り組む姿が見られるようになったというのが現状にあります。

②学校行事の変化について

中学校の大きな学校行事として体育祭と合唱コンクールがあるかと思います。この2つの行事についても、GIGAスクール構想の進展によって、変化しつつあります。体育祭では、毎年生徒が選曲をして、振り付けを考える創作ダンス活動を行っている学校もあるのではないでしょうか。生徒が1人1台の端末を持ったことで、インターネット検索機能を活用した振り付けの考案や選曲と音楽の編集を生徒自ら行うようになっています。また、自分たちの練習の様子をムービーで撮影することですぐにチェックしたり、授業にも活用している「ロイロノートスクール」を使って、データの共有や意見の交換を行えるようになりました。これにより、以前よりも生徒たちが主体的に活動できる場面が増えました。そのことにより、生徒一人ひとりが積極的に体育祭に臨み、より充実した活動になってきています。合唱コンクールでも同様に、自分達のクラスの歌声を録音したり、録画したりすることで、クラスの課題や改善すべきポイントを自分たちで簡単にチェックできるようになりました。そのことで、生徒が主体的に、意欲的に活動する場面が多くみられるようになりました。

このように、学校行事についても、生徒の活動が主体的になり、以前よりもイキイキと取り組む生徒が増えたというのが現状にあります。

効果と課題について

この章ではGIGAスクール構想がもたらした効果・課題の2点についてお話していきます。

①学校現場への効果

教育現場は長年ICT化が遅れていると言われ続けてきました。GIGAスクール構想の進展は、そんな教育現場に効率化をもたらす一筋の光となったことは間違いないでしょう。効率化の1つにペーパーレス化が挙げられます。学校現場では大量の紙資料(児童・生徒の学習プリントや配布プリント、保護者宛の便りなど)の印刷が必要です。そのため、教職員は印刷に多くの時間を割かれるだけでなく、紙資源の消費も大きいのです。しかし、GIGAスクール構想の進展によって、生徒へ配布するプリントがデータ化されました。さらに、保護者に宛てた文書の一部や保護者アンケートをインターネットで行うことが可能となったのです。このことにより、印刷に要していた時間が短縮されるとともにペーパーレス化が進み、資源消費の削減にもつながっています。

大きな効果の2つ目が授業の変化です。前章でも述べたように、1人1台端末の整備によって、授業で自分の意見や意思を表現しやすい環境が整いました。このことは児童・生徒が授業に参加していることを実感しやすくなるだけでなく、主体的な気持ちで学習に臨める一助になっているのではないでしょうか。

②今後の課題

大きな効果が見られる一方で、課題も明らかになってきています。それがメディアコントロールの問題です。iPadなどのタブレット端末は便利な一方、依存性が高いともいわれています。実際の中学校現場でもタブレット端末の利用が拡大する中で、生徒が使用時間を自らコントロールしたり、使用する場面としない場面を区別して学校生活を送ることに困難が生じている場面が少なからず見受けられます。
例えば、休み時間もタブレット端末を使用することで、グラウンドや体育館で体を動かして遊ぶ生徒が減少したり、タブレットを使う必要のない場面でも、無意識にタブレット端末を起動してインターネット検索をしてしまう等の問題が起こっています。また、ネットモラルについて懸念点が生じています。現実世界では口に出して言わない言葉をネット上のやりとりではキーボードを使って簡単に打ち込んでしまったり、他人の写真を撮影してネット上にアップロードしたり、AirDrop等の機能を使って他人と共有したりする場面が見られています。現実世界よりも表現することへのハードルが下がることでこのような問題が生じていると考えられますが、今後もGIGAスクール構想の進展とともにメディアコントロールとネットモラルについては、指導を継続し、生徒とともに教職員も考えていかなければならないでしょう。

まとめ

今回は、2019年に開始されたGIGAスクール構想が実際の公立中学校現場にどのような影響を与えているのかということについてお話しました。これからの社会を生きていく子どもたちにとって、便利なICT技術を使いこなし、共存していくことは必須です。だからこそ、学校でタブレット端末を用いて学習活動を進めることは非常に有意義な取り組みです。それと同時に、どのように便利なICTと付き合っていくか、使う上でのモラルを考えていくかということは、ICTを使いこなす技術と同時に身につけていくべきです。

大切なことはこれからの社会を子どもたちが豊かに生きていくために、どのような力が求められるのかを教員も常に考え続け、子どもたちとともに実践していくことです。時代の変化とともに教育現場も変化していくべきです。生徒とともに成長し、変化に対応していける人間になることがこれからの教師には求められています。

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